2020年度も様々な法改正が予定されています。
一方、大きな法改正が行われると、イコールで就業規則の変更が必要と考える意識の高い人事・労務担当者の方も少なくありませんが、必ずしもそうではありません。
例えば、働き方改革の目玉である「時間外労働の上限規制」については、もともとの就業規則がよっぽどでもない限り、ほぼほぼ就業規則を変更する必要はなかったりします。
よって、今回は2020年度内に施行が予定されている法令のうち、就業規則の変更が必要と思われるものについてピックアップしたいと思います。
この記事の目次
1. 1.パワハラ規定
2020年度を迎えるに当たって、おそらく最も対応が必要となる規則の改正がこのパワハラ規定でしょう。
ただ、セクハラ規定やマタハラ規定を入れている会社では、併せてパワハラ規定を入れている所も多いのではないでしょうか。
そのため、新しくパワハラ規定をつくるというよりは、今あるパワハラ規定が法律及び指針の求める水準に達しているかを確認する必要があります。
また、必要に応じて相談窓口の設置や、パワハラ禁止等の周知のためのパンフレットの作成等も併せて行う必要があります。
事業主に対して、パワハラに関する雇用管理上の措置を講ずる義務が発生するのは、2020年6月1日からです。(中小企業は2022年4月から)
関連:2020年6月より対策義務化! パワハラ指針を徹底解説
2. 2.子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得にかかる育児介護休業規程
育児介護休業規程についても改正が必要です。
2021年1月1日より、子の看護休暇及び介護休暇については、時間単位での取得が可能となるからです。
これに合わせて、現行の半日単位取得の規定は削除。
また、これまで半日単位で子の看護休暇・介護休暇を取得できなかった所定労働時間が4時間以下の短時間労働者については、時間単位での取得は可能となります。
改正省令の施行日である2021年1月1日よりも前に、育児介護休業規程の改正はもちろんのこと、こうした制度の変更について、会社は労働者に対して周知する必要があります。
関連:2021年1月より子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得が可能に
3. 3.同一労働同一賃金にかかる賃金規程
3.1. 正規と非正規の同一労働同一賃金
2020年4月1日より、改正短時間・有期雇用労働法(パートタイム労働法)及び改正労働者派遣法が施行されます。
これにより、大企業では「同一労働同一賃金」の適用が開始されます(中小企業については2021年4月1日から)。
一方、派遣労働者の同一労働同一賃金については、企業の規模に関わらず2020年4月1日より適用が開始されます。
これに合わせて変更が必要となるのが賃金規程です。
大企業の同一労働同一賃金においては、いかに正規と非正規との格差をなくした賃金制度を構築するかを考える必要があり、その構築した賃金制度に合わせた賃金規程に変更する必要があります。
特に手当の有無については同一労働同一賃金ガイドラインでも、雇用形態を理由とした格差を認められないことが強調されているため注意が必要です。
同一労働同一賃金ガイドラインまとめ
支給基準の見直しが必要? 同一労働同一賃金ガイドラインと「賞与」
役職手当や家族手当など、同一労働同一賃金ガイドラインと「諸手当」
3.2. 派遣労働者の同一労働同一賃金
一方、派遣労働者の同一労働同一賃金について就業規則の変更が必要となるかは、派遣先均等・均衡方式の場合と労使協定方式かによって変わります。
派遣先均等・均衡方式の場合、派遣先の労働者と派遣労働者の同一労働同一賃金を目指すことになりますが、大まかな内容は先程見た正規と非正規の同一労働同一賃金と同じです。
よって、派遣先の労働者と派遣労働者の同一労働同一賃金のために賃金制度の見直しが必要な場合、賃金規程についても変更が必要となるでしょう。
労使協定方式については、労使協定の締結だけで完結する場合はいいですが、退職金や通勤手当等の関係で、労使協定に合わせて賃金規程を変更する場合もあるので、個々の会社で事情は変わってきます。
「派遣労働者の同一労働同一賃金」記事まとめ
2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説①
労使協定方式のひな形とともに解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説②
労使協定方式の賃金基準の求め方 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の③
労使協定方式の労使協定の賃金部分を解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説④
協定対象派遣労働者とは 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説⑤
4. 4.喫煙・禁煙に関する規定
2020年4月1日より、受動喫煙防止措置として、原則屋内では禁煙とされます。
屋内禁煙等の措置の対象は会社の事務所や工場も例外ではありません。
そのため、会社は受動喫煙防止措置として「屋内は原則禁煙」もしくは「喫煙専用室設置もしくは加熱式たばこ専用の喫煙室設置」とする必要があります。
受動喫煙防止措置については、就業規則の相対的記載事項である「安全衛生」に当たると考えられるため、併せて、就業規則の規定整備も必要です。