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働き方改革 同一労働同一賃金

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「諸手当」の考え方

2019/03/13

今回は同一労働同一賃金の本丸ともいえる「諸手当」について。

日本の同一労働同一賃金は手当から始まっていく、といわれている理由を同一労働同一賃金ガイドラインや直近の判例を基にみていきたいと思います。

以下は同一労働同一賃金ガイドラインを読む上での大前提となる考え方となるので、一通り目を通しておくと、後の解説がわかりやすくなります。

同一労働同一賃金ガイドラインの大前提

  • 日本版同一労働同一賃金はあくまで「正規と非正規」の格差是正を目指すもの
  • 同一労働同一賃金ガイドラインは、その名称とは裏腹に、同一労働同一賃金を導入するためのマニュアルとは言いがたい
  • 法律上、正規と非正規の待遇の相違として判断基準となるのは「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」「その他」
  • 同一労働同一賃金ガイドラインでは、この3つの相違等を踏まえ、正規と非正規の待遇の相違について、どのようなものであれば問題がなく、どのような場合だと問題があるかが記載されている
  • 同一労働同一賃金ガイドラインに法的な拘束力はないが、労使間で争いになった場合、ガイドラインの内容の通り、あるいは近い判断が行われる可能性が高い

同一労働同一賃金ガイドラインの全文

同一労働同一賃金ガイドライン(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

すでに解説済みの基本給、賞与については以下をご参照ください。

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「基本給」の考え方

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「賞与」の考え方

 

諸手当の前提

手当には様々な種類がある上、同じ性質のものでも会社によって名称が異なる場合があります。

共通していえるのは「労働の対価」というよりは、「何かしらの条件」を満たした労働者に対して支払われるものであること。

例えば、「役職手当」なら、役職についていることが支給条件ですし、「家族手当」の場合は(会社が定める特定の)家族がいることが支給条件となっています。

時間外手当や休日手当、深夜手当は「労働の対価」としての性質もありますが、メインは「法定労働時間を超えて働いた場合」や「法定休日に働いた場合」「深夜に働いた場合」という条件を満たしたことに対して支払われるものとなっています。

 

諸手当と正規と非正規

大雑把に言うと、直接の労働以外の「何かしらの条件」が満たされたときに支払われるのが「手当」なのですが、日本の賃金慣行では多くの場合、手当支給についてはもっと大きな大前提があります。

それが「雇用形態」です。

「何かしらの条件」が満たされるかどうかを判断する前に、正規か非正規かという雇用形態がどうかで、ある手当を支給するかどうかを決める、というのが日本の会社ではごくごく普通に行われています。

しかし、本来、手当の支給条件が例えば「ある役職に就いている」という場合に、雇用形態がどうであるかは関係ありません。その役職に就いているかどうかで支給するかどうか決めればいいだけの非常にデジタルな話です。

また、ある手当の支給条件が「危険な作業を行う場合」となっていたとして、非正規がその危険な作業を行った場合に、危険な作業が危険でなくなるわけでもありません。

このため、同一労働同一賃金ガイドラインでは、「何かしらの条件」を満たすことを理由に支払う手当については、正規と非正規で不合理と認められるような待遇格差を設けることは問題があるとしています。

 

同一労働同一賃金ガイドラインと諸手当

同一労働同一賃金ガイドラインでは以下の手当について、解説がなされています。問題となる例、ならない例は手当によって、あったりなかったりします。

  1. 役職手当
  2. 特殊作業手当
  3. 特殊勤務手当
  4. 精皆勤手当
  5. 時間外労働手当
  6. 深夜・休日労働手当
  7. 通勤手当・出張旅費
  8. 食事手当
  9. 単身赴任手当
  10. 地域手当

手当によって細かな違いはあるものの、いずれの手当も「同一の支給要件を満たす」場合、雇用形態にかかわらず同一の支給が必要であると、ガイドラインでは述べられています。

ただし、例えば、所定労働時間が短い短時間労働者に役職手当を支給する場合、その所定労働時間の長さに比例した額を支給することは問題ないとしています。

また、異動のある正社員に地域手当を支給する一方で、現地採用の短時間・有期雇用労働者には基本給にその地域の物価が織り込まれている場合なども、支給がなくても問題ないとしています。

つまり、「雇用形態」を理由に支給・不支給を決めることは問題がある一方で、「雇用形態」によって変わってくる「働き方(労働条件)」に合わせて支給内容を変更する、ということは可能なことがある、ということです。

 

賞与と基本給の時は同一労働同一賃金ガイドラインの本文を引用していましたが、今回はさすがに数が多いので、気になる方は本文をチェックしてみてください。

同一労働同一賃金ガイドライン(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

家族手当、住宅手当の扱い

同一労働同一賃金ガイドラインでは、比較的一般的な手当であるにもかかわらず、解説や具体例が載っていない手当が存在します。

それが家族手当と住宅手当です。

同一労働同一賃金ガイドラインにおける家族手当と住宅手当については、以下のように記載があるだけです。

なお、この指針に原則となる考え方が示されていない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められる。このため、各事業主において、労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれる。

同一労働同一賃金ガイドライン(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

なんというか、そんなに言うならちゃんと解説と具体例を書いておけ、と言いたくなる内容ですよね。

人の会社の給与に口出ししておいて、肝心な、こっちが知りたいことになると「おまえらで考えろ」と言うのはフェアでないというか、個人的にとても気にくわないやり口です。

 

諸手当と最新の判例

日本型同一労働同一賃金においては、各賃金項目ごとに、その支給の相違が不合理な待遇差になっていないかをみます。

こうした考えは2018年6月1日に出た、「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」の2つの最高裁判決によって確立されたものです。

特に「ハマキョウレックス事件」では正規と非正規でほぼ同様の業務を行っていたにもかかわらず、手当の支給に相違があるのは不合理な待遇の格差であると判断しました。

  1. 無事故手当 ○
  2. 作業手当 ○
  3. 給食手当 ○
  4. 住宅手当 ×
  5. 皆勤手当 ○
  6. 通勤手当 ○
  7. 家族手当 -
  8. 賞与   -
  9. 定期昇給 -
  10. 退職金  -

○:不合理な相違と判断 ×:不合理とは認められないと判断 -:判断なし

上記の通り、ハマキョウレックス事件では、手当の支給について会社側にかなり厳しい判断が出ていますが、一方の長澤運輸事件では非正規側が定年後再雇用された労働者であることを理由に、正規と非正規で手当の支給に相違があることについて、「精勤手当」以外は不合理ではないとしています。

ハマキョウレックス事件及び長澤運輸事件については、このブログでも判決が出た直後に記事としてまとめていますので、詳しくはそちらをご覧ください。

ハマキョウレックス事件と長澤運輸事件の最高裁判決から今後の有期雇用労働者の待遇を考える

いずれにせよ、「手当ごとに判断する」というのが日本型同一労働同一賃金であることは判例からも明らかであり、手当ごとの判断を載せている同一労働同一賃金ガイドラインは大いに参考になるといえるでしょう。

 

以上です。

昨年、日本郵政グループが正社員の手当を削減すると発表したときは大きな話題となりましたが、今となっては、日本型同一労働同一賃金を踏まえた素早い対応だったと言えます(ちなみに、昨年の日本郵政の発表時点で同一労働同一賃金ガイドラインの「案」はすでに出ていました)。

他の会社も遅かれ早かれ対応が必要であり、今すぐには難しくても、将来に向けて道筋は捉えておく必要があるでしょう。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 著書に「「働き方改革法」の実務(日本法令)」の他、「ビジネスガイド」「SR」への寄稿、中日新聞での「働く人を守る労働保険」を連載など執筆活動もしてます。