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同一労働同一賃金 働き方改革

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「基本給」の考え方

2019/03/08

前回の記事で、同一労働同一賃金ガイドラインのうち「賞与」についてみたので、これを機に他のものについてもみていこうかと思います。

今回は基本給について。

以下は同一労働同一賃金ガイドラインを読む上での大前提となる考え方となるので、一通り目を通しておくと、後の解説がわかりやすくなります。

同一労働同一賃金ガイドラインの大前提

  • 日本版同一労働同一賃金はあくまで「正規と非正規」の格差是正を目指すもの
  • 同一労働同一賃金ガイドラインは、その名称とは裏腹に、同一労働同一賃金を導入するためのマニュアルとは言いがたい
  • 法律上、正規と非正規の待遇の相違として判断基準となるのは「職務内容」「職務内容・配置の変更範囲」「その他」
  • 同一労働同一賃金ガイドラインでは、この3つの相違等を踏まえ、正規と非正規の待遇の相違について、どのようなものであれば問題がなく、どのような場合だと問題があるかが記載されている
  • 同一労働同一賃金ガイドラインに法的な拘束力はないが、労使間で争いになった場合、ガイドラインの内容の通り、あるいは近い判断が行われる可能性が高い

同一労働同一賃金ガイドラインの全文

同一労働同一賃金ガイドライン(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

基本給の大前提

基本給と一口に言っても、その支給方法は様々です。

労働者の能力に対して支払われる職能給、労働者の成果に対して支払われる成果給、年齢や勤続年数に対して支払われる年功給、労働者が行う職務によって支払われる職務給などなど。

しかも、多くの会社では、それぞれがごちゃまぜになっていることもしばしばです。中小企業でその会社の社長の一存で金額を決めている場合などは、なおさらそうでしょう。

 

同一労働同一賃金ガイドラインにおける基本給

同一労働同一賃金ガイドラインでも、今述べたような日本の基本給の現状に理解を示しつつ、以下の通り、職務の内容や職務に必要な能力等の内容と賃金等の待遇との関係を労使間ではっきりさせることを求めています。

我が国においては、基本給をはじめ、賃金制度の決まり方には様々な要素が組み合わされている場合も多いため、まずは、各事業主において、職務の内容や職務に必要な能力等の内容を明確化するとともに、その職務の内容や職務に必要な能力等の内容と賃金等の待遇との関係を含めた待遇の体系全体を、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者を含む労使の話合いによって確認し、短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者を含む労使で共有することが肝要である。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン

 

同一労働同一賃金ガイドラインにおける基本給の解説

その上で、同一労働同一賃金ガイドラインでは「職能給」「成果給」「年功給」について、以下の通り、個別に説明を行っています。

(1)が職能給、(2)が成果給、(3)が年功給です。

(1)基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の能力又は経験に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の能力又は経験を有する短時間・有期雇用労働者には、能力又は経験に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、能力又は経験に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。

 

(2)基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の業績又は成果に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の業績又は成果を有する短時間・有期雇用労働者には、業績又は成果に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、業績又は成果に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。
なお、基本給とは別に、労働者の業績又は成果に応じた手当を支給する場合も同様である。

 

(3)基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給するもの
基本給であって、労働者の勤続年数に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の勤続年数である短時間・有期雇用労働者には、勤続年数に応じた部分につき、通常の労働者と同一の基本給を支給しなければならない。また、勤続年数に一定の相違がある場合においては、その相違に応じた基本給を支給しなければならない。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン

太字の強調はわたしの方で付けたものですが、太字部分は3つの基本給の説明の中で他と異なる部分です。

逆に言うと、太字部分以外は同じことが書いてあるので、長々とした文章ではあるものの、文章の大枠がわかれば、多少読みやすくはなるでしょう。

上記の構造は基本給以外の他の項目もだいたい同じです。

 

問題となる例、ならない例

上記の説明の他、同一労働同一賃金ガイドラインでは問題となる例、ならない例を具体的に挙げています。

ただし、全体的に、文章が硬い上に、句点(。)が少ないため、読みづらいのが難点。

まずは職能給について。

(問題とならない例)
 基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、ある能力の向上のための特殊なキャリアコースを設定している。通常の労働者であるXは、このキャリアコースを選択し、その結果としてその能力を習得した。短時間労働者であるYは、その能力を習得していない。A社は、その能力に応じた基本給をXには支給し、Yには支給していない。

 A社においては、定期的に職務の内容及び勤務地の変更がある通常の労働者の総合職であるXは、管理職となるためのキャリアコースの一環として、新卒採用後の数年間、店舗等において、職務の内容及び配置に変更のない短時間労働者であるYの助言を受けながら、Yと同様の定型的な業務に従事している。A社はXに対し、キャリアコースの一環として従事させている定型的な業務における能力又は経験に応じることなく、Yに比べ基本給を高く支給している。

 A社においては、同一の職場で同一の業務に従事している有期雇用労働者であるXとYのうち、能力又は経験が一定の水準を満たしたYを定期的に職務の内容及び勤務地に変更がある通常の労働者として登用し、その後、職務の内容や勤務地に変更があることを理由に、Xに比べ基本給を高く支給している

 A社においては、同一の能力又は経験を有する通常の労働者であるXと短時間労働者であるYがいるが、XとYに共通して適用される基準を設定し、就業の時間帯や就業日が日曜日、土曜日又は国民の祝日に関する法律(昭和 23 年法律第 178 号)に規定する休日(以下「土日祝日」という。)か否か等の違いにより、時間当たりの基本給に差を設けている。

(問題となる例)
基本給について、労働者の能力又は経験に応じて支給しているA社において、通常の労働者であるXが有期雇用労働者であるYに比べて多くの経験を有することを理由として、Xに対し、Yよりも基本給を高く支給しているが、Xのこれまでの経験はXの現在の業務に関連性を持たない。

問題とならない例についてはいずれも特に問題ないかと思いますが、最後の問題となる例については、現在の業務と関連性のない過去の経験を理由とする待遇の格差は問題があるとしています。

 

次に成果給です。

(問題とならない例)
 基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、所定労働時間が通常の労働者の半分の短時間労働者であるXに対し、その販売実績が通常の労働者に設定されている販売目標の半分の数値に達した場合には、通常の労働者が販売目標を達成した場合の半分を支給している。

 A社においては、通常の労働者であるXは、短時間労働者であるYと同様の業務に従事しているが、Xは生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っており、当該目標値を達成していない場合、待遇上の不利益を課されている。その一方で、Yは、生産効率及び品質の目標値に対する責任を負っておらず、当該目標値を達成していない場合にも、待遇上の不利益を課されていない。A社は、待遇上の不利益を課していることとの見合いに応じて、XにYに比べ基本給を高く支給している。

(問題となる例)
基本給の一部について、労働者の業績又は成果に応じて支給しているA社において、通常の労働者が販売目標を達成した場合に行っている支給を、短時間労働者であるXについて通常の労働者と同一の販売目標を設定し、それを達成しない場合には行っていない。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン

成果給については支給目的が同じということもあり、賞与とほぼ同じ例が用いられています。

 

最後に年功給。

(問題とならない例)
基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価した上で支給している。

(問題となる例)
基本給について、労働者の勤続年数に応じて支給しているA社において、期間の定めのある労働契約を更新している有期雇用労働者であるXに対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみにより勤続年数を評価した上で支給している。

出典:同一労働同一賃金ガイドライン

要するに、期間の定めのある労働契約を結ぶ者に対して、期間の契約の満了によって勤続年数をリセットするような待遇は問題があるということです。

 

正規と非正規の基本給に関する判例

実は正規と非正規の給与に関する争いについて、基本給そのものを争うようなものはほぼ存在しません。

多くは手当や賞与、退職金の有無が争点となっています。

理由としては、冒頭でも述べたとおり、職能給や成果給、年功給がごちゃ混ぜになっているため、それらを明確にし差額を求めることが困難なことが考えられます。

そして、ガイドラインではこれらのごちゃ混ぜになっているものを明確化することが求められているものの、それは法律上の義務ではありません。また、はっきりさせることが司法の上で、労使の間でどのような有利不利が付くかも不透明です。

 

以上です。

同一労働同一賃金ガイドラインの内容や直近の判例から、「日本型同一労働同一賃金は手当から始まる」というのは識者の間では半ば共通認識となっています。

そのため、基本給に手を加える優先度はそれほど高くないように思えます。

一方で、賃金制度改革における基本給には、手当の追加や廃止に伴う賃金の変動を吸収する、という役割もあります。

その中で基本給の額の変更、さらには支払目的を明確化していくのであれば、ガイドラインの内容に沿っていく必要があります。

 

今日のあとがき

少し前に歯医者に通っていたときに、思いのほか歯と歯の隙間に虫歯が多く、歯医者への通院期間が長引くという苦い経験をしました(ちなみにわたし、歯医者凄く苦手です)。

その後、歯医者さんにやるよう言われたので歯間ブラシを使ったりしてたのですが、ちょっと面倒くさくて、やったりやらなかったり。

で、最近、「こういうものがある」と知って、即買いしたのがジェットウォッシャー。

高圧の水流で歯と歯の隙間の歯垢を弾き飛ばしてくれる優れもので、地味に歯茎への刺激が気持ちいいのも○。

使い始めてまだ2日ほどですが、すでにこれなしでは生きられない体になりつつあります。

わたしはシャワー浴びてるときについでに歯を磨くので、お風呂場で使える充電式のハンディタイプを買いました。ただ、すぐに水がなくなるので、洗面台で使う場合はタンクの大きい据え置き型がいいかもしれません。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 著書に「「働き方改革法」の実務(日本法令)」の他、「ビジネスガイド」「SR」への寄稿、中日新聞での「働く人を守る労働保険」を連載など執筆活動もしてます。