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労働者派遣

労使協定方式の賃金基準の求め方 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の③ 

前回の続きです。

 

労使協定方式において賃金は最重要項目

派遣労働者の同一労働同一賃金を労使協定方式において、賃金は最も重要な協定項目です。

なぜなら、労使協定方式の派遣労働者の賃金を決定する際、原則、厚生労働省が公表する統計等の額と同等以上にする必要があるからで、これを下回ると違反となってしまいます。

つまり、派遣労働者の賃金は一定の額以上にしないといけないわけですが、この基準を算出するのが実はかなり難しい。

というのも、派遣労働者の賃金の基準は派遣労働者が従事する業務や、勤続年数、働く地域によって変わるからです。

以下では、労使協定方式における派遣労働者の賃金の算定方法について解説していきます。

 

労使協定方式における派遣労働者の賃金の決定方法

まず、労使協定方式における派遣労働者の賃金については、以下の3つの項目で、基準と同等以上かどうか考える必要があります。

  • 基本給・賞与
  • 通勤手当
  • 退職金

このうち、基本給・賞与(場合によっては退職金も)については、以下の3つの要素によって基準額が決定されます。

  • 派遣労働者が従事する業務
  • 勤続年数(能力・経験)
  • 派遣先の地域

 

基本給・賞与

①基本給・賞与の基礎となる額

基本給・賞与については「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」もしくは「職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」が基準となります(独自統計も使えないわけではないが厚労省の審査が必要)。

以下が、2020年4月の段階で利用できる統計。

平成30年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)

職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額

 

いずれかの統計の中から、派遣労働者が従事する業務に最も近い職業を選択、そこに書かれてる金額が「基本給・賞与」の基礎となる額となります。

ちなみに、いずれの統計の金額も賞与は含まれているので、この金額にさらにプラスして賞与が必要、ということはありません。

 

②能力・経験調整指数をかける

業務をこなしていけば、その業務の経験が溜まり、能力は成長します。

労使協定方式では、この能力・経験に応じて賃金を上昇させねばなりません。

能力・経験に応じた賃金の上昇については勤続年数で測ることとされており、以下の通り、勤続年数によって指数化されています。

0年 1年 2年 3年 5年  10 年 20 年
100.0 116.0 126.9 131.9 138.8 163.5 204.0

よって、①でみた基本給・賞与の基礎となる額に、勤続年数に応じた上記の指数をかけないといけないわけです。

例えば、勤続0年目相当で時給1000円だった者に対しては、勤続1年目相当となったところで時給1160円にしないといけなくなります。

勤続年数3年のところの指数が「131.9」となっていますが、これが「3年で3割昇給」の根拠となっているわけです。

 

ただ、気をつけないといけないのは、上記の勤続年数は必ずしも実際の勤続年数とイコールではないという点です。

というのも、上記の勤続年数は、派遣労働者の従事する業務の内容・難易度等が、一般の労働者の勤続年数の何年目に当たるかを示したものに過ぎないからです。

なので、例えば、勤続5年目の派遣労働者が2年目相当の能力しかない場合、必ずしも「5年」の指数で基本給を計算する必要はないわけです。

ただし、こうした主張を裏付けるには、そのように判断した根拠、例えば、公平な人事考課や評価制度等が必要になると考えられます。

 

①でみた統計にはいずれも、勤続年数0年の賃金額に加え、能力・経験調整指数をかけたものも掲載されているので、わざわざ会社が計算し直さなくてもいいようになっています。

 

③地域指数をかける

派遣労働者の基本給・賞与については、統計から職種を選び基本給・賞与の基礎となる額に能力・経験調整指数をかけるだけでは終わりません。

さらにこれに地域指数をかける必要があります。

地域指数は派遣元の事業所が設置されている場所ではなく、派遣先がどこかで見る必要があります。

 

地域指数は都道府県別の他、都道府県をさらに細かく分割した地域別の指数も算出されており、どちらか(といっても普通はより低い方)を選ぶことになります。

都道府県別地域指数(抜粋)

愛知 105.4
岐阜 99.9
三重 98.6
東京 114.1
神奈川 109.5
大阪  108.3
北海道 92.0
沖縄  84.4

愛知県地域別地域指数(抜粋)

名古屋東計 107.6
名古屋中計  107.7
名古屋南計 105.4
豊橋計  107.6
岡崎計 102.9

 

④まとめ

まとめると、労使協定方式を利用する場合の派遣労働者の基本給・賞与の決め方は、まず「賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金」もしくは「職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額」から該当する職種を選ぶことになります。

そして、勤続年数等に応じて能力・経験調整指数と、派遣先の事業所の場所によって地域指数をかけます。

つまり、派遣労働者の基本給・賞与については「①×②×③」と同額以上でないといけないわけです。

また、計算の結果の額が最低賃金を下回る場合は、最低賃金を上回る額にしなければなりません。

 

通勤手当

通勤手当については実費を支給する、もしくは通勤手当に相当する額を時給で支払うという方法が認められています。

後者については、直近の通達で「72円」と定められています。

よって、実費支給しない場合は、この「72円」を時給にプラスする必要があります。

 

退職金

退職金については以下の通り、

  1. 相応の退職金制度を用意する
  2. 時給に含めて前払いする
  3. 中退共に加入する

の3つの方法が認められています。

このうち、1.については、派遣労働者の場合、そもそも退職金制度がない、ということがほとんどなのであまり現実的ではないでしょう。

一応、制度を整備する場合は、原則、厚労省の出している統計と同等以上である必要があります。

 

現実的な選択肢は2.の「時給に含めて前払い」となります。

こちらは、退職金に相当する額を毎月の賃金に含めて支払う方式で、その基準は直近の通達で「基本給・賞与の6%」以上とされています。

3.の中退共を選択する場合、掛金を設定する必要がありますが、その際の掛金も「基本給・賞与の6%」以上である必要があります。

 

まとめ

以上のことから、派遣労働者の賃金については、以下のような形が一般的になるのではないでしょうか。

  • 「基本給・賞与」+「基本給・賞与の6%分の退職金」+「通勤手当の72円(通勤手当を実費支給しない場合)」

計算してみるとわかりますが、これは実際かなりの額です。

例えば、愛知県で、勤続年数0年の派遣労働者の従事する業務が「時給1000円」の業務の場合、

賃金項目 派遣労働者の基本給・賞与 派遣労働者の通勤手当 派遣労働者の退職金 合計
計算式 1000円×105.4(地域指数) 1054円×0.06
時給額 1054円 72円 63円 時給1189円

 

これに加えて、基本給・賞与と退職金については、勤続年数等によって能力・経験調整指数をかけなければなりません。

 

以上となります。

上記の計算については、厚生労働省が計算ツールを公表しているのでこちらを活用するのが良いでしょう。

一般労働者と派遣労働者の賃金比較ツール(令和2年度適用版)(元ファイルはエクセルですが、エクセルのままだとわたしの環境ではアップロードできなかったのZIPに圧縮しています 出典:厚生労働省

賃金比較ツールの操作手順書(出典:厚生労働省

 

ここまでは、あくまで労使協定方式における派遣労働者の賃金の基準を求めたに過ぎません。

実務ではこれを労使協定にまとめないといけないので、次回、労使協定の賃金の項目の作成方法をまとめて、派遣労働者の同一労働同一賃金については一旦区切りにしたいと思います。

 

「派遣労働者の同一労働同一賃金」記事まとめ

2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説①

労使協定方式のひな形とともに解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説② 

労使協定方式の賃金基準の求め方 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の③ 

労使協定方式の労使協定の賃金部分を解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説④ 

派遣労働者の同一労働同一賃金を目指す労働者派遣法の改正の概要(施行は平成32年(2020年)予定)

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「労働者派遣」について

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 著書に「「働き方改革法」の実務(日本法令)」の他、「ビジネスガイド」「SR」への寄稿、中日新聞での「働く人を守る労働保険」を連載など執筆活動もしてます。