名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所

名古屋市営地下鉄名城線、西高蔵駅から北へ徒歩3分、国道19号線沿いの社労士事務所

公開日: 更新日:

同一労働同一賃金 労働者派遣

労使協定方式の賃金部分の規定方法を解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説④ 

前回の続きです。

前回は、派遣労働者の同一労働同一賃金で労使協定方式を採用する場合、基本給等について一定の額以上にしないといけないことを解説したのに加え、その基準を求める方法について解説しました。

今回はそれをどのように労使協定に反映させるか、について解説していきたいと思います。

 

労使協定方式の労使協定のうち、賃金にかかる部分を解説

早速、労使協定を見ていきたいと思うのですが、労使協定方式の労使協定についてはすでに過去の記事で扱っています。

2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説② 労使協定方式(ひな形とともに解説)

上の記事では賃金の解説は後回しにし、それ以外の項目を解説しました。

今回は逆に、賃金の項目だけを徹底的に解説していきます。なので、賃金以外の部分を知りたい場合は上記の記事へ飛んでください。

解説に使うのは今回も、以下の資料に記載されている労使協定のひな形です。

出典:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編)(リンク先PDF 厚生労働省)

 

基本給にかかる部分の解説

労使協定のひな形で、賃金について書かれているのは、全13条の内、第2条から第8条となります。

 

賃金の構成

(賃金の構成)
第2条 対象従業員の賃金は、基本給、賞与、時間外労働手当、深夜・休日労働手当、通勤手当及び退職手当とする。

賃金の構成については、会社によって異なる部分です。

特に賞与については支給しないという会社も多いと思いますが、賞与を支給しなくても一定の基準を超えられるなら、それで特に問題はありません。

また、通勤手当及び退職手当については一定の基準を超える必要がある、というのは前回、解説したとおりです。

ただ、基本給に含めて支給することもできるので、その場合は本条から除いて、労使協定のどこかに「通勤手当及び退職手当は基本給に含めるものとする」としておけば問題ありません。

 

賃金の決定方法①

(賃金の決定方法)
第3条 対象従業員の基本給及び賞与の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、次の各号に掲げる条件を満たした別表1の「2」のとおりとする。
(1)比較対象となる同種の業務に従事する一般の労働者の職種は、「平成○○年○月○日職発第○○○○○号「労働者派遣法第30条の4第1項第2号イの同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額について(仮称)」」(以下「通達」という。)に定める「平成○年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)の「プログラマー」
(2)通勤手当については、基本給及び賞与とは分離し、第6条のとおりとする。
(3)地域調整については、就業地が北海道内に限られることから、通達に定める「地域指数」の「北海道」により調整

第3条と第4条は労使協定方式の労使協定で必ず記載する必要のある項目です(第2号イ「賃金の決定方法」)

 

比較となる統計と職種

(1)については、どの統計を使用するのか、そして、その中のどの職種を比較対象とするのかを記載します。

改正法施行時に利用できる統計は、原則、以下の2つです。

平成30年賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)

職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額

 

通勤手当・退職金の扱い

(2)は通勤手当を実費支給する場合を想定しています。

一方で、実費ではなく、通勤手当を時給に含む場合は「通勤手当(、退職手当)については基本給に含めるものとする。」としておく必要があります。

 

派遣先の地域と地域指数

(3)は派遣先がどの地域に当たるかによって変わります。派遣元ではなく派遣先が基準となる点に要注意で、特に都道府県をまたいで派遣する際は注意が必要です。

 

賃金の決定方法② ランクによる賃金の昇給

第4条 対象従業員の基本給及び賞与は、次の各号に掲げる条件を満たした別表2のとおりとする。
(1)    別表1の同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額と同額以上であること
(2)    別表2の各等級の職務と別表1の同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額との対応関係は次のとおりとすること
Aランク:10年
Bランク:3年
Cランク:0年

2 ○○人材サービス株式会社は、第9条の規定による対象従業員の勤務評価の結果、同じ職務の内容であったとしても、その経験の蓄積・能力の向上があると認められた場合には、基本給額の1~3%の範囲で能力手当を支払うこととする。
また、より高い等級の職務を遂行する能力があると認められた場合には、その能力に応じた派遣就業の機会を提示するように努めるものとする。 ←第2号ロ「職務内容等の向上があった場合の賃金の改善」

別表1、別表2

 

出典:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編)(リンク先PDF 厚生労働省)

ランク分けと能力・経験調整指数

上記のように、ひな形では、「ランク」を利用して派遣労働者の実際の賃金を決めています。

これはどういうことかというと、まず前提として、能力・経験調整指数における勤続年数が必ずしも実際の勤続年数とイコールではないことは前回解説したとおりです。

そして、派遣労働者に限らず、労働者の給与決める際に、能力に応じて「ランク分け」をして賃金を決める、というのは一般的によく行われていることでもあります。

なので、派遣労働者の場合も、このようなランクに応じて賃金を支給してよい、となっているわけです。

ただし、能力・経験調整指数の関係上、そのランクが勤続年数の何年分に当たるかは記載する必要があり、ランクごとの賃金も、その能力・経験調整指数と勤続年数に応じたものと同額以上である必要があるわけです。

 

ランク分けの利点等

上記の例ではCランクは0年相当、Bランクは3年相当、Aランクは10年相当となっています。

また、上の表を見るとわかるとおり、Bランクの基本給は賞与と合わせて時給「1500円」に設定されています。

「プログラマ」で「勤続年数3年相当」で地域が「北海道の場合」、時給が「1410円」以上でないといけませんが、これを超えた額となっているので問題ないというわけです。

ランクによって給与を決める利点として、実際の勤続年数が5年の場合もBランクに相当する場合は、Bランク、つまり、3年相当の能力・経験調整指数で計算した額と同等以上であれば問題ないことがあります。

 

賃金の決定方法③ 通勤手当・退職金を基本給に含める場合

ひな形では、基本給と、通勤手当および退職金を別に分けています。

しかし、運用上、通勤手当や退職金を基本給に含めることが認められています。

その場合の記載方法はどうなるかというと、以下のように基本給に退職金と通勤手当が含まれていることを条文と表で示す必要があります。

(賃金の決定方法)
第3条 対象従業員の基本給及び賞与の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、次の各号に掲げる条件を満たした別表1の「2」のとおりとする。
(1)比較対象となる同種の業務に従事する一般の労働者の職種は、「平成○○年○月○日職発第○○○○○号「労働者派遣法第30条の4第1項第2号イの同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額について(仮称)」」(以下「通達」という。)に定める「平成○年賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)の「プログラマー」
(2)通勤手当、退職手当については基本給に含めるものとする。
(3)地域調整については、就業地が北海道内に限られることから、通達に定める「地域指数」の「北海道」により調整

 

別表

等級 職務の内容 基本給額 退職金相当額(※) 通勤手当相当額 合計
Aランク 上級プログラマー 1920 116 72 2108
Bランク 中級プログラマー 1500 90 72 1662
Cランク 初級プログラマー 1200 72 72 1344

※ 基本給額の6%(端数切り上げ)で計算

 

基本給以外の部分の解説

時間外・深夜・休日手当

第5条 対象従業員の時間外労働手当、深夜・休日労働手当は、社員就業規則第○条に準じて、法律の定めにしたがって支給する。

割増賃金について定めた項目です。特筆すべき点はありません。

 

通勤手当

第6条 対象従業員の通勤手当は、通勤に要する実費に相当する額を支給する。

通勤手当を実費支給する場合の規定です。

実費ではなく時給に含めて支給する場合、この条文は不要です。

 

退職金

第7条 対象従業員の退職手当の比較対象となる「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」は、次の各号に掲げる条件を満たした別表3のとおりとする。
(1)退職手当の受給に必要な最低勤続年数:
通達に定める「平成28年中小企業の賃金・退職金事情」(東京都)の「退職一時金受給のための最低勤続年数」において、最も回答割合の高かったもの(自己都合退職及び会社都合退職のいずれも3年)
(2)退職時の勤続年数ごと(3年、5年、10年、15年、20年、25年、30年、33年)の支給月数:
「平成28年中小企業の賃金・退職金事情」の大学卒の場合の支給率(月数)に、同調査において退職手当制度があると回答した企業の割合をかけた数値として通達に定めるもの

 

第8条 対象従業員の退職手当は、次の各号に掲げる条件を満たした別表4のとおりとする。ただし、退職手当制度を開始した平成○年以前の勤続年数の取扱いについては、労使で協議して別途定める。
(1)別表3に示したものと比べて、退職手当の受給に必要な最低勤続年数が同年数以下であること
(2)別表3に示したものと比べて、退職時の勤続年数ごとの退職手当の支給月数が同月数以上であること

別表3 別表4

出典:不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(労働者派遣業界編)(リンク先PDF 厚生労働省)

退職金制度について定めた条文です。

退職金制度全般がこむずかしいこともあって、条文がやけに長々としたものとなっていますが、実際には派遣労働者に退職金を支払っている会社というのは稀でしょう。

そして、もともと派遣労働者に退職金を払っていた場合でない限り、労使協定方式を採用する場合の退職金は、基本給にその相当額を含める形になると思います。

その場合は、通勤手当と同様、本条は不要となります。

 

以上です。

やはりキモとなるのは「基本給・賞与」なので、この部分をきちんと理解しておく必要があります。

まだ不安だ、という場合は前回の記事を読み直していただければと思います。

2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説③ 労使協定方式の賃金

以上で、長々と解説してきた派遣労働者の同一労働同一賃金(主に労使協定方式)についての解説は一区切りです。

これ以上のことを知りたい、という方は自分で厚生労働省の出してる資料を調べるか、弊所にお仕事の依頼を出していただければと思います(珍しくダイレクトに営業)。

 

「派遣労働者の同一労働同一賃金」記事まとめ

2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」を1から解説①

労使協定方式のひな形とともに解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説② 

労使協定方式の賃金基準の求め方 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の③ 

労使協定方式の労使協定の賃金部分を解説 2020年4月に施行目前の「派遣労働者の同一労働同一賃金」の解説④ 

派遣労働者の同一労働同一賃金を目指す労働者派遣法の改正の概要(施行は平成32年(2020年)予定)

同一労働同一賃金ガイドラインにみる「労働者派遣」について

 

今日のあとがき

珍しついでに、今回は珍しく真面目なあとがきです。

派遣労働者の同一労働同一賃金においては派遣先均等・均衡方式、労使協定方式、どちらの場合においても、多くの派遣会社で実質的な賃上げを行う必要がでてくるはずです。

また、能力・経験調整指数と派遣期間3年の縛りの関係から、派遣労働者を長期的に雇用することは得策でないとして、派遣労働者を3年で雇止めとするところも増えるのではないでしょうか。

いずれにせよ、派遣会社側だけではどうにもならない部分も多いと思われるため、派遣先との話し合いも含めた早めの対応が必要となるでしょう。

The following two tabs change content below.
名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 著書に「「働き方改革法」の実務(日本法令)」の他、「ビジネスガイド」「SR」への寄稿、中日新聞での「働く人を守る労働保険」を連載など執筆活動もしてます。