ハラスメント

2020年6月(中小企業は2022年4月)より義務化! パワハラ指針を徹底解説

2020年1月27日

パワハラ

ハラスメント指針解説の最後はパワハラ指針(正式名称、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針)です。

パワハラ指針では「職場におけるパワーハラスメント」における、会社の雇用管理上の措置等が定められています。

パワハラについては、昨年の法改正により今年(2020年)6月(大企業のみ、中小企業は2022年4月)より、会社に雇用管理上の措置を講ずることが義務づけられます。

 

この記事の目次

(1) パワハラ指針の本体は「定義」と「類型」

パワハラ指針

今回、公表されたパワハラ指針は以下のものとなります。この記事ではこちらをもとにパワハラ指針について解説していきます。

事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

雇用管理上の措置はセクハラ指針やパワハラ指針とほぼ同内容

正直、会社が講ずる必要のある「雇用管理上の措置」については、前回までに解説したセクハラ指針及びマタハラ指針とほぼ同一です。

ほぼ同一なのに今回も解説してるのは、本文の途中途中で「セクハラ指針解説の記事を読んでください」とか「マタハラ指針解説の記事を読んでください」、みたいな感じでリンクを入れるのは、読者に対して不親切だと思ったからですが、あまりに同内容なのでグーグル検索でコピーコンテンツ扱いされてペナルティを受けないかちょっと心配です。

話がそれましたが、セクハラ指針及びマタハラ指針と内容が近いということは、セクハラ及びマタハラに関する措置をきちんと行っていれば、パワハラに関する雇用管理上の措置を達成するのはそれほど難しくはないでしょう。

セクハラ指針及びマタハラ指針については以下の解説記事をご覧ください。

改正されたセクハラ指針を「雇用管理上講ずべき措置」を中心に解説

改正されたマタハラ指針をセクハラ指針との違いに注意しつつ解説

 

行政官庁の考える「パワハラ」を知る

一方で、行政官庁は「何をパワハラ」と考えているかについては非常に重要です。

自分たちの感覚や、世間一般的なイメージで「パワハラ」を考えていると、知らず知らずのうちにパワハラが起きている、あるいはパワハラが起きているのに対処できていない、ということが起こりうるからです。

また、パワハラ指針ではパワハラの各類型ごとに該当する例・該当しない例を網羅的に紹介しており、こちらもきちんと把握しておく必要があります。

 

(2) 各用語の定義

「職場におけるパワーハラスメント」の定義

職場におけるパワーハラスメントとは、以下の全て満たすものをいいます。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

 

ただし、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しないとされています。

 

「職場」「労働者」の定義

パワハラ指針における「職場」及び「労働者」の定義は、細かい部分を除き、セクハラ指針・マタハラ指針とほぼ同内容です。

職場の定義

  1. 事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所
  2. 上記以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については、「職場」に含まれる

労働者の定義

  1. 雇用形態にかかわらず、会社が雇用する労働者全て
  2. 派遣労働者を受け入れる側(派遣先)は、派遣労働者についても、自社の社員と同様の措置を行う必要あり

 

「優越的な関係を背景とした」の定義

「優越的な関係を背景とした」言動とは、以下のようなもので、抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指すとしています。

  • 職務上の地位が上位の者による言動
  • 同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの・ 同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

 

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」の定義

「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」ものとしては、以下のようなものいいます。

  • 業務上明らかに必要性のない言動
  • 業務の目的を大きく逸脱した言動
  • 業務を遂行するための手段として不適当な言動
  • 当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

 

実務上は、「業務上必要かつ相当な範囲を超え」ているかどうかについては判断の難しい部分もありますが、指針では「当該言動の目的」「当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況」「業種・業態、業務の内容・性質」「当該言動の態様・頻度・継続性」「労働者の属性や心身の状況」「行為者との関係性等」などの様々な要素を総合的に考慮することが適当であるとしています。

 

 「労働者の就業環境が害される」の定義

「労働者の就業環境が害される」とは、指針で「当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す」としています。

この判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」を基準とする、と指針ではありますが、「平均的な労働者の感じ方」ってなんなんですかね? 基準になるんですかね? と首をかしげざるを得ない内容です。

 

(3) パワーハラスメントの類型

パワハラ指針では、どういった行為がパワハラにについて、各類型ごとに該当する例・該当しない例を網羅的に紹介しています。

かなりの数に及ぶため、本記事では個別の解説は控えますが、以下に、引用しておくのでご参考にしていただければと思います。

指針で紹介されているものは限定列挙(列挙されているものしかパワハラにならないということ)ではないことと、いずれの事例も優越的な関係を背景として行われたものであることが前提となる点にご注意ください。

イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)

(該当すると考えられる例)

  1. 殴打、足蹴りを行うこと
  2. 相手に物を投げつけること

(該当しないと考えられる例)

  1. 誤ってぶつかること

 

ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

(該当すると考えられる例)

  1. 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。
  2. 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。
  3. 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
  4. 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。

(該当しないと考えられる例)

  1. 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注意をすること。
  2. その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一定程度強く注意をすること。

 

ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

(該当すると考えられる例)

  1. 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
  2. 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。

(該当しないと考えられる例)

  1. 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施すること。
  2. 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。

 

ニ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

(該当すると考えられる例)

  1. 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずること。
  2. 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。
  3. 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。

(該当しないと考えられる例)

  1. 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。
  2. 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い業務の処理を任せること。

 

ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

(該当すると考えられる例)

  1. 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
  2. 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。

(該当しないと考えられる例)

  1. 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。

 

ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

(該当すると考えられる例)

  1. 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。
  2. 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

(該当しないと考えられる例)

  1. 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。
  2. 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。この点、プライバシー保護の観点から、ヘの該当する例2.のように機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講じることが必要である。

 

 

(4)事業主及び労働者の責務

改正されたセクハラ指針及びマタハラ指針でも追加された、ハラスメントに対する事業主及び労働者の責務ですが、パワハラでもその責務が明記されているので確認しておきましょう。

パワハラに対する事業主の責務

  • パワハラは行ってはならない等、パワーハラスメントに起因する問題(パワハラ問題)についてその雇用する労働者の関心と理解を深める
  • 労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮を行う
  • 国の講ずる同条第1項の広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならない
  • 事業主自らも、パワハラ問題に対する関心と理解を深め、労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならない

その他、指針では「パワハラ問題は労働者の意欲の低下による職場環境の悪化や職場全体の生産性の低下、労働者の健康状態の悪化、休職や退職などにつながり得るとし、これらに伴う経営的な損失等が考えられる」としています

 

パワハラに対する労働者の責務

  • 労働者は、セクハラ問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない。

 

(5)会社でのパワハラ問題に対して事業主が雇用管理上講ずべき措置

以上を踏まえて、会社は、会社でのパワハラ問題に対して雇用管理上の措置を講じなければなりません。

会社がハラスメントに対して行う必要がある雇用管理上の措置については、以下のように大枠では共通化されています。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. 1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置

 

以下では、各項目について詳しく見ていきます。

 

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発については、

事業主の方針については「パワハラを行ってはならない旨の方針」と「パワハラを行った者への対処の方針」の2つに分けて考えます。

その上で、それらを明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発する必要があります。

いずれの周知・啓発方法もセクハラ指針・マタハラ指針とほぼ同内容となるため、これらのハラスメントと一体となって措置を講ずるのが最善と思われます。

 

「パワハラを行ってはならない旨の方針」

まず、「パワハラを行ってはならない旨の方針」を労働者等に周知・啓発していると認められる措置は以下のものとなります。

  • 就業規則等にパワハラを行ってはならない旨を規定(パワハラ禁止規定の策定)
  • 社内報やパンフレット、会社ホームページでパワハラを行ってはならない旨を記載し広報する
  • パワハラを行ってはならないことを研修等を通じて管理監督者を含む労働者に周知徹底する

 

「パワハラを行った者への対処の方針」

「パワハラを行った者への対処の方針」を労働者等に周知・啓発していると認められる措置は以下のものとなります。

  • 就業規則等にパワハラを行った者に対する懲戒規定を定めそれを労働者に周知・啓発
  • すでに規定がある場合は、パワハラが懲戒の規定の適用対象であることを管理監督者を含む労働者に周知・啓発

 

就業規則にパワハラ禁止規定は必須

「パワハラを行ってはならない旨の方針」と「パワハラを行った者への対処の方針」の内容を見ていただければわかるとおり、パワハラについて雇用管理上の措置を行う上で、就業規則に規定を定めることは必須と言えます。

就業規則の規定に必要となるものとしては、以下のものがあります。

  • パワハラの定義(パワハラのみでなく、職場や労働者の定義も記載するのがベター)
  • パワハラが懲戒事由である旨と懲戒規定
  • 相談窓口
  • 相談を行った者に対して不利益取扱いを行わない旨

 

2.相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

パワハラに関する会社の雇用管理上の措置として、パワハラの相談窓口を設置する必要があります。

このパワハラの相談窓口については、セクハラ、マタハラの相談窓口と基本的な要件は同一です。

それもあり、それぞれの指針で、セクハラ、マタハラ、パワハラについては、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいとしています。

 

相談窓口として認められるもの

この相談窓口については、単に設置するだけでなく、一定の要件を満たす必要があります。

以下はその要件となります。また相談窓口については、設置したことについて労働者に周知する必要があります。

  1. 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること
  2. 相談に対応するための制度を設けること
  3. 外部の機関に相談への対応を委託すること

 

相談への対応

また、相談については、担当者がその内容や状況に応じ適切に対応できるようにすることに加え、現実にマタハラが生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、マタハラに該当するかどうか微妙な場合についても広くも対応できるようにしておく必要があるとされています。

具体的には以下の通りとなります。

(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)

  • 担当者が相談内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること
  • 担当者が、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること
  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと

 

3.職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応

パワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応の流れは、セクハラ指針、マタハラ指針と同一で、以下の通り、3つ段階があります。

  1. 事実関係の確認
  2. パワハラが事実であった場合の対処
  3. 再発防止

 

1.事実関係の確認

パワハラがあったかどうかについては、被害者(相談者)の意見だけでなく、そうした行為を行ったとされる者(行為者)の意見を聴く必要があります。

また、当事者双方の主張に不一致があり、事実の確認が十分に出来ない場合は第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずる必要があります。

一方で、事実関係の確認が困難な場合は、調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねる必要があります。

 

2.パワハラが事実であった場合の対処

パワハラが事実であった場合の対処について、「被害者」と「行為者」の双方に対するものがあります。

どちらの対処も、セクハラ指針及びマタハラ指針とほぼ同内容となります。

 

被害者に対する対処

パワハラ指針で被害者に対する雇用管理上の措置を講じていると認められる内容は以下の通りとなります。

1.事案の内容に応じた以下の措置

  • 被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助
  • 被害者と行為者を引き離すための配置転換
  • 行為者の謝罪等の措置
  • (パワハラによって被った)被害者の労働条件上の不利益の回復
  • 管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応 等

2.調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること

 

行為者に対する対処

一方、行為者に対する対処として雇用管理上の措置を講じていると認められる内容は以下の通りとなります。

1.行為者に対して必要な懲戒その他の措置

2.事案の内容に応じた以下の措置

  • 被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助
  • 被害者と行為者を引き離すための配置転換
  • 行為者の謝罪等の措置

3.調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること

 

上記のようにある一方で、行為に対して不釣り合いな重い懲戒処分を行うと今度は会社が、違法な処分であると行為者に訴えられる可能性があるので注意が必要です。

また、行為者の謝罪、についても、強制することは「強要罪」に当たる可能性があるので注意すべきです。

 

再発防止

再発防止の措置として、まずは改めて会社のパワハラに対する方針を周知・啓発する必要があります。

そうした措置として認められるものは以下の通りとなります。

  1. 「パワハラを行ってはならない旨の方針」と「パワハラを行った者への対処の方針」を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等する
  2. 労働者に対して職場におけるパワハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施

 

なお、上記の措置は、結果としてパワハラの事実が確認されなかった場合も同様の措置を講ずる必要があります。

 

4.1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置

1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置とは、主に以下の通りです。

  1. 相談者・行為者等のプライバシーの保護に必要な措置を講ずること及び、その旨を労働者に対して周知すること
  2. セクハラの相談等(※)を理由とした解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発

(※)セクハラについて相談したこと、事実関係の確認等、事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと、調停の出頭の求めに応じたこと(セクハラについて相談したこと、以外は今回の指針改正で追加されたもの)

 

(6) その他、パワハラ指針にて記載されている内容

従来の指針では、上記の内容までで終わっていたのですが、今回の改正ではさらに以下の内容が追加されています。

  1. 会社でのセクハラ問題に対して事業主が雇用管理上講ずべき措置以外に、事業主が行うことが望ましい内容
  2. 事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容
  3. 事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容

 

1と2.についてはセクハラ指針と同内容。

いずれも、努力義務のため、会社のリソースと相談してどのようにするか検討すべきでしょう。

 

1.会社でのセクハラ問題に対して事業主が雇用管理上講ずべき措置以外に、事業主が行うことが望ましい内容

会社でのパワハラ問題に対して事業主が雇用管理上講ずべき措置以外に、事業主が行うことが望ましい内容とは以下の通りです。「望ましい」なので、行うことは義務ではありません。

  1. セクハラやマタハラとの相談窓口の一元化
  2. 職場のコミュニケーションの活性化や円滑化、適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと
  3. 会社が雇用管理上の措置を講ずる際に、労働者や労働組合等の参画を得つつアンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努める

 

2.事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容

ここまでの指針の内容を踏まえて、「労働者以外」のものや「当該事業主が雇用する労働者以外の者」についての言動に注意を払ったり、そうした者たちに対する言動についても雇用する労働者と同様の方針を示す、あるいはそうした者たちの相談に応じることが望ましい、としています。

「望ましい」なので、実施は義務ではありません。

 

3.事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容

パワハラ指針の最後は取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主からのパワーハラスメント等について以下のような取組を行うことが望ましいとしています。

(1)  相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

イ 相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
ロ イの相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

(2)  被害者への配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。

(3)  他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組

 

やはり「望ましい」取組なので、実施は義務ではありません。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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