ハラスメント

会社で対応が義務づけられているハラスメントとは?その対策は?

2020年1月17日

ハラスメントにNO

世の中には様々なハラスメントがあります。

セクハラ、パワハラ、マタハラ、モラハラ、ソジハラ、スメハラなどなどなどなど。

一方で、会社がその対策を義務づけられているハラスメントはそれほど多くありません。

今回は会社で対応が義務づけられているハラスメントとは何かを中心に会社のハラスメント対策について解説していきます。

 

会社にその対応が義務づけられているハラスメント

セクハラ、マタハラ

この記事を書いている2020年1月現在、会社にその対応が義務づけられているハラスメントは以下のものとなります。

  • セクハラ(セクシャル・ハラスメント)
  • マタハラ(マタニティ・ハラスメント)

 

これらについては、その防止のための雇用管理上の措置を、会社が行うことを法律で義務づけられています(その内容については後述)。

 

2020年6月からはパワハラも対応が義務化

上記のセクハラ、マタハラに加えて、今年(2020年)の6月からはパワハラ(パワー・ハラスメント)についても、会社の対応の義務化対象となります。

ここでいうパワハラとは以下のものをいいます。

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるものであり、1から3までの要素を全て満たすものをいう。

 

パワハラに関しては、先日正式に公表された「パワハラ防止指針」の内容を踏まえ、後日、詳しく解説した記事をあげる予定です。

 

会社が行う必要のあるハラスメント対策

2020年5月まではセクハラとマタハラが最優先

以上のことから、会社のハラスメント対策の優先順位はセクハラとマタハラ等が最優先となります。

ただし、2020年6月以降はパワハラの防止措置が義務化されると、パワハラとセクハラとマタハラについて、優先度の優劣はなくなり、どれについてもきちんと対応する必要があります。

とはいえ、セクハラとマタハラについては、雇用管理上の措置の実施が義務化されてから時間が経っているのである程度対応できているところが多いのではないでしょうか。

 

その他のハラスメントへの対応

上記以外のハラスメント、例えばソジハラなどについても、全く対応が不要というわけではなく、もちろん対応できるに越したことはありません。

とはいえ、会社の規模や人材などによって、避けるリソースは決まっていると思われるので、そのあたりは会社ごとにどのように対応していくか考えていく必要があります。

 

企業が行うべきハラスメント対策

ハラスメント対策の具体的な内容は「指針」で示されている

セクハラ、マタハラ、そして、パワハラ。

これらの会社が雇用管理上の措置を講じなければならないハラスメントについては、行政が「指針」というものを公表しています。

行政側はこれを元に会社を監督するため、会社もこの「指針」に従う必要があります。

 

ハラスメント対策の指針の基本部分は同じ

セクハラ、マタハラ、そして、パワハラは、いずれも被害者や加害者、それが起こる背景など、それぞれに事情は異なります。

一方で、そうはあっても同じ「ハラスメント」でもあります。

そのため、行政の出す指針でも、ハラスメント対策のために会社が行う必要のある措置の大枠については共通しています。

どのハラスメントにも共通する対応の内容は以下の通りです。各項目の細かい部分についてはハラスメントごとに異なります。

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. 1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置

 

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発に当たるものとしては

  • 就業規則等にハラスメントを行ってはならない旨を規定(ハラスメント禁止規定の策定)
  • 社内報やパンフレット、会社ホームページでハラスメントを行ってはならない旨を記載し広報する
  • ハラスメントを行ってはならないことを研修等を通じて労働者に周知徹底する

などがそれに当たります。

いずれも、ハラスメントの定義が明確でないと、労働者への周知・啓発は難しいため、各ハラスメントの定義をきちんと会社側が把握しておく必要があります。

 

2.相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談(苦情を含む。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備については、単に相談窓口を設置するだけではなく、設置したことについて労働者に周知する必要があります。

また、相談については現実にそれが生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合についても対応できるようにしておく必要があるとされています。

 

3.職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応については、まずは「事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認」しなければなりません。

事実確認の際は相談者と行為者(ハラスメントを行ったとされる者)の両者から話を聞き、情報が十分でないと感じる場合は第三者からも話を聞く必要があります。

そして、ハラスメントが事実であった際は、被害者に対する配慮のため措置を行い、改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講じなければなりません。

 

4.1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置

1.から3.までの措置と併せて講ずべき措置としては、相談者のプライバシーの保護や相談者に対する不利益取扱いの禁止などがあります。

 

まとめ

以上は、各ハラスメントに共通する対策です。

各項目の細かい部分についてはハラスメントごとに異なります。

とはいえ、各ハラスメントで異なる部分の大半は各ハラスメントの「定義」に関する部分なので、会社がハラスメント対策として行う必要のある雇用管理上の措置の大半は上記の内容でまとまっているとかんがえていいでしょう。

また、上記の内容は、現状、行政からの指針等が公表されていないソジハラ対策などにも応用できるものとなっています。

 

今回はハラスメント全体の話でしたが、個々のハラスメント対策の細かい点については、新しい指針の紹介も兼ねて別記事でまとめたいと思います。

 

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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