この記事の目次
1. 2021年1月から時間単位の取得が可能に
1.1. 時間単位が子の看護休暇・介護休暇の最小単位に
子の看護休暇及び介護休暇については現行、1日単位及び半日単位の取得が認められています。
より厳密に言うと、子の看護休暇及び介護休暇については、半日単位が取得の最小単位となっています。
しかし、子の看護及び介護については、健康診断や予防接種、介護の専門家との相談など、要件によって所要時間が異なることや、時に突発的な対応が必要となることもあります。
こうしたことから、所要時間に応じてより柔軟に休暇を取得できる必要があるとし、省令の改正により、来年である2021年1月から子の看護休暇及び介護休暇時間の最小単位が「半日」から「時間(1時間)」に変更されます。
1.2. 短時間労働者も1日以外の取得が可能に
一方、1日の所定労働時間が短いもの(1日の所定労働時間が4時間以下の労働者)については、そもそも1日よりも短い単位、つまり、現行の半日単位での取得は認められていません。
しかし、今回、子の看護休暇及び介護休暇について時間単位取得が可能とのなったことで、同じく2021年1月より、1日の所定労働時間が4時間以下の労働者についても、時間単位での子の看護休暇及び介護休暇が取得できるようになります。
なお、現行では、長時間の移動を要する遠隔地で行う業務や、流れ作業方式や交替制勤務による業務といった半日単位取得が困難な業務に就くものついては、労使協定を締結することで半日単位取得の対象外とすることができます。
時間単位取得が可能になった後であっても、この取扱いに変更はなく、労使協定により、当該労働者を時間単位取得を対象外とすることができます。
2. 年次有給休暇の時間単位取得との違い
時間単位取得というと年次有給休暇の時間単位取得を思い浮かべる方も多いかと思われます。
しかし、子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得と、年次有給休暇の時間単位取得とでは異なる点が多くあります。
以下ではその相違点を述べていきたいと思います。
2.1. 制度導入は義務かどうか
まず、年次有給休暇の時間単位取得については、導入するかどうかは会社の任意で、導入の際は労使協定が必要となります。
一方、子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得については、労働者から時間単位での取得請求があった際に、それを認めるのは会社の義務とされています。
義務なので、年次有給休暇の時間単位取得のように労使協定を締結する必要はありません。
2.2. 有給か無給か
時間単位年休については、(当たり前ですが)有給です。
有給としない場合は未払い賃金が発生するので労働基準法違反となります。
一方の子の看護休暇・介護休暇については、労働しなかった時間はノーワークノーペイにより無給で問題ありません。
2.3. 中抜けが可能か否か
また、子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得については、子の看護休暇及び介護休暇は「始業時間から連続して」もしくは「終業時間に連続するように」しか取得できないようになっています。
つまり、始業時間を遅らせる、もしくは終業時間を早める、という形でしか法令上は労働者に時間単位での子の看護休暇及び介護休暇の取得を保証していないわけです。
このため、終業時間の途中のいわゆる中抜けのために子の看護休暇及び介護休暇を取得することを、会社側が認める義務はありません。
一方、年次有給休暇の時間単位取得にはこのような制限はなく、いわゆる中抜けに使用することも労働者の権利として認めています。
3. 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得の実務
ここからは、子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得の実務についてみていきたいと思います。
3.1. ① 時間単位取得と半日単位取得の関係
子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得が可能となることにより、当然、規定等の変更が必要となります。
この規定等の変更の際に注意しないといけないのが、現行の半日単位取得と時間単位取得の関係です。
繰り返しになりますが、現行の制度では、1日単位及び半日単位の取得が認められています。
そのため、今回の省令の改正で、この2つに時間単位の取得が追加された、と思われている方もいるかもしれません。
しかし、実際にはそうではなく、改正後の省令からは半日単位の取得がなくなり、その代わりとして時間単位の取得ができるようになっています。
つまり、子の看護休暇及び介護休暇の最小単位が半日から時間に変わっているのです。
よって、現行の育児介護休業規程や労使協定については、時間単位での休暇を追加するとともに、すでに記載されている子の看護休暇及び介護休暇の半日単位の規定についても修正が必要となります。
3.2. ② 時間単位取得と1日単位の取得の関係
次に、時間単位取得と1日単位の取得との関係です。
時間単位で子の看護休暇及び介護休暇を取得する場合、休暇1日分となる時間数は1日の所定労働時間数となります。
つまり、1日の所定労働時間が8時間の場合、8時間分を時間単位で取得すると休暇1日分となるわけです。
一方で、1日の所定労働時間が7時間30分などのように、1時間に満たない端数がある場合は1時間に切り上げないといけません。例えば、1日の所定労働時間が7時間30分の場合は8時間で休暇1日分、6時45分の場合は7時間で1日分となります。
また、シフト制などのように1日の所定労働時間が一定でない場合は、1年間における1日の平均所定労働時間数を1日分の時間数とします。この場合も、1時間に満たない端数がある場合は1時間に切り上げます。
3.3. ③ 半日単位取得の扱い
省令から半日単位取得がなくなったため、基本的には就業規則の規定から半日単位取得は削除することになるとなります。
仮に規定がなくても、取得する時間数を労働者が調整すれば、半日分の子の看護休暇及び介護休暇の取得は可能ですしね。
ただ、労働者がいちいち時間単位で何時間取得するかを指定するという面倒を避けたり、直感的に半日取得を可能とすることを目的に、あらかじめ半日単位の取得のフォーマットを会社が用意しておくこともできます。
この場合、規定には、子の看護休暇・介護休暇の半日単位というのが時間単位取得に換算して何時間になるのかを予め定めておく必要があります。
例えば、所定労働時間が8時間の会社の場合、半日単位の子の看護休暇及び介護休暇を4時間の時間単位取得と定義し、これ規定に定めるという形です。
また、午前と午後で半日の時間の長さを変えたい場合は、午前中に半日単位で取得する場合(始業の時刻から連続して取得する場合)は3時間、午後から半日単位で取得する場合(終業の時刻まで連続して取得する場合)は5時間の時間単位取得を行う、というように規定を整備することになります。
3.4. ④ 子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得の規定例
ここまでの内容を踏まえた、子の看護休暇・介護休暇の時間単位取得を就業規則に定める場合、以下のような規定を追加する必要があります。
① 所定労働時間が3時間を超え4時間以下の者…4時間
② 所定労働時間が4時間を超え5時間以下の者…5時間
③ 所定労働時間が5時間を超え6時間以下の者…6時間
④ 所定労働時間が6時間を超え7時間以下の者…7時間
⑤ 所定労働時間が7時間を超え8時間以下の者…8時間
時間単位取得が可能であることと、中抜けには使用できないことを定める
1つ目の規定は子の看護休暇及び介護休暇が時間単位取得でできることを定めた規定となります。
但し書きでは「始業時間を遅らせる、もしくは終業時間を早める」形でしか時間単位取得できないことを定めています。
もちろん、子の看護休暇及び介護休暇による中抜けについて、会社が認めてはいけないとは法令に定められていないので、会社の裁量で中抜けを認める場合は但し書きは削除して構いません
労働者の所定労働時間の幅によって調整
もう1つの規定は、時間単位取得を何時間取ったら1日分の休暇を取ったとするか、という規定です。
こちらの規定方法は、年次有給休暇の時間単位取得に習ったものとなっています。
当然、「所定労働時間が3時間を超え4時間以下の者」がいない場合は該当の号を削除して構いませんし、「所定労働時間が2時間を超え3時間以下の者」がいる場合は号を追加する必要があります。
そのあたりは個々の会社の所定労働時間の幅に応じて、調整する必要があります。
3.5. ⑤ 労使協定の見直し
現行の半日単位取得では、労使協定で定めることにより、1日の所定労働時間の2分の1以外の時間数を半日とすることができます。
しかし、2021年1月以降は、この規定の根拠となっている省令自体が削除されます。
よって、施行前までにこの規定を利用している会社は速やかに当該項目を削除し、労使協定を締結し直す必要があります。
また「業務の性質又は実施体制に照らして短時間勤務制度を講ずることが困難な業務」に就いているため、それらの業務に就くものを労使協定により半日単位取得の対象外としている場合、文言を半日単位から時間単位に変更しておく必要があります。
一方、労使協定で半日単位の時間数を変更していない場合、今回の改正で労使協定の内容を見直しが必要となる箇所は特にありません。
3.6. ⑥ 労働者への周知
子の看護休暇及び介護休暇の時間単位取得が可能になったことについて、労働者への周知が必要です。
特にこれまでの半日単位取得と時間単位取得との違いについては重点的に説明を行っておいた方が後々トラブルになることを防ぐことができます。
また、所定労働時間が4時間以下の短時間労働者がいる場合は、そうしたものであっても時間単位取得は可能であることを説明する必要があります。