その他法改正

平成29年1月の育児・介護休業法等の改正により企業のマタハラ防止措置が義務化されます

2016年6月7日

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2ちゃんねるのまとめサイトの記事ですが、ちょっと気になる、そして、非常に残念な気持ちになるまとめがあったので、今日はその話と絡めて来年の法改正のことを。

友人(新婚)が職場の上司から「今は子どもを作らないで欲しい」と打診されたらしい 気になったのですが、女性が主な職場って妊娠のタイミングなど周囲と話をするものなんですか?

…、まとめサイトの名前が「結婚・恋愛ニュースぷらす」となっておりますが、別に普段からこういうジャンルのサイトを巡回しているわけではないのであしからず(誰もそんなこと思ってない)。

内容としては、「忙しいから妊娠するな」と上司に言われた友達に、自分が妊娠していることを言いづらい、というもの。

典型的なマタハラの話であり、マタハラに苦しむ友達に気を使わせれられる二次被害の話でもあります。

顧問先や関与先でなければ、監督署行きなよ、と言ってあげたくなる案件です(顧問先や関与先だと、別の意味で泣けてくる…)。

実は、こうしたマタハラについて、来年の法改正で企業が防止措置を取ることを義務化されます。

 

マタハラ防止措置が義務化

来年一月より育児・介護休業法が改正されます。関連で男女雇用機会均等法も改正されます。

メインの改正は介護休業を育児休業の水準まで引き上げることですが、育児休業についても1つ、大きな改正があって、それが「企業のマタハラ防止措置の義務付け」なのです。

以下が、その条文。

育児・介護休業法

第25条 事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

男女雇用機会均等法

第11条の2 事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第65条第1項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第2項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

「就業環境が害される」というのが、いわゆるハラスメントのことですね。

最初に、マタハラ防止措置、と書きましたが、より厳密に言えば、会社は妊娠、出産、育児休業、「介護休業」等を理由とする上司・同僚などのハラスメントを会社は防止する義務が来年一月より発生します。

マタハラ以外にも介護休業もその対象となること、会社や上司だけでなく同僚からのハラスメントの防止しなければいけない、というのが注意点ですね。

 

厚労省のマタハラ防止措置の指針案

では、具体的に会社はどのような防止措置を講じなければならないのでしょうか。

これについては5月の雇用均等分科会で、厚労省が出すマタハラ防止の指針案が出ています。

案なので今後変更される可能性はありますが大枠は変わらないはずです。

  1. 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応
  4. ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置
  5. 1から4までの措置と併せて講ずべき措置

妊娠・出産等に関するハラスメントの防止措置の内容について(案)(リンク先PDF)
育児休業等に関するハラスメントの防止措置の内容について(案)(リンク先PDF)

参照:第172回労働政策審議会雇用均等分科会

 

1は、マタハラ等について、会社が方針を定め労働者に教育しましょうってことですね。つまり、就業規則にマタハラ防止策を入れて、社員教育を行えば、とりあえずはOK。

2は、相談窓口を設ける、ということ。平成18年指針により、現在の日本企業には基本的にはセクハラの相談窓口があるはず。ない、といってもあるはずで、そのセクハラ相談と一元的に相談できるような仕組みにすべきとされています。

3は、万が一ハラスメントがあったときに、会社として適正に対処し、再発防止に努めなさい、というもの。

4は、ハラスメントが起こるには何らかの背景があるはずなので、そうした背景の解消にも努めなさい、というもの。経営者や労働者の、個人の資質によるものなのか、企業風土によるものなのかで対応が変わってきそうです。

5は、これだけだとなんだかわかりませんが、おおまかに2つあって1つは「相談者・行為者等のプライバシー保護」。もう一つが「相談者や事実関係確認の協力者への不利益取り扱いの禁止」です。

相談者や事実関係確認の協力者に、マタハラの行為者は含めないので、行為者に対する懲戒処分は事実関係が明らかであれば行って構いません。もちろん、程度に合わせたものでなければいけませんが。

 

まとめ

以上となります。

会社として行わないといけないことをまとめると、

  • マタハラ防止のための規則の制定と体制の整備
  • 社員教育
  • 相談窓口の設置(セクハラの相談窓口と統一されたもの)

が、主なところでしょうか。

法律に定められる以上、こうした防止措置を取らずに、マタハラ等が起こった場合、監督署が調査にやってくることや、裁判に発展した際の慰謝料請求などは避けられません。会社としてきちんと対応していきましょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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