年金・健康保険制度

「月額賃金88000円の壁」と「130万円の壁」&「4分の3ルール」の関係を解説

2016年7月20日

法改正で社会保険に「加入しないといけない人」が増加

今年(2016年)の10月より、社会保険の適用範囲が拡大されます。

具体的には以下の条件に当てはまる場合、という条件が追加されます。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 1年以上継続して雇用される見込みがある
  4. 被保険者の数が501人以上の企業
  5. 学生でない

以上の1.~5.のすべてを満たす場合、その労働者は社会保険に加入しなければなりません。

 

こちら、一般には2の「月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)」という条件から「年収106万円の壁」と呼ばれているものです。

ただ、収入要件については、年収でみることなはなく必ず月額賃金で見るので、実際には「月額賃金88000円の壁」と呼ぶほうがより適切かと思います。

では、この「月額賃金88000円の壁」が新しくできた場合、これまでの「130万円の壁」や「4分の3ルール」はどうなるのでしょうか?

 

「130万円の壁」や「4分の3ルール」はなくならない

大企業(被保険者数501人以上)は「月額賃金88000円の壁」

まず、大前提として「月額賃金88000円の壁」が新しくできても「130万円の壁」や「4分の3ルール」がなくなることはありません(今年の10月以降、4分の3ルールは少し変更されますが)。

社会保険の被保険者の数が501人以上の大企業において、「月額賃金88000円の壁」が新たに設けられるという話です。

 

中小企業は今まで通り「4分の3ルール」「130万円の壁」

よって、中小企業の場合、「被保険者の数が501人以上」いないので、この「月額賃金88000円の壁」の対象とはなりません。

そのため、労働者の労働時間が、通常の労働者の4分の3以上であれば、社会保険に加入する必要がありますし、この「4分の3ルール」に当てはまらなくても、賃金その他の収入が年間で130万円以上となる場合、被保険者の扶養とはなれません。

中小企業では、社会保険の適用についてはこれまでどおりというわけです。

適用の順番は以下のようになります。

「4分の3ルール」→「130万円の壁」

「4分の3ルール」を既に満たしている場合、社会保険に加入しているはずなので、「130万円の壁」を気にする必要はありませんので、このような順番で、社会保険へ加入させるべきかどうか、扶養に入れるかどうかを見ていきます。

 

「月額賃金88000円」未満でも「130万円の壁」を超える場合

なお、「被保険者の数が501人以上」いる大企業の場合でも、「130万円の壁」は依然として残り続けます。

例えば、その会社でもらっている月額賃金が88000円未満の場合、通常「130万円の壁」に届くことはありません。

しかし、「月額賃金88000円の壁」には交通費や賞与を含めませんが、「130万円の壁」には含める上、不動産収入や年金など、どのような収入であってもすべて「130万円の壁」では含めます。

なので、「月額賃金88000円の壁」の基準未満であっても、「130万円の壁」を超えてしまうことは考えられます。

当然、超えてしまった場合は健康保険の扶養からは外れることになります。

 

まとめ

以上です。

特に大企業の場合、「月額賃金88000円の壁」ばかりに気を取られて、130万円の壁」の対応がおろそかにならないようご注意ください。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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