年金・健康保険制度

扶養内で働きたい主婦等の社会保険加入に影響大な週所定労働時間20時間の話

2016年4月27日

1. 年収だけじゃない、労働時間も重要となる主婦等の社会保険加入

1.1. 年収の壁は法律上どうしても生まれるバグみたいなもの

年収に関しては103万円の壁や130万円の壁といったように、その額を超えると逆に働く側が損をする壁、というのが存在します。

これについては、画一的に作らざるを得ない法律において、どうしても出てしまう不具合やバグみたいなものなので、どうしようもない部分もあります。

しかし、不具合だろうがバグだろうが、労働者側の観点で言えば、その壁を越えると金銭的に損をするわけですから、これを超えないようにしたくなるのは当然のことです。

 

1.2. 平成28年10月以降、社会保険の適用は拡大の一途

その一方で、社会保険については、平成28年10月より社会保険の適用拡大が開始されています。

これにより新たに生まれたのが「月収8.8万円」もしくは「年収106万円」の壁です。

この新しい壁については、「特定適用事業所」にのみ適用されるもので、制度開始時点では、特定適用事業所に該当するのは基本的に501人以上の大企業だけが対象でした。

しかし、令和4年10月からは101人以上の会社、令和6年10月からは51人以上の会社が強制で特定適用事業所になるため、その範囲はどんどん拡大しています。

 

1.3. 特定適用事業所と労働時間と社会保険加入

ただ、この特定適用事業所に雇用される労働者の社会保険の適用拡大については、年収だけでなく労働時間など他の要件によっても加入の有無が変わってきます。

そこで今回は、特定適用事業所と労働時間の関連について見ていきます。

特定適用事業所に関する年収の壁(106万円の壁(月額8.8万円の壁))については、過去記事の中で何度か扱っているので、そちらをご覧ください。

 

2. 特定適用事業所に雇用される労働者の社会保険加入の条件

2.1. 特定適用事業所の要件

まず、特定適用事業所の要件ですが、すでに述べたとおり、制度開始時の平成28年10月時点では501人以上の大企業が強制で特定適用事業所とされました。

しかし、令和4年10月以降は101人以上、令和6年10月以降は51人以上の企業が、特定適用事業所となります。(関連記事:令和4年には101人以上、令和6年には51人以上の会社が特定適用事業所に)。

なお、上記の要件に当てはまらない会社であっても、申請により任意で特定適用事業所となることは可能です。

 

2.2. 特定適用事業所で雇用される労働者の社会保険加入の条件

特定適用事業所で雇用される場合と、特定適用事業所以外で雇用される場合とでは、社会保険の加入条件が変わってくるのですが、特定適用事業所に雇用される場合、以下のすべての条件をみたす場合、社会保険に加入する必要があります。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上
  2. 月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 学生でない

 

特定適用事業所に雇用される場合、上記のすべての条件を満たす必要があるので、106万円の壁にビクビクな方も、週の労働時間を20時間未満に抑えれば大丈夫なわけです。

また、学生の場合はそもそも加入できません。

一方で雇用されている会社が特定適用事業所ではない場合、「1日の所定労働時間もしくは月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上」の場合に社会保険加入の対象となります(この場合、気をつけるべき年収の壁は130万円です。)

 

3. 「1週間の所定労働時間が20時間以上」とは

「1週間の所定労働時間が20時間以上」が条件になるといっても、短時間で働く場合、シフトの関係でこれが前後するのが普通です。

では、短時間労働者の「1週間の所定労働時間が20時間以上」についてはどう考えれば良いのでしょうか。

 

3.1. 基本は労働契約書や就業規則の所定労働時間で見る

まず、基本的には労働契約書や就業規則に記載のある時間で判断します。

というのも、週20時間以上というのは「所定労働時間」で判断するからです。

所定労働時間というのは労働契約書や就業規則で決めた、労働者が働くこととなっている時間なので、まずは労働契約書や就業規則で判断するわけです。

 

3.2. 実態と契約がかけ離れている場合は実態優先

しかし、仮に労働契約書や就業規則で週20時間未満と定められていたとしても、実態の労働時間が20時間以上となることは十分あり得ます。

このような場合はどうなるのでしょうか。

例えば、労働時間が週20時間を超えるのがあくまで一時的な場合、週の労働時間が20時間以上となっても「1週間の所定労働時間が20時間以上」に該当することはありません。

一方で、労働契約書や就業規則に週20時間未満と定められていても、実態が、常に週20時間以上労働となっている場合、実態が優先されます。

なので、社会保険の加入が嫌だからといって、労働契約書上は所定労働時間を週20時間未満にし、実際には週20時間以上働く、といったことはできないわけです。

仮にこうした働き方をしていたとしても、年金事務所の調査が入った場合、是正を指示され加入しないといけなくなります。

 

3.3. 実態として週20時間以上の状態が2か月続くと社会保険加入の対象

では、契約書の時間をみるか、実態をみるかの境目はどのあたりにあるのでしょうか。

これに関しては、社会保険の加入要件を満たす状態が2か月続いた場合、その次の月から社会保険に加入しないといけないとされています。

この場合の週20時間未満の考え方ですが、基本的には1か月の平均で考えます。

そして、1か月で見た場合の週20時間未満となる時間数は月86時間です。

 

3.4. 週20時間未満=月約86時間

この月86時間の計算方法は以下の通りですが、ちょっとマニアックなので、時間数だけわかればいい、という方は読み飛ばしても問題ありません。

まず、前提として週の平均労働時間は、1ヶ月の所定労働時間を12分の52で割って計算します。

12分の52ってなんだって話ですが、1ヶ月の所定労働時間に12をかけると、年間の労働時間が出ますよね。それを1年を週に直した52週で割ると、年間で見た場合の、週の平均的な所定労働時間を算出することができます。

例えば、週の所定労働時間が168時間の場合、168に12をかけると2016。これを52で割ると約38.8時間になり、これが社会保険加入の条件を満たすかどうかの判断をする際の、週の所定労働時間となります。

で、上記の式を20時間を超えないよう逆算してみると、1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合のボーダーラインは86時間となります。87時間だと上記の計算で20時間を超えてしまいます。

まあ、厳密に言うと、86時間40分まではギリギリ大丈夫ですが、多少の余裕は見ておいたほうがよいと思い、86時間としました。

 

4. まとめ

以上を踏まえ、社会保険に加入したくない場合は、「1週間の所定労働時間が20時間以上」とならないよう、労働時間を調整する必要があります。

ただし、週の所定労働時間が20時間未満だと、社会保険に加入できないのはもちろんのこと、雇用保険にも加入できなくなるので注意が必要です。

ちなみに、週の所定労働時間が20時間以上で、月額賃金が88000円未満の場合、社会保険に加入せずに雇用保険には加入可能です。

ただ、この場合、地域によっては最低賃金を下回るところもあるので注意が必要、というか、正直、あまり現実的とは言えないでしょう。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士(登録番号 第23130006号)。社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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