就業規則

ネット炎上が起こった際に使用者責任を回避する際の切り札は就業規則

2016年4月26日

昨日は「ネット炎上の原因が表沙汰になるパターン」から、会社としてネット炎上の原因となるようなことを、社員にいかにやらせないか、行わせないか、ということを書きました。

自爆型と通報型、ネット炎上の原因が表沙汰になるパターンから考える会社の社員教育

要するに、昨日の記事はネット炎上になる前の予防的な措置について書いたわけです。

今回は、実際にネット炎上が起こったときの話をしたいと思います。

 

ネット炎上で会社が被害を受ける2つのパターン

「ネット炎上の原因が表沙汰になるパターン」には自爆型と通報型の2つがあるという話を昨日はしました。

実は、ネット炎上が起こった際に、会社が被害を受けるパターンにも、以下のように2つのパターンが存在します。

  1. 労働者に責任がある
  2. 会社にも責任がある

 

2の「会社に責任がある」という言い方が端的に表していますが、実は上記の2つというのは交通事故と同じで、10-0というのはなかなかない。

バカなバイトが冷蔵庫や食器洗い機に入ったとかにしたって、事業場でやったり、ましてや業務中にやってたら使用者責任が問われるのはまず避けられない。

一方で、社員の個人的つぶやきや投稿などが原因で炎上し、それが会社の方に延焼した場合でも「こんなやつ雇ってる会社にも問題がある」とか「会社がしっかり教育しろ」みたいな、燃やす奴のほうが頭がオカシイだろう、みたいなことを言うやつもいるので、「会社は関係ない」と簡単に逃げることはできないわけです。

 

延焼をいかに避けるか

で、上記の1と2の分類で、2の比重のほうが大きい場合、例えば、先日の横浜の花見の場所取りの件なんかは、

花見の場所取り炎上は誰があなたの会社を炎上させるかわからない時代になった証拠だ!

会社が非難を受けたり損害を受けたり、というのはある程度しょうがないと思います。

一方で、明らかに労働者の方が悪い、会社に落ち度があるとは思えないような案件まで、巻き込みで燃やされたら会社としては溜まったものではないわけです。

で、そうした巻き込みから逃れる方法があるのかないのかといえば、ないことはない、というのがわたしの考えで、その際に大きな役割を担うのが就業規則だと思っています。

 

業務外でのSNS利用についての規則

皆さんの会社の就業規則には、従業員のSNSやスマホの利用ルールを定めた規定が入っているでしょうか? 少し前に作られた就業規則なら、ネット利用やPC利用についての規定は入っているかもしれませんけど、なかなかそこまでは入っていないところも多いかもしれません。(少なくとも名古屋は全然だと思う。東京はどうなのだろうか)

ちなみに、うちで出してる炎上対策の条文はこんな感じ。一応、商売道具なので、一部省略しております。もっと知りたい方はお問い合わせを。

 

(業務外でのSNS等の取り扱い)
第  条 業務外で掲示板への書き込みおよび、Facebook、Twitter、LINE、Google+、ブログその他ソーシャルメディアを利用する際は、以下の内容の書き込み、画像の掲載その他それに類する行為をしてはならない。

  • 会社の名称、業務内容、取引先、その他会社が特定できるようなこと
  • 会社の機密にかかわること
  • 会社の業務を妨害するようなこと、
  • 会社の名誉を傷つけるようなこと
  • 自分以外の他の従業員のこと
  • 他者への中傷、粗暴な発言等、公序良俗に反すること
  • 著作権や肖像権などの第三者の権利を侵害するようなこと
  • その他、一般常識を逸脱した行為や言動

2.前項各号の内容についての書き込み、画像の掲載その他それに類する行為によって会社が損害を受けた場合、会社は違反したものに対して損害賠償を請求することがある。

(3から5は省略。)

6.業務外で掲示板への書き込みおよび、Facebook、Twitter、LINE、Google+、ブログその他ソーシャルメディアを利用する際は、会社の見解ではなく一個人の見解であることを明示すること。

 

就業規則とは、業務中のルールなので、上記のように業務外の労働者にまで適用しよう、というのはちょっといき過ぎに思われる人もいるかもしれませんね。でも、完全に業務外であるのなら、そもそも会社の話をするな、という話。

そして、会社の話をSNSという公共の場でするなら、それは広報みたいなものなのだからルールを守りなさい、という話でもあるのです。

事実として一度炎上が起これば、会社に大きな影響が出る事も有り得るわけですし、客観的に見て合理性のない部分がなく、常識的なことしか書かれていなければ、これくらいはなにも問題無いでしょう。

あと、ここには載せませんが、上記の条文以外にも、完全スマホ対応型の、業務中の私用携帯電話のことなんかも条文としていれています。

特に、事業場でのいわゆるバカッターなんかは、事業場でのスマホ使用を禁止すれば、そもそもバカな写真を取ることができないので、心配な会社はすぐにでも入れるべきです。

 

新しいタイプの事件は就業規則が尊重される傾向あり

これは、とある労働紛争に詳しい弁護士の先生が仰っていたのですが、普段のわりとベタな労働紛争時は、裁判官によっては就業規則の内容はあまり重視されないこともあるそうなのですが、ネット炎上のような比較的新しいタイプの労働紛争については、就業規則の内容をかなり重視するそうです。

要するに、ベタな労働問題には判例があるので、就業規則よりもそちらで判断しているけれど、新しいタイプの問題の際は、他に参考にするものがないというわけです。

なので、もしもの時のためにも、SNSやスマホ(私用携帯電話)の規定をきちんと整えておくことは、ネット炎上で会社と労働者のあいだに紛争が起こった際に、会社が主導権を握るためにも重要な事かと思います。

 

以下、今日のまとめ

  • 労働者に原因のあるネット炎上でも、会社が責任を回避することは難しい
  • そのため、就業規則で使用者責任を回避できるような条項をきちんと入れておく
  • 新しいタイプの事件では裁判所も就業規則を尊重してくれる

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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