給与明細を見ると、「雇用保険料」が引かれているはずです。見たことがないという人も、次の給料日に確認してみてください。
この雇用保険料が四月から変わっています。「また増えたんだろう」とぼやきが聞こえてきそうですが、減っています。一般の事業の場合、保険料率はこれまでの1.35%から1.1%に引き下げられました。農林水産・清酒製造事業等は1.55%から1.3%に、建設の事業は1.65%から1.4%にそれぞれ下がりました。
保険料率は、集めた保険料と給付金のバランスをみて変更されます。近年は、育児休業給付金や再就職手当の給付率引き上げ、給付の新設などサービスが拡充されてきました。
それでも企業収益の向上や失業率の低下などで基本手当(失業保険)を受ける人が減り、雇用保険財政は黒字。二〇一四年度末で雇用保険の積立金は、六兆円余りで過去最高です。そこで、ここ四年間は法律で定めた範囲の下限だった保険料率について、国は「引き下げても当面は破綻しない」と判断したのです。
雇用保険料は、事業者と労働者が分担しています。一版の事業でみると1.1%のうちの0.7%が会社、0.4%が労働者です。事業者の方が負担が重いのは、働く人への給付金以外に、雇用安定や従業員の能力開発に取り組む事業者への助成もあり、その分が加わっているからです。
では、私たちの保険料はいくらでしょうか。毎月の給料の額面が三十万円とした場合、引かれるのは千二百円。年金保険料や所得税に比べかなり安いのではないでしょうか。負担が少ないわりに給付メニューは充実し、雇用保険はかなりお得な仕組みだと私は思います。
中日新聞H28.4.21付「働く人を守る労働保険」より転載
というわけで、第3回目です。今回はつい最近法改正が行われ、比較的タイムリーな雇用保険の保険料と保険料率の話。
ちなみに、引き下げられた保険料が適用されるのは「今年の4月分の給与」からとなります。
労働保険は「労働月」でそれが「何月の給与なのか」を見ます。4月に働いた分を4月に支払うのなら4月の給与から、4月に働いた分を5月に支払うのなら5月の給与から、引き下げられた雇用保険料率が適用されます。
(社会保険や税金は「支払い月」で見ます。その給与が5月に支払われるのであれば、4月に働いた分であろうが、5月に働いた分であろうが、それは「5月分になります」)
この辺りも次回の給料日の明細で確認してみてください。もちろん、会社の経営者の方々はここの部分、お間違えないように。