雇用保険制度

あなたの「即日失業保険受給」を阻む待機期間と給付制限の話

2016年2月25日

前回の話の続きのようなそうでもない記事です。

雇用保険がいかにお得な制度か社労士が解説する記事

前回は、雇用保険は保険料に比べて返ってくる給付額が大きいの、基本的に入り損はないという話をしましたが、雇用保険の基本手当、いわゆる失業保険というのは、仕事を辞めればすぐにもらえるというものではありません。

 

7日の待期期間がある

離職後、ハローワークに、求職の申し込みという名の失業保険の申し込みを行うと、生きとし生けるすべての求職者の方は7日の待期期間を取ることになります。ちなみに待「機」ではありませんよ。何かしらのチャンスを待つ期間ではないので。失業保険を働かずにお金をもらうチャンスだと思っているそこのあなた、そうじゃないんですよ。

よって、この7日間は誰も失業保険はもらえません。

どうしてこんな期間が設けられているかは、雇用保険法の条文に書いてないのでわかりませんが(笑)、まあ、なるべく失業保険に頼らず働いてね、ということだと思います。

では、待期期間の7日間が終わると、すぐに失業保険をもらえるかというと、それは人によります。

 

退職理由によってすぐにもらえるかどうか変わる

前の会社を正当な理由なく自己都合退職していたり、懲戒解雇のように労働者の方に責任のある退職をしていると3ヶ月間の給付制限期間が付くからです。

この場合で言う、正当な理由とは会社が気に入らなかったとか、人間関係がうまくいかなかった程度はまったく不十分で、病気や心身の障害等で労働が困難になった場合や、結婚や育児のための引っ越しや事業所の移転により通勤が困難になったなどの理由が必要です。

具体的には以下の通りとなります。

① 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
② 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第 20 条第 1 項の受給期間延長措置を受けた者
③ 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合
又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭
の事情が急変したことにより離職した者
④ 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
⑤ 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
ⅰ) 結婚に伴う住所の変更
ⅱ) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼
ⅲ) 事業所の通勤困難な地への移転
ⅳ) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
ⅴ) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
ⅵ) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
ⅶ) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
⑥ その他、上記「特定受給資格者の範囲」のⅡの⑩に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者
の募集に応じて離職した者等

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(リンク先PDF)

 

もちろん、働いていた会社が倒産したりだとか、会社都合による解雇にあった場合なども、こうした給付制限の対象となりません。また、有期契約の満了で雇い止めされた場合も大抵は給付制限は付きません。

大抵は、というのは、有期契約の場合、それが3年を超えると、雇用保険の手続き上はそれを常用雇用とみなすためで、有期契約の期間が3年を超えている状況で、労働者から契約の更新を断ると、自己都合扱いになってしまうのです。

つまり、以前働いていた会社の辞め方が、失業保険を早くもらえるかどうかに関わってくるわけです。なので、会社を辞めた後に、離職理由を変えてくれと言ってくる労働者も中にはいます(笑)。中にはハローワークの職員がそうそそのかすケースもあったりなかったり。

 

いずれにせよ、失業保険をもらう際、普通は待期期間の7日と3ヶ月の給付制限の経過が必要と考えておいた方がよいでしょう。

 

退職理由以外でも給付制限がかかる

退職理由以外でも給付制限を受けることがあります。以下がそれですが、

  1. ハローワークの紹介による職業の拒否
  2. ハローワークの指示した公共職業訓練等の受講拒否
  3. 正当な理由なくハロー枠の行う職業指導の受け入れ拒否

要するに、ハローワークの指示に従わないとあげないよ、ということです。こちらは1ヶ月間制限が付きます。

ちなみに、不正受給した場合も給付制限されますが、こちらは、不正受給したか、もしくは不正受給しようとした日以後、一切不支給となるので、他の給付制限より断然厳しくなっています。

 

失業保険目当ての退職はオススメできません

以上です。

最後に給付制限を受けない退職理由についてまとめておきましょう。

  • 会社の倒産
  • 規模宿所など会社都合の解雇
  • 正当な理由のある自己都合退職
  • 有期契約の満了・雇い止め etc

 

失業保険をきちんともらうことができれば、保険料の払い損になることはないとはいえ、給付制限の存在を知らずに、あまり深く考えずに、失業保険目当てに会社を辞めると失待期期間と給付制限期間の3ヶ月と7日間をなんとか乗り切らないと、いろんな意味で干上がってしまうので注意が必要です。

みなさんの会社にもそういう考えの甘い人がいたら、給付制限の存在をちらつかせて、そっと諭してあげれば、会社を辞めることを思いとどまってくれるかもしれませんよ。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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