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働き方改革でますます重要になる労使協定と過半数代表者の選出

2018年7月11日

労務に関するコンプライアンスを進める上で「労使協定」を結ぶことが必要となる機会は多いです。

代表的なのは労働者に時間外・休日労働を行わせるための協定、いわゆる「36協定」の締結などがそれです。

今国会で成立した働き方改革法でも、労使協定の締結が重要となる場面は少なくありません。

今回は、労使協定を結ぶ上で重要な「過半数代表者」についておさらいするとともに、今回の働き方改革法で改正のあった労使協定が必要となる制度について解説します。

 

労使協定と過半数代表者

労使協定とは労働者の代表と使用者で結ぶ協定のことを言います。

ここでいう労働者の代表とは「労働者の過半数で組織する労働組合」、そうした組合がない場合は「労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)」となります。

多くの会社ではそもそも労働組合がないことがほとんどのため、過半数代表者と協定を結ぶことがほとんどとなるはずですが、その選出には以下のような注意点があり、これが守れない場合、結んだ協定は無効となってしまいます。

法律に基づく労使協定には免罰効果があり、悪用されると労働者の権利等を脅かす可能性があるからです。

過半数代表者となるための要件

  • 管理監督者でない
  • 36協定を締結するための過半数代表者を選出することを明らかにした上で、投票、挙手などにより選出すること

選出の際の注意事項

  • 使用者の意向によって過半数代表者が選出された場合、その36協定は無効となる
  • 親睦会の幹事等を過半数代表等するのは、36協定締結のために選出されたわけではないので、その協定は無効となる

 

働き方改革法で労使協定が必要となる場面

① 時間外労働の上限規制

法定労働時間を超えて労働させる場合や法定休日労働をさせる際、36協定が必要なのは時間外労働の上限規制が開始されても変わりありません。

むしろ、罰則が設けられた分、これまで以上に重要となります。

労働基準法改正案から年間720時間の「時間外労働の上限規制」や「労使協定」を解説

(執筆時期から労働基準法改正案となっていますが、内容は成立した改正労働基準法と変更ありません)

 

② 1か月を超える清算期間を定めるフレックスタイム制

フレックスタイム制を導入する際、労使協定が必要なのはこれまで通りです。

一方、法改正により1か月を超える清算期間を定めることができるようになりましたが、1か月を超える清算期間を定める場合は、労使協定の行政官庁への届出が義務化されました(1か月以内の清算期間の場合は届出義務はなしなのも従前通り)。

2019年4月1日より改正予定の「フレックスタイム制」の変更点+制度自体も解説

 

③ 派遣労働者の均等・均衡待遇の適用を除外する労使協定

今回の派遣法の改正では、派遣先の労働者と派遣労働者に関する待遇の不合理の格差が盛り込まれています。

ただ、派遣先の労働者に合わせて派遣労働者の待遇を常に不合理がないよう変更するとなると、派遣先が変わった際に待遇が良くなることもあれば悪くなることもありえます。

そのため、今回の改正では、派遣先の労働者と待遇を合わせるのか、労使協定により派遣先の労働者との均等・均衡待遇の適用を除外することができるようになっています。

派遣労働者の同一労働同一賃金を目指す労働者派遣法の改正の概要(施行は平成32年(2020年)予定)

 

以上です。

他にも、年5日の年次有給休暇の取得に関して計画的付与を利用する場合や、テレワークガイドラインにあるようにテレワークを行う労働者に時間単位年休を適用する場合など、会社の働き方改革によって労使協定が必要となる場面は増えてくるため、特に過半数代表者の選手に関しては注意が必要です。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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