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働き方改革って何から手を付けたらいいの? という人のための記事

働き方改革、働き方改革と世間では言われておりますが、ぼんやりなんとなく、くらいしか意味がわかっておらず、その実像を掴めてる人、というのは意外に少ないのではないでしょうか。

というか、労働改革に関するありとあらゆるものが働き方改革と関連付けられているので、「何から手を付けたらいいのかわからん」という人も多いでしょう。

ちなみに、政府が働き方改革のために進めようとしている政策は、ざっと以下の通り。

  • 長時間労働の是正(時間外労働の上限規制)
  • 同一労働同一賃金
  • 勤務間インターバル制度
  • テレワーク
  • 副業・兼業
  • 女性・若者の活躍
  • 病気の治療、子育て・介護との仕事の両立、障害者の就労の推進
  • 高齢者の就業促進
  • 外国人材の受入れ

他にも上げれば切りがないんですが、会社の労務管理に関連のあるものはだいたいこんな感じです。

では、この中で会社が優先すべきものとはどれでしょうか。

 

真に重要なのは「労働者の労働環境の改善」

先に言っておくと、以下で述べる優先順位とは、会社として特に方針等決まっていないのであれば、という前提です。

間違えてはいけないのは、働き方改革において真に重要なのは「労働者の労働環境の改善」です。

この「労働者の労働環境の改善」の意味は会社によって変わってくると思いますが、会社なりのやり方でそれが達成できるなら、コンプライアンスの面さえクリアできていれば、それはそれで問題はなく、わざわざ国の言う働き方改革に従う意味もありません。

 

最優先は「長時間労働の是正(時間外労働の上限規制)」

よって、ここから述べる優先順位とはあくまで、まだ働き方改革について取り組みが始められてない会社に向けたものとなります。

で、多くの会社がまず最初に取り組まないといけないのは「長時間労働の是正(時間外労働の上限規制)」です。

なぜなら、長時間労働の是正(時間外労働の上限規制)に関しては、労働基準法が大幅に改正され、法律で定められた時間外労働の上限を超えた場合、会社は刑罰の対象となるからです。

真に重要なのは「労働者の労働環境の改善」とか言っておきながら、「法律を守れ」というのもあれですが、「労働者の労働環境の改善しました、でも、会社と社長は書類送検されました」では意味がないので、まずは時間外労働の上限規制を含む改正法に対応することが第一かと思われます。

 

「同一労働同一賃金」の実態は「正規と非正規の格差是正」

次に優先すべきは「同一労働同一賃金」です。

こちらも働き方改革に関連して法改正が行われる項目であることがその理由です。

ただ、同一労働同一賃金の法改正は、時間外労働の上限規制と違って、違反したとしても「お縄に付く」といったタイプのものではなく、労使で争いが起こったときに会社が法律をきちんと守っていないと、裁判等で負けて損害を被るというタイプの法改正となります。

また、そもそも日本版の「同一労働同一賃金」は「同一労働同一賃金」といっても、その実態は「正規と非正規の格差是正」が本当のところ。

なにせ「同一労働同一賃金」に関連して改正されるのはパートタイム労働法と労働者派遣法の2つですからね(労働契約法も改正されるけど、パートタイム労働法に同じような規定ができる関連で20条が削除されるだけ)。

なので、若い正社員とベテランの正社員のあいだで同一労働同一賃金を達成しろとか、そういったことは働き方改革実行計画にも改正法にも同一労働同一賃金のガイドライン案にも、一切書いてないことには注意が必要です。

なにげにパートタイム労働法の改正よりも労働者派遣法の改正の方が大がかりな上に、実務に与える影響も大きいので、派遣元及び派遣先は注意が必要です。

 

「副業・兼業」にも対応しないといけないが

3つ目は「副業・兼業」です。

「副業・兼業」に関しては、法改正こそないものの、現在主流の「副業・兼業を原則禁止」という企業の方針は、正当な理由がない限り裁判では否定される傾向にあります。

ただ、安直に副業・兼業を解禁することは、会社にとって大きな不利益になる可能性がある、ということを昔「SR」や「ビジネスガイド」の記事に書きました。

で、先月、ようやく、厚生労働省は副業・兼業の正式なガイドラインや改訂されたモデル就業規則を公表したのですが、内容はわたしが記事で問題点(労働時間の通算の困難さや業務の煩雑さなど)として指摘したようなことはほぼほぼスルー。

よって「対応はしないといけないけど、しようとすると非常に面倒くさい」という「副業・兼業」の現状は今後もしばらくは変わりそうになく、優先順位が高いと言っておいてなんですが、しばらくは他の会社の様子を見つつ・・・、というのが吉かもしれません。

 

上記の3つ以外は、法改正がなかったりガイドラインが改定されるだけだったり、なんだったら「でかいこと」だけ実行計画に書いて具体的な動きの見えないものもあったりで、正直、やれる余裕があったらやる、あるいは自分の会社の働き方改革に資するのであればやる、というスタンスで特に問題ないと思います。

今日はこんなところです。

今日のあとがき

どうも少しばかりご無沙汰しております。社労士の川嶋です。

今日からまた精力的にブログ更新、再開していきたいと思いますが、久しぶりすぎたので、今日の記事は結構リハビリ感のある内容になってる気がしますね。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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