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衆議院の厚生労働委員会で可決された働き方改革関連法案の附帯決議の内容

2018年5月31日

今日にも衆議院本会議で可決が予定されている働き方改革関連法案(法案自体の解説はこちらにまとめてあります)。

こちらの法案ですが、25日の厚生労働委員会で可決された際には附帯決議が実に「12」も付いています。

附帯決議とは、可決した法案に対してその委員会の意思を表明するもので、その法律の運用や将来の法改正による改善希望などが書かれています。

法律ではないので、法的拘束力はありませんが、政府はこれを尊重する必要があるとされています。

今回の働き方改革関連法案の衆議院・厚生労働委員会の附帯決議のほとんどは裁量労働制を含む労働時間に関するもので

  • 労働基準監督署による違法な長時間労働に対する指導監督を徹底
  • 特別条項で延長できる労働時間はできるだけ短くなるよう指導及び助言を適切に行うこと
  • 高プロの導入に当たって監督署は、使用者に対し制度の周知を徹底するとともに、労働者の健康の確保のため指導監督を適切に行うこと

といったように、時間外労働の上限規制に関する行政の監督方針のほか、先日、数値目標がニュースとなった「勤務間インターバル」についても、「その導入が進むよう、その環境整備に努めること」と決議されています。

法律の条文だけでは、国がどのように法律を運用していくつもりなのかわからない部分があったりするので、一度、目を通しておくのもよいでしょう。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一 働き過ぎによる過労死等を防止するため、労働基準監督署による違法な長時間労働に対する指導監督を徹底すること。また、時間外労働の原則は、月四十五時間、年三百六十時間までとされていることを踏まえ、労使で協定を締結して臨時的にこの原則を超えて労働する場合についても、できる限り時間外労働が短く、また、休日労働が抑制されるよう、指針に基づく助言及び指導を適切に行うこと。

二 時間外労働の上限規制の適用が猶予される業務について、当該業務特有の事情を踏まえたきめ細かな取組を省庁横断的に実施して労働時間の短縮を図り、上限規制の適用に向けた環境の整備を進めること。特に、自動車運転業務については、長時間労働の実態があることに留意し、改正法施行後五年後の特例適用までの間、過労死の発生を防止する観点から改善基準告示の見直しを行うなど必要な施策の検討を進めること。

三 労働基準監督署においては、重大・悪質な法令違反について厳正に対処するとともに、労働基準関係法令が十分に理解されていないことに伴う法令違反も多数存在していること等を踏まえ、事業主に対する法令の一層の周知に取り組むとともに、丁寧な助言指導等を行うことにより、事業主の理解の下、自主的な法令遵守が進むよう努めること。

四 中小企業・小規模事業者における働き方改革の確実な推進を図る観点から、その多様な労働実態や人材確保の状況、取引の実情その他の事情を早急に把握するとともに、その結果を踏まえて、長時間労働の是正や非正規雇用労働者の待遇改善に向けた賃金・設備投資・資金の手当てを支援するため、予算・税制・金融を含めた支援措置の拡充に向けた検討に努め、規模や業態に応じたきめ細かな対策を講ずること。併せて、新設される規定に基づき、下請企業等に対して著しく短い納期の設定や発注内容の頻繁な変更を行わないことを徹底すること。

五 地域の実情に即した働き方改革を進めるため、新設される規定に基づき、地方公共団体、中小企業団体をはじめとする使用者団体、労働者団体その他の関係者を構成員として設置される協議会その他のこれらの者の間の連携体制の効果的な運用を図ること。その際、いわゆる「地方版政労使会議」など、各地域で積み上げてきた行政と労使の連携の枠組を活用し、働き方改革の実が上がるよう、努めること。

六 医師の働き方改革については、応召義務等の特殊性を踏まえ、長時間労働等の勤務実態を十分考慮しつつ、地域における医療提供体制全体の在り方に対する視点も大切にしながら検討を進めること。

七 勤務間インターバルは、働く方の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な生活を送るために重要であり、好事例の普及や労務管理に係るコンサルティングの実施等により、各事業場の実情に応じた形で導入が進むよう、その環境整備に努めること。

八 裁量労働制の労働者や管理監督者を含め、全ての労働者の健康確保が適切に行われるよう、労働時間の状況の的確な把握、長時間労働者に対する医師による面接指導及びその結果を踏まえた適切な措置が円滑かつ着実に実施されるようにするとともに、小規模事業場における産業保健機能の強化を図るための検討を行い、必要な措置を講ずること。

九 高度プロフェッショナル制度の対象となる労働者の健康確保を図るため、労働基準監督署は、使用者に対して、働く時間帯の選択や時間配分に関する対象労働者の裁量を失わせるような過大な業務を課した場合や、新設される規定に基づき対象労働者が同意を撤回した場合には制度が適用されないことを徹底するとともに、法定の健康確保措置の確実な実施に向けた指導監督を適切に行うこと。また、改正法施行後、速やかに制度運用の実態把握を行い、その結果に基づき、必要な措置を講ずること。

十 裁量労働制について、労働時間の状況や労使委員会の運用状況等、現行制度の施行状況をしっかりと把握した上で、制度の趣旨に適った対象業務の範囲や働く方の裁量と健康を確保する方策等について、労働政策審議会において検討を行い、その結論に応じて所要の措置を講ずること。

十一 管理監督者など労働基準法第四十一条各号に該当する労働者の実態について調査するものとすること。

十二 今回のパートタイム労働法等の改正は、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指すものであるということを、中小企業・小規模事業者や非正規雇用労働者の理解を得るよう、丁寧に周知・説明を行うこと。

出典:第196回国会閣法第63号 附帯決議(衆議院)

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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