労務管理

「退職代行サービス」・・・だと・・・? そのとき会社はどうするか

2018年7月13日

退職代行サービスサイトのトップ画像が有名なフリー素材だったので、わたしも拝借

退職代行サービス?

なんかこういうサービスがあるらしいです。

退職代行なら、EXIT

会社を辞めたいけど言い出しにくいという人のために、主に会社との退職時の連絡等を代行するサービスのようです。

そんなに会社を辞めるの大変かなあー、なんて個人的な思いはないわけではないですが、お金を払ってでもそうしたいという需要があるのであれば商売が成り立つのが資本主義の世の中。

なので、こうしたサービスがあること自体に文句はなく、むしろ存在し成り立つことそれ自体に興味があり、今後どうなっていくのか気になるところ。

ちなみに、費用は3万円から5万円。退職金が出る場合や退職後に失業保険をもらう算段なら割とリーズナブルといえそう。

 

会社からすると痛し痒し

では、会社の視点からみてこうしたサービスの誕生をどう考えればいいのでしょうか。

労働者が会社を辞める場合というのは基本的に、労働者が会社にその意思を伝える場合か、ドタキャン&音信不通になるかの2つしかありません。

(死亡や懲戒解雇、休職期間満了なども退職事由ではあるが、いずれも退職代行サービスを利用する可能性のない退職事由なので割愛)

そう考えると、ドタキャン&音信不通よりはマシだけど、労働者から直接伝えられるよりは、うーん、表現が難しいですが「悲しい」といったところでしょうか。

退職の意思の通達は会社と労働者の最後のコミュニケーションと考えれば、それが代行されてしまうわけですからね。

(まあ、こうしたサービスを利用する人というのは、そういう会社とのコミュニケーションが嫌で代行サービスを利用するのでしょうが)。

 

退職の意思を伝えられた際、会社にできることは少ない

では、こうした代行サービスに対して、会社はどうすればいいかと言えば、代行サービスから「退職の意思」が伝えられた時点ではもうどうしようもありません。

民法627条があるため、基本的に、会社は労働者の退職を拒否することができないからです。

なので、ありきたりですが、大事なのは退職前の会社と労働者の関係、ということになりそうです。

また、気に入らない退職に対して離職票を出したくないという会社もあるかもしれませんが、離職票を出させることもこの代行サービスの仕事のようですし、そもそも離職票を出さないのは法違反です。

代行サービスが間に入ったからといって違法な行為や辞める労働者への嫌がらせはやめましょう。

 

退職の申し入れは1か月前? 2週間前?

さて、ここからは余談ですが、よく就業規則では「退職する場合は1か月前に申し出ること」などと書いてあるし、わたしも書きます。

しかし、民法627条1項では「解約の申入れの日から二週間」とあります。

民法第627条

  1. 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
  2. 期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
  3. 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三カ月前にしなければならない。

就業規則の「1か月」と民法の「2週間」、どちらが優先されるかについては、実は諸説あって茨城労働局のQ&Aでも以下の通りとなっています。

就業規則で 「退職の申し出は退職日の1ケ月前までにしなければならない」 と定めている場合ですが、先ほどの民法の規定を任意規定と解して、就業規則の定めが優先するとの見解がある一方、裁判例では、民法を強行規定と解するものもあり、これによれば通常の労働者は退職届を提出して2週間経過すると、使用者の承諾がなくとも退職の効力が発生することとなります。

出典:退職の申し出があった際には(茨城労働局)

ただ、さすがに1か月を超える期間を設定するのは駄目という考えが一般的なようです。

なので、終業規則上は1か月にしておいて、実務上は臨機応変に、というのがよくある対応なのではないでしょうか。

消化する有給が多い場合、1か月前では遅いということもありえますし。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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