労働時間

1週間単位の非定型的変形労働時間制の概要と導入方法を解説

2016年8月19日

1週間単位の非定型的変形労働時間制とはこんな制度

1週間単位の非定型的変形労働時間制とは、通常は、法律で1日8時間1週40時間と上限が決まっています。

1週間単位の非定型的変形労働時間制では、1週40時間の枠はそのまま、1日8時間の上限を10時間まで延長できるようになります。

1週40時間の枠はそのままなので、ある曜日の労働時間を10時間まで延長したとしても、他の曜日の時間を6時間や7時間に短縮しないといけません。

1日の所定労働時間が8時間の会社で、金曜日が忙しいので、1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入した場合。

月曜日:7時間
火曜日:7時間
水曜日:8時間
木曜日:8時間
金曜日:10時間

金曜日は1日の法定労働時間である8時間を超えているが、1週の所定労働時間は40時間内に収まっているので、時間外手当を支払う義務は発生しない。

 

利用できる会社は限られる

他の変形労働時間制と異なるのは、1週間の非定型的変形労働時間制を利用できる業種は非常に限られる点です。

現在の労働基準法で1週間の非定型的変形労働時間制を利用できるのは、以下の4業種に限られます。

  • 小売業
  • 料理店
  • 旅館
  • 飲食店

業種の制限に加えて、規模の制限もあり、常時使用労働者数が30人未満である必要があります。

 

 

1週間単位の非定型的変形労働時間制導入の流れ

1週間単位の非定型的変形労働時間制導入の流れは以下の通りです。

① 労使協定の締結

② 就業規則の整備

③ 協定届を作成し労働基準監督署に提出

 

労使協定を結ぶ

1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するには、労働者代表と労使協定を結ぶ必要があります。

1年単位や1カ月単位と違い、法律上、必ずこれを労使協定で決める必要がある、というものはありませんが、最低限、協定届(後述)に記載する必要のある「1週間の所定労働時間」と「変形労働時間制による期間」は定めておいたほうが良いでしょう。

「変形労働時間制による期間」とは、1週間単位の非定型的変形労働時間制を使用する期間のことです。

また、1週間単位の非定型的変形労働時間制では、使用者は、「1週間の各日の労働時間を少なくとも当該1週間の開始する前に、書面によりしなければならない」とされています。

ただし、緊急時等、「やむを得ない理由がある場合は、変更正当する日の前日までに書面で通知すればよい」とされているので、変形した場合の各日の労動時間の通知方法は定めて置いたほうが良いでしょう。

 

就業規則に定める

始業・終業の時刻休憩時間休日は就業規則に必ず記載する必要のある事項と労働基準法で定められています。

1週間単位の非定型的変形労働時間制する場合、これらの項目の中には影響を受けるものもあるはずなので、就業規則の整備が必要となります。

 

協定届を作成し労働基準監督署に提出

1年単位の変形労働時間制を導入する上で、会社が労働基準監督署に提出する必要があるものは以下のとおり。

  • 労使協定
  • 協定届

いずれも、提出用と会社控えで2部必要となります。

協定届とは、監督署提出のための書類で、労使協定やカレンダーの内容をまとめたものとなります。

1週間単位

 

1週間単位の非定型的変形労働時間制(リンク先PDF)

この他に、就業規則の変更を伴う場合は就業規則等、時間外の労働をさせる予定があるのであれば36協定を提出する必要があります。

 

1週間単位ができた背景

上記のような制限がある背景には、大規模な事業場であれば、パートなどの労働者を雇うことで業務の繁閑に対応できるだろうが、小規模だとそれは難しいのでは、ということで、1週間単位の非定型的変形労働時間制が作られました。

背景や業種からもわかるとおり、非常に特殊な変形労働時間制なうえ、小規模であっても1年単位や1カ月単位の方が使い勝手がいいこともあり、利用率はあまり高くありません。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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