※ この記事は2025年11月に、最新情報を反映しつつリライトしたものになります。
社労士になる人間が必ず通る道、それが社労士試験です。
何を隠そう、わたし自身、一度、この試験に落ちるという辛酸を嘗めました。
ただ、はっきり言いますが、この試験ほど「運も実力のうち」と考えないとやってられない試験はありません。
この記事では、社労士試験がいかに「運ゲーか」について、みっちり語っていきたいと思います。
この記事の目次
1. 社労士試験は運ゲー
で、社労士試験がいかに運ゲーかを語る上で絶対に欠かせないのが選択式です。
この選択式があるかぎり、社労士試験は運ゲーです。パチンコや麻雀と一緒。
ただ、麻雀でも実力のある人とない人の勝率が違うように、社労士試験も相応の実力があるかないかで運ゲーの勝率も変わってくるのは確か。
でも、運ゲーであることに変わりはない。
2. 各教科ごとにボーダーライン
とはいえ、どんな試験でもある程度運が絡むのはどうしようもないです。
わたしも昔、大学受験で、過去5年間一度も出題されてなかったので漢文の勉強を全くしなかったら、その年に限って出題されて結果落ちるという悲運を経験したこともあります(受験要項には漢文は対象外とは一言も入ってなかったので、100%わたしが悪いんだけど)。行きたかったな~、早稲田。
ただ、社労士試験の運の絡み方は正直、すごく理不尽だと思うんですよ。
ご存知ない方に説明しておくと、社労士試験というのまず、すべてマークシート。
この時点で、ちょっと運ゲー(ただし、受験者にいい意味で)。
出題形式は5肢択一の択一式と穴埋めの選択式の2つに分かれていていて、それが教科ごとにそれぞれ出題されるようになっています。
そして、全体の総得点とは別に、教科ごとにボーダーラインが定められていてどんなに全体の総得点が高くても、1教科、例えば、択一の厚生年金がボーダーラインに満たなかったり、選択の労災保険がボーダーラインに満たなかったりしたら、それで不合格。来年またおいで、となるわけです。
3. 選択式は運ゲーの権化
で、正直、択一でボーダーラインを切るってまずないわけです。1教科10問あって4問以上がボーダーなので。
総得点の合格ラインを考えると6割から7割は取らないといけないし、1問や2問意地の悪い、作ってるやつの顔を見た上でビンタしたくなるような問題があっても、他をきっちり抑えればなんとかなる。
一方、選択式は5問中3問がボーダーライン。
択一式が4割ボーダーなのに、選択式が6割ボーダーって、なにその一問の重みの違い、って話で、これが衆院選だったら裁判間違いなしなんですが、出題される文章が簡単なものなら別に怒らないというか、みんな解けるので、まあ、いいんですよ。それこそ、どこの参考書にも出てくるような法律の条文をマークシート式で埋められないなら受験生の方に問題がある。
ただ、現実には半年、一年、あるいはそれ以上勉強してきた受験生が「何これ、初めて見るよ」みたいな文章を元に問題が出題されることがあるわけです。
もうこうなると、トゲ付きのメリケンサックで往復ビンタです。
ちなみに選択式は教科が8つあり、往復ビンタものは毎年1つや2つは必ずある。
結果、1点2点しか取れなくて、涙を呑む、ということがあるわけです。
社労士試験初受験の時はわたしもこれで泣きました。
4. 社労士試験は正答率が80%あっても38%は落ちる運ゲー
4.1. 確率の基本的な話
この運について、深掘りしてみましょう。
例えば、サイコロを1回降ったとき、6が出る確率は6分の1です。
では、6回降ったら1回だけ6が出るのかといえばそういうわけでもなく、1回も出ないこともあれば6回全部6ということもあります。
いわゆる、確率の偏りという話です。
このガチャ確率計算機は、サイコロを6回降った時に6が1回出る確率はいくらあるのか、2回出る確率は? といった確率を算出するのに使います。
上記のような確率の出し方については、長くなるので詳しくは説明しませんが、どうしても知りたい方はこちらの記事を読むとわかりやすいです。
出現確率1%のガチャを100回引いても,4割近くの人は全部はずれる。“本当の確率”を読み解いてみよう
4.2. 選択式でボーダーを超える確率の求め方
社労士試験が運ゲーである最大の理由は選択式です。
社労士試験の選択式は、1教科につき5問あり3問以上正解しないとボーダーラインに引っかかり不合格になります。
選択式は8教科あり、1教科でも落とせば不合格です。
よって、この記事では、8教科すべてで5問中3問以上正解する確率を求めます。
先ほどのサイコロの例でいうと、サイコロを5回振って3回、6が出る確率を求めるのと同じ要領です。
4.3. 正答率=実力
ただし、サイコロで6が出る確率は6分の1で固定ですが、当然、1問あたりの正答率は受験生によって異なります。
今回は、この正答率の部分を受験生の実力と考え変動させていきます。
ちなみに、試験では、問題と受験生の相性によって、100%解ける問題や、4割くらい確率でしか解けない問題など様々ある上、社労士試験はマークシート式なので、実力以上に正解率が上がることは百も承知ですが、今回はそれらもひっくるめて「正答率」としていきます。
よって、「正答率60%」という場合は、上の諸々の話を全てひっくるめたうえで。1つの問題が解ける確率60%とします。
また、今回の記事では救済は基本考慮しません。
4.4. 正答率70%で1教科のボーダーを超える確率
まず、例として正答率が70%の受験生がいたとします。
なぜ、70%かというと、70%あれば、全体の合格点にはほぼほぼ届きます。
ただし、すでに述べたように、社労士試験では教科ごとにボーダーラインがあり、全体で7割取っても、1教科でも5問中2問以下しか正解できないと不合格となります
この正答率70%の受験生が、選択式の問題を5問中3問以上正解する確率はどれくらいになるかガチャ確率計算機で求めます。
結果がこちら。
上のガチャ確率計算機のスクショは、単語や単位がガチャ基準なっているので、それらを以下のように読み替えてください。その方が意味がわかりやすいです。
- 出現確率=正答率
- 試行回数=問題数
- 出現回数=正解数
- ○回=◯問
結果、正答率70%の人の場合、5問中3問以上正解する確率は83.692%あることがわかります。
言い換えると、5問中2問以下しか正解できない確率は、
100%-83.692%=16.308%
あることになります。結構高いですね。
これが、正答率80%の人となると、話はだいぶ変わって、5問中3問以上正解する確率は94.208%。1教科あたりのボーダーに引っかかる確率は5.792%と激減します。
4.5. 驚愕の、正答率70%で全教科のボーダーを超える確率
さてさて、社労士試験の選択式は8教科あります。当然、1教科でもボーダーに引っかかったらジ・エンド。
なので、8教科すべてボーダーラインを超える確率も求めないといけません。
さきほどの例の正答率70%の人の場合、1教科あたりのボーダーを超える確率は83.692%ですので、それらをガチャ確率計算機に入れ込みます。
で、結果がこれ。
画像内の単語は、今回は以下のように読み替えてください。
- 出現確率=1教科あたりのボーダーラインを超える確率
- 試行回数=教科数
- 出現回数=ボーダーラインを超えた教科数
- ○回=◯問
8教科すべてでボーダーを超える確率は、なんと24%しかない!
現実は残酷!
つまり、正答率70%くらいじゃ、そうそう全教科でボーダーラインは超えられないのです。
4.6. 正答率80%でも驚きのボーダー引っかかり率
一方で、正答率80%の場合だと、
なんと62%まで上がります。
70と80でこれだけ違うということは、要するに、社労士試験は、合格ラインが70%だとしても、70%ギリギリしか取れない人では、まず受からない試験ということです。
そして、何より、合格ラインよりも明らかに上の実力(正答率80%)があっても、38%は落ちるというのが、そもそも社労士試験の選択式が運ゲーである揺るがぬ証拠ではないでしょうか。
5. 毎年救済←その時点でなにかおかしい
で、これは流石に運ゲーすぎるということで、社労士試験には救済、という制度があります。
これは、ボーダーラインを下回る受験生が多く出た教科のボーダーラインを下げるというもの。
救済は択一式・選択式を問わず行われることがありますが、だいたいは選択式への適用。
というか、選択式では、救済が行われない年の方が珍しいくらい、毎年のように救済が行われています。
つまり、社労士試験は救済が前提の難易度のバランスとなっているわけ。
ビデオ判定でいちいちゲームが止まる今のプロ野球みたいなもの。
普通ならテニスのチャレンジやアメフトみたいに、徐々に制度を改善していくものですが、何年も何年も変わることなく救済は続いている。
つまり、「毎年選択式で救済が行われている」というのは、社労士試験の欠陥をずっと放置していることにほかならない。
試験結果発表後はたいてい「どうしてこの教科で救済が行われないのか?」といった愚痴や不満が不合格者から出るし、そこに目を奪われがちですが、実際の問題は毎年救済が出る、という制度上の欠陥の方なのです。
6. なぜか合格率が安定する不思議、からの…
では、毎年救済が出る、なんていう、制度上の欠陥、いわば社労士試験の恥部を毎年晒しながらも、社労士試験の運営者たちは制度を変えようとしないのでしょうか。
それはこの救済という制度で、合格者数を調整しているからしか考えられません。
実際、社労士試験の合格率はここ10年、5~7%くらいで安定しているのですが、この合格率が大きな波紋を呼んだ年がありました。2015年度の合格率2.6%です。
それ以前の合格率はおおよそ7~8%で、調整すればこのパーセンテージに収めることができたはずなのに、それをしなかった。
その理由は未だに不明ですが、当時は、こうした調整は不正だと、受験者が裁判を起こす事態にも発展しました。
つまり、試験問題も運ゲーなら、救済が行われるか行われないかも運ゲーなわけです。
7. 裁量は権力の源泉
わたしは別に運ゲーだから社労士試験なんて受けないほうがいい、と言いたいわけではありません。
運ゲーだろうがなんだろうが、受かんないことには社労士になれないわけですし。
ただ、救済とかいう、わけのわからないことをしなくてもいいような制度にはすべきだと思っています。
ちょうどオリンピックが今やってますが、例えばマラソンの選考なんかだと、協会みたいなところが「各大会の成績を考慮して選考する」みたいなことをしてますよね。
で、たまにその選考でなんでこの人ではなくこの人が選ばれたの? みたいなことが起こる。
マラソンじゃないけど、水泳では千葉すずがスポーツ仲裁裁判所に訴えたこともありました。
でも、陸上競技や水泳のように数字ではっきりと実力がわかる競技であれば、わざわざ協会が選考なんかしなくても、この大会とこの大会でタイムの良かった◯人を選考、みたいにしておけば、協会なんかなくても決められるわけです。
でも、そうしてしまうと協会の存在意義がなくなってしまう。
また選考するという、人の運命を握ることもできなくなる、すなわち、権力も失うことになるから、そういうふうには絶対にしないわけです。
わたしが救済のような裁量措置が気に喰わないのは、そうした裁量があると、権力の発生源になりうると考えているからです。
8. 2025年現在、その後の社労士試験
2015年度の合格率2.6%という衝撃の合格率と、その後の裁判(複数行われたようですが、すべて原告、つまり受験者側の請求は棄却されています)もあってか、現在では、救済の基準が公表されるようになっています。
また、本文中でも少し述べましたが、2.6%の前の合格率はおおむね7~8%、それが5~7%に落ちているということは、社労士資格の難関化を性急にやりすぎた、ということなのかもしれませんが、これも詳しい部分は不明。
何度も言いますが、いずれにせよ、社労士試験は形式が変わらない限り運が絡むことからは逃れられないので、もし受験して落ちた、という人がいても落ち込まないようにするのが一番かと思います。


