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労務問題(時事)

「他人は奴隷のように働かせるが自分は奴隷になりたくない」

2016/04/20

一連のすき家問題にひとまず終わりが見えてきました。ワンオペに代表されるすき家の労務管理は労働者の負担を無視しており確かにやり過ぎでした。しかし、労働法をきちんと順守し、労働者への保護もきちんとしているけれど、牛丼の値段が600円も700円もしたら今の日本では誰も食べてくれません。

その意味で、これまですき家は日本の消費者が満足するだけの質と値段を提供してきたわけで、それを求めてきたのは日本の消費者です。つまり、すき家の労働者を間接的にとはいえ奴隷のように働かせてきたのは、日本の大半の消費者であると言え、その中には普段からブラック企業を糾弾している人間も少なくない数含まれているはずです。

別に自分はすき家でご飯なんて食べないよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、他の外食チェーンにしたって、床に落ちた鶏肉を利用するなど、その達成の方法が異なるだけです。そして、こうした構造は外食産業だけに限らず、日本全国どこにでもフラクタルに存在していることは想像に難くありません。

日本は貧しくなった

現在の日本は昔と比べて明らかに貧しくなっています。それに加えて近年は、原発停止による原油価格の高騰やアベノミクスが仕掛けたコストプッシュインフレの影響、そして、グローバル化による多国間での給与の平準化が、それに追い打ちをかけています。

にもかかわらず、生活レベルをそれほど下げずに済んでいるのは、すき家の労働者をはじめ自分以外の人間が奴隷のように働き、生活にかかるコストを下げ止ていてくれるからです。ただ、それは表裏一体であり、多くの人は他人を奴隷のように働かせていると同時に、自分自身もまた奴隷のように働かざるを得ない状況があるわけですが、それにNOを突きつけているのが昨今のブラック企業への激しい批判だとわたしは考えています。

ただ、繰り返しになりますが日本は貧しくなりました。誰もが奴隷のように働かなければ、今の豊かさを維持できないくらいに、です。加えて、財政問題も年金問題もこのまま行けばいつ火が点いてもおかしくないので、さらに貧しくなる可能性すらある状況。

しかし、多くの人はそうしたことに目を背けて、さらに自分が周りの人間を奴隷のように働かせていることにも目を瞑って、でも、自分が奴隷になることは断固拒否している。言い換えればみんな「他人は奴隷のように働かせるが自分は奴隷になりたくない」わけです。

奴隷になりたくないからといって・・・

奴隷にはなりたくない。しかし、現行の終身雇用や新卒一括採用に代表される日本的な雇用環境の中では、自分を奴隷扱いする会社を捨てて、転職を繰り返すこともできない。そうして途方に暮れる人たちにとって、ブラック企業という曖昧な言葉は都合が良かった。労働基準法をはじめとする法違反を指摘すれば相手を簡単に黙らせることができるし、仮に違反がなくても、「若者の使い捨て」だなんだと定義の曖昧な理由で非難することもできるからです。

しかし、ブラック企業の批判者の言うとおりに、労働法の規制を強化して、企業への取り締まりを強化すれば、誰もが奴隷とならずに生きていけるのでしょうか。

法律を守るにも労働者を守るにもコストがかかります。一方、日本自体が貧しくなっていて、当然、日本の企業も貧しくなっている。これでは企業もない袖は振れません。そもそも労働者を守ることは、企業の第一義的な存在意義ではないため、いくら法律を守れ、労働者を守れといっても、利益に繋がらないのであればどこもやりたがりません。それでも法律は法律なので守らないわけにはいかない、という状況で企業がどうするかといえば、最もコストがかからない方法で法律を守るわけです。それが労働者を守ることに繋がるかは別にして、です。

事実、これまで政府が労働者の保護のためと行ってきた施策のほとんどは、空振りかさらなる悪化を促す結果に終わっています。つまり、規制によって奴隷の身分から救われるということは、残念ながら望み薄なわけです。

奴隷になりたくないのなら

わたしは別に、今の日本で生きていくには奴隷になるのはしょうがない、と言ってるわけではありません。単に、ブラック企業への法令遵守やモラルの強制でそうしたことが達成できるわけではない、と言っているだけです。それはつまり、国や会社に頼ったり、逆に非難したところで奴隷状態から開放されるわけではないということを意味しています。

じゃあ、どうすればいいのでしょうか。

国や会社に頼れないのであれば、個人で打開するしかありません。自身のスキルを磨き、リスクを取って起業するなり転職するなりして、自分が奴隷ではないと思える仕事、すなわち、(むず痒い言い方になりますが)生きがいのある仕事をするしかありません。ちなみに、誰かの言いなりにしか生きられない人間は、そもそも奴隷としか生きられない人間なので救いようがない。

生きがいのある仕事を得る上で問題なのは、起業はともかく、転職のリスクが高すぎることでしょう。終身雇用幻想が息づく現代の日本では、労働市場が硬直化しており、結果、転職のハードルを上げていて、転職ができないから、自分にあうと思える仕事に出会える機会も得られない。

そうした状況を打破するための、解雇規制の緩和であり、ホワイトカラーエグゼンプションであり、同一労働同一賃金なのですが・・・、「他人は奴隷のように働かせるが自分は奴隷になりたくない」人間たちには、それをどれだけ言ってもわからないのでしょう。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。