高齢者雇用 同一労働同一賃金

なぜ同一労働同一賃金で正社員の賃金は下がるのか

2021年3月24日

前の記事でもお知らせしましたが、3月27日に日本法令さんよりわたしの新しい本が出ます。

新刊発売前なので、本当はもっとブログを更新してバリバリ宣伝しないといけないタイミングなのですが、いかんせん色々忙しかったので・・・。

さて、今回はこちらの記事について。

「同一労働同一賃金」 正社員の待遇引き下げの懸念

 

非正規の待遇が良くなるなら正規の待遇が下がるのは必然

こちらの記事、要は同一労働同一賃金は非正規の待遇を良くすることが目的なのに、正社員の待遇が下げて対応する企業が出てくるのではと懸念するものです。

ただ、少なくとも、同一労働同一賃金によって非正規の待遇を良くするのであれば、正社員の待遇が下がるのは必然ではないでしょうか。

なぜなら、企業が、人件費に割ける予算は決まっているから。

正規と非正規は、会社の人件費の予算という同じパイを分け合っています。

そのため、非正規の分のパイの分け前が増えれば、正規のパイの分け前が減るのは当然なわけです。

 

待遇を下げられないから、賃金が上がらない

いやいや、と。正規のパイを非正規に分けるんじゃなくて、パイ自体を大きくするなり、新しくパイを追加すれば良いじゃないかと思う人がいるかもしれません。

要するに、企業は人件費の予算をもっと増やせ、ということです。

しかし、それをできるのは成長している会社、つまり、儲けている会社だけです。

しかも、成長している会社であっても、日本の労働法制では上げた賃金を簡単に下げられないので、会社としては賃上げに慎重にならざるを得ません。

会社の経営なんていうのは水物、今は良くても来年がどうなるかなんて誰にもわからないわけですからね。

加えて、先ほど、日本では賃金を簡単に下げられないといいましたが、その簡単に下げられない賃金を同一労働同一賃金のために下げようとしている会社は、果たして成長している会社でしょうか?

 

今後、定年後再雇用者の同一労働同一賃金によりさらに正規の待遇が下がる可能性

そして、さらにいうと、今後は正規のパイの取り分はさらに減る可能性があります。

定年後再雇用者に関しては現在、「定年後に賃金を大きく引き下げる」という労務管理が多くの会社で行われていますが、早晩こうした労務管理は見直さざるを得ません。なぜ見直さざるを得ないかは3月27日に出るわたしの本を読んでください(露骨に宣伝)。

そして、「定年後に賃金を大きく引き下げる」という労務管理を見直すとなると、定年後再雇用者にかかる人件費も増加するのは確実で、その原資はどうするのか、という問題が発生するからです。

こうした問題を解決するために、正規の人件費を削るということをしないといけない会社が出てくるのは間違いありません。

 

現実は同一労働同一賃金が導入されても非正規の待遇そのまま、正規の待遇もそのまま

ただ、個人的には非正規の待遇が良くして正規の待遇を下げる、という会社はそれほど多くはないと思っています。

じゃあ、非正規の待遇も良くして正規の待遇もそのままにする会社が多いのか、というと、それも違います。

一番多いと考えられるのは、非正規の待遇はそのまま、正規の待遇もそのまま、という会社です。

今回取り上げた産経新聞の記事では、会社が同一労働同一賃金の裁判で負けたことしか書かれていません。

そのため、これだけ読むと、何もかも、会社は正規と非正規の待遇を同じにしないといけないと考える人もいるかもしれません。

しかし、実際には会社が勝ってる部分や、裁判では負けたけどやり方を考えれば会社が勝てる部分があるなど様々です。

 

同一労働同一賃金の本質

良くも悪くも、同一労働同一賃金は、正規と非正規の待遇を同等にするものでも、ましてや非正規の待遇だけを引き上げるものでもありません。

同一労働同一賃金では「正規と非正規の労働条件の相違」と「正規と非正規の賃金等の待遇差」がきちんと均等になっている、もしくは均衡が取れていれば問題ないからです。

そのため、非正規の待遇を今のままキープできるような職務内容や人材活用の仕組み等を導入することができれば、非正規の賃金を引き上げる必要も、正規の待遇を引き下げる必要もありません。

「非正規の待遇を今のままキープできるような職務内容や人材活用の仕組み」というのは、具体的には、非正規の職務内容を今より軽易にしたり、異動や職務内容の変更等をなくしたり、といったものです。

そして、そうした対応する会社がおそらく多いと思われるので「非正規の待遇はそのまま、正規の待遇もそのまま」とする会社が、現実には大半を占めるのではないかと、わたしは予想しています。

なんにしても、この記事、日本郵便のことだけを見て同一労働同一賃金を語ろうとしている、なんとも視野が狭い記事なので、話半分に読んだ方が良いと思います。

 

今日のあとがき

つい昨日のことですが、歯医者に行ってきました。

ちょうど、1か月くらい前から、ご飯を食べるときに物が当たると痛い歯があるのには気付いていたのですが、なかなか歯医者に行く時間がなくずっと我慢していました。

ここ1週間くらいはその我慢も限界、特にここ数日は寝れないくらいまで痛みが増してきていたため、溜まらず行ってきたわけです。

で、行きつけの歯医者に1年ぶりぐらいに行ったんですが、そうしたらビックリ。内装が改装されていて、以前は「ザ・歯医者」って感じだったのが、昨日行ったら歯医者というよりも「洋館」に変わっており、何だか大人の雰囲気が漂っておりました。

で、で、変わってるのは内装だけかと思いきや、なんと先生まで別人。

いやいや、この歯科の名前、明らかに先生の名字が入ってるんだけど、その辺どうなってんだろうか。次行くときに聞いてみたいところです。

ずいぶん、前置きが長くなりましたが、歯の状況は、寝れないくらい痛いのも当然、神経まで虫歯が到達していたため、神経を抜くことに。

ただ、神経を抜いてる最中も、なかなか麻酔が効かず、たびたび激痛にもだえ苦しみ、終わった頃には体中、脂汗でびっしょりでした・・・。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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