就業規則

項や号、就業規則本則と諸規程など、就業規則の構成・構造等を解説

2019年12月27日

今回が2019年最後の更新となりますが、最後は就業規則の規定の中身ではなく、就業規則そのものの構成や構造の話をしたいと思います。

構成や構造と聞くと難しく聞こえますが、要は見た目の話です。

就業規則の章と節

まず、就業規則全体では、条文の内容ごとに章分けするのが普通です。本書の規則例の場合、1章が「総則」、2章が「人事」といった形で章分けしています。

そして、同じ章の中でも、分ける必要性がある場合、それをさらに「節」で分けます。

例えば「勤務」という章を「1節 労働時間」「2節 時間外、休日及び深夜労働」「3節 年次有給休暇」「4節 特別休暇等」といったように分けるわけです。

この「章」や「節」という分け方は、あくまで見やすさやわかりやすさのために行うものであり、厳密なルールはありません。

また、章や節を設けなくても問題ありません。

 

就業規則の項と号

項と号

次に個々の条文についてです。こちらは章や節と違い、条文の内容に影響が出る部分があるので注意が必要です。

就業規則の条文は2つ以上に内容を区分けする場合、区分けしたものを「項」と呼びます。

また、条や項の中で、何か列記する場合、それらを「号」と言います。

以下は厚生労働省のモデル就業規則からの抜粋ですが、青字が「項」で赤字が「号」になります。

(休職)
第9条 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
 ① 業務外の傷病による欠勤が か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき ○年以内
 ② 前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。

 

項と号を間違えると就業規則の内容に大きな影響が出る

冒頭で述べた、項と号を間違えると商業規則に大きな影響が出るというのは、ある条文が別の条文を参照する場合です。

例えばある条文で「第○条第2項」を参照するつもりだったのに、「第○条第2号」と書いてしまったりすると、意味が通らなくなってしまうわけです。

ちなみに、法律の条文では項は算用数字、号は漢数字と決まっていますが、就業規則についてはそこまで厳密にする必要はありません。

 

「1項」や条文のタイトルの位置

また、法律の条文では、条文番号の隣に1項の内容を書くこともあって、1項については「1」を書かないのが普通ですが、就業規則の場合は書いても構いません。

ちなみに、弊所の就業規則では見やすさ・読みやすさ、さらにWordで作成する際の作成しやすさを重視して、以下のように 1項は「1」とを書くほか、条文のタイトルの位置なども変えています。

法律の条文を模した書き方

(労働時間の定義)
第  条 始業時刻とは、会社の指揮命令に基づき、所定の場所で実際に作業を開始する時刻をいい終業時刻とは、会社の指揮命令に基づき、実際に作業を終了した時刻をいう。
2 タイムカード、出勤簿等に上記の時間を越える時間の記載があっても、会社の指揮命令に基づかないものは労働時間として認めない。

 

弊所での書き方

第  条(労働時間の定義)
1 始業時刻とは、会社の指揮命令に基づき、所定の場所で実際に作業を開始する時刻をいい終業時刻とは、会社の指揮命令に基づき、実際に作業を終了した時刻をいう。
2 タイムカード、出勤簿等に上記の時間を越える時間の記載があっても、会社の指揮命令に基づかないものは労働時間として認めない。

 

「第」っている?

条文の参照のことを書いたのでついでに、参照するときの条文の書き方で「第○条」や「第○項」といったように「第」が付いてる場合と付いてない場合があります。

これを付けるかどうかなのですが、これは正直どちらでもいいです。

例えば、「第10条第3項」を参照したいときに、「10条3項」と書いても、「第10条3項」と書いても問題はないわけです。

ただ、付けるか付けないかについては統一した方が見た目はいいかと思います。

 

就業規則と諸規程を分ける理由

本則と賃金規定等を分けるのも見やすさのため

就業規則では、就業規則の本則の他に賃金規程や退職金規程、育児介護休業規程など様々な諸規程を作成するのが普通です。

そして、こうした諸規程は、ほとんどの場合、就業規則と分けて(厳密には就業規則の条文の委任を受けて)作成します。

ただし、就業規則と諸規程を分けるのも、これまた見た目の問題です。

就業規則とわざわざ分けて作成する諸規程の多くは、条文数がかなり多いので、規則の中に入れて込んでしまうと就業規則自体が読みづらくなってしまいます。

であれば、目的別に就業規則を分けた方が読みやすいだろう、ということで就業規則本則と諸規程を分けるわけです。

よって、会社によっては就業規則の本則の中に賃金規程や退職金規程を入れ込んでしまっても特に問題はありません。

実際、厚生労働省のモデル就業規則では、賃金と退職金に関する規定は、就業規則本則の中に入っています。

 

正社員向けの就業規則と非正社員向けの就業規則

一方で、パートタイム労働者や嘱託社員向けに就業規則については注意が必要です。

というのも、正社員向けの就業規則とは別に、パートタイム労働者や嘱託社員向けの就業規則を作成する最大の目的は、正規と非正規で労働条件が異なることを明確にするためだからです。

もっとはっきり言ってしまえば、賞与のあるなし、退職金のあるなし、といったことを明確にし、正規向けの就業規則を非正規に適用させたないために作成するわけです。

そのため、いくら正社員向けの就業規則とパートタイム労働者や嘱託社員などの非正規向けの就業規則の内容が似ていたとしても、一つにまとめてしまうのは、リスク管理の面でいいとは言えないわけです。

もっと言うと、同じ非正規であっても雇用形態が異なるのであれば分けた方がいいでしょう。

 

その他

規定と規程

その他、就業規則に関することでいうと、就業規則では「規定」と「規程」という言葉が良く使われます。

漢字が異なるのでもちろん意味も異なり、「規定」は1つ1つの条文のことをいい、「規程」はそれらをまとめたものとなります。

なので、賃金全般のことを定めた規則は「賃金規定」ではなく「賃金規程」、「賃金規程」の中の1つ1つの条文は「規定」となります。

また、規定は「規定する」と動詞で使うこともありますが、意味は「定める」と同じです。「規程する」は間違いとなります。

 

まとめ

いろいろ書きましたが、就業規則の大前提は内容がきちんとしていることです。

そのために、今回紹介した中で一番重要なのが項と号なので、まずはここを間違えないようきちんと押さえる必要があります。

あと、規定と規程は日本語力の問題になるので間違えると恥ずかしいので気をつけますよう。

それ以外は、見た目の問題なので気にしなくてもいいといえばいいのですが、後で読み返したり変更するときに見た目が綺麗だと読みやすいので余裕があれば気をつけたいところです。

 

今日のあとがき

社会保険労務士川嶋事務所は以下の期間、冬期休暇となります。

  • 2019年12月28日 ~ 2020年1月5日

今年は本を2冊も出すという幸運に恵まれ、感謝してもしきれない1年となりました。

一方で、このブログについては四コマのような新しい試みはできたものの、更新ペースやPV数に不満が残る結果となりました。

今でこそ、様々なメディアで記事を執筆させていただけるようになりましたが、その原点はやはりこのブログだと思っているので、来年以降もこのブログで読者の方に有益な情報を大殿来たらと思っています。

それでは皆様良いお年を。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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