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労務管理 就業規則

就業規則のランニングコストの正体

2016/04/20

前回の続きです。

就業規則のランニングコストを計算するのはなぜ難しいのでしょうか。それは就業規則にかかるランニングコストというのは就業規則を会社と労働者がともに守っていくためのコストであり、それは基本的にお金ではなく手間だからです。

就業規則を厳密に守ろうと思えば思うほど当然、手続などの手間は増えます。急遽遅刻するときや早退するとき、有給を取得するときの他、あれを守れこれを守れといった服務規程を労働者に厳密に守らせたり、就業規則通りの手続をしようと思えば、当然、経営者や所属長、人事担当者の負担は増えるわけです。

手間の分だけいつもはしなくても良い作業をするわけだから労働時間は増えるし、手間を掛けるのが面倒だという気持ちは心理的な負担となります。つまり、「手間」は時間コストと心理的コストの2つのコストを生むわけです。

就業規則の時間コスト

当然、就業規則の時間コストの増加は労働者1人1人の労働時間の増加につながりますので、企業環境の悪化に繋がる可能性があります。

もちろん、コスト増加の要因となった規則によって改善された部分との兼ね合いもあるので確実に悪化するとはいえませんが、両者を全く天秤にかけないのはナンセンスでしょう。

また、時間コストの厄介なところは、時間をコストだと感じない人が世の中には数多くいる点です。なので、手間が増えて、その分労働時間が増えても気にしない人は気にしない。残業代が増え嬉しいくらいに思われると、それはそれで経営者としては困ってしまいます。

就業規則の心理的コスト

また、心理的コストについては時間コスト以上に、就業規則を直接破壊する可能性があるので注意が必要です。なぜなら、守るのが面倒、という気持ちで効率が下がるだけならまだしも、その面倒さが理由で誰も守らなくなったら、その就業規則はもはやそれは会社を守ってくれないたただの紙切れに過ぎないからです。

しかし、この心理的コスト、というのは人によってかなり感じ方が異なります。

何か会社で問題があった時に就業規則や労働契約を確認する経営者や人事労務担当者もいれば、そうはせずにその場その場の対応をしてしまう方もいます。前者は就業規則を読んだり守ったりすることをそれほどコストに思っておらず、後者はそれを面倒くさいと思っているわけです。

また、面倒に思う部分も人によって違います。とにかく服務規程を守らせたがるが、賃金については就業規則の賃金規定と関係なく自分の払いたいように払う経営者(よくあるパターンです)もいれば、その逆もいたり、といった感じでね。

その辺を見誤ったり、雛形的な就業規則に終始してしまうと、紙切れになるスピードは当然早くなります。

最初から完璧な就業規則を作る必要はない

で、結論は、結局、会社が守れる就業規則と会社を労務トラブルのリスクから守れる就業規則はイコールではないということです。

また、行動経済学の観点から言えば、会社が守れない部分を詳細に定めても、それは就業規則を紙切れにするスピードを早めるだけです。となれば、会社が守れる部分は詳細に、そうでない部分は(法に触れない程度に)アバウトにすべきです。それでも、就業規則の効力が全く効かない状況よりはリスクは低いのではないでしょうか。

また、守れないと感じたら、これまた法に触れない程度にさっさと変えてしまうのも手ですし、わからない場合はアバウトな定めのスモールスタートで始めて、徐々に厳しくしていくのもいい。初めから完璧な就業規則を作る必要もないですし、完璧に作ったって1年も経てば法改正でまた直す必要がでてきます。

最後に、今回の記事では会社が就業規則のランニングコストをきちんと払うことを前提に書きましたが、最初から払うつもりのない、つまり、守る気のない経営者も中にはいます。監督署への提出をして法的なアリバイを作ることが第一というわけですが、そういう会社にとっては今回の話は全く意味のない話なので、就業規則を作成する際は、徹底的に初期費用を抑えて、問題が起こらないことをお祈りしてください

また、最後の最後の余談ですが、人事労務に力を入れるのなら担当者に丸投げは絶対ダメです。人事労務担当者はあくまで労働者であり、やれることも制限されるし責任もないしスピーディに制度を変更させることも困難。世の中には、世間の慣習にとらわれないユニークな人事労務管理している会社って少なくないですが、そういう会社ってたいてい経営者自ら人事労務管理に心を砕いている、労務管理に経営者自らコストをかけているんですよ。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。