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働き方改革 同一労働同一賃金 法改正

同一労働同一賃金のためのパートタイム労働法改正の概要(施行は原則平成32年(2020年)予定)

2018/05/16

働き方改革というと時間外労働の上限規制と同一労働同一賃金が2枚看板となっていますが、前者に関する法律の改正の概要は先週紹介したので、今週は後者の同一労働同一賃金に関してやっていきたいと思います。

同一労働同一賃金に向けて改正される法律は主に以下の3つとなります。

  • パートタイム労働法
  • 労働者派遣法
  • 労働契約法

このうち最後の労働契約法は条文(20条)が一つ削除されるだけなので、実質的にはパートタイム労働法と労働者派遣法の2つと言えます。

今回はパートタイム労働法の改正事項について解説します。

 

1.名称の変更

パートタイム労働法の正式名称が変更されます。

改正前のパートタイム労働法の正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」でしたが、改正後は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」となります。

「有期雇用労働者」という言葉が追加されたとおり、改正後のパートタイム労働法では短時間労働者だけでなく、有期雇用労働者もパートタイム労働法の保護の対象となります。

 

2.定義の変更

法改正により定義の変更された用語や、新しく追加された用語があります。

①短時間労働者

改正前の短時間労働者の定義は「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう」とされていました。

改正後は「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう」と変更されました。

 

②有期雇用労働者

有期雇用労働者がパートタイム労働法の保護の対象となったことで、有期雇用労働者の定義が以下の通り、追加されています。

  • 「有期雇用労働者」:事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者

 

③短時間・有期雇用労働者

上記の短時間労働者及び有期雇用労働者のことをまとめて、「短時間・有期雇用労働者」とパートタイム労働法上は呼称します。

法改正により、法改正前は「短時間労働者」とされていた部分のほぼ全てが「短時間・有期雇用労働者」に変更されています。

 

3.均衡待遇を定めた8条の規定の変更

パートタイム労働法8条は正規と非正規の均衡待遇を定めた条文と解されています。

均衡待遇については変わらないものの、すでに公表されている同一労働同一賃金ガイドライン案と合わせることで、均衡待遇だけでなく「均等待遇」も含むとされるなど、その規制は法改正前と比べてかなり強化されているため、以下に、変更前と変更後の条文を引用しておきます。

改正後

(不合理な待遇の禁止) 

第八条 事業主、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度( 以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

改正前

(短時間労働者の待遇の原則)

第八条 事業主、その雇用する短時間労働者の待遇を、当該事業所に雇用される通常の労働者の待遇と相違するものとする場合においては、当該待遇の相違は、当該短時間労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

改正前の8条はどちらかというとパートタイム労働法9条から13条の補足的な立ち位置でした。

一方、改正後は「基本給、賞与その他の待遇」と同一労働同一賃金を意識を文言が追加されたほか、見出しの変更も行われ、本条だけで、会社の正規と非正規の待遇の是正を進め同一労働同一賃金を進める意図が感じられます。

特に、改正前は単に「(短時間労働者の)待遇」とされていた部分も、「(短時間・有期雇用労働者の)基本給、賞与、その他の待遇それぞれについて」と同一労働同一賃金を意識したものになっているほか、「その他の」という、いかようにも解釈できる言葉が追加されています。

後述しますが、今回の改正でこの8条も行政ADR(裁判外紛争解決手続)の対象となっているため、この「その他」という文言には注意が必要となるでしょう。

 

4.均等待遇を定めた9条の規定の変更

9条は「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」と通常の労働者のあいだで差別的な取り扱いを禁止する、均等待遇の規定となります。

均衡待遇に比べると変更点は多くありません。

まず、有期雇用労働者がパートタイム労働法の対象となったことで、「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」は「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」が均等待遇の対象となっています。

また、均等待遇を行う上で、差別的な取り扱いの禁止の対象となっていた「賃金の決定」という文言は「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれ」と、こちらも8条同様に同一労働同一賃金を意識したものに変更されています。

 

5.福利厚生施設の利用

これまで短時間労働者の福利厚生施設の利用に関しては「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」を除くと「利用の機会を与えるよう配慮しなければならない」と配慮義務に止まっていました。

一方、今回の改正では「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」以外の短時間・有期雇用労働者であっても「利用の機会を与えなければならない」と義務化されました。

 

6.事業主が講ずる措置の内容等の説明

パートタイム労働法では、短時間労働者(改正後は短時間・有期雇用労働者)を雇い入れた際は以下の項目について説明する義務がありました。

  • 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
  • 賃金
  • 福利厚生施設
  • 教育訓練
  • 通常の労働者への転換措置

 

また、求めがあった際は、上記に加え、以下の項目について、その措置を講ずるべきと決定するに当たって考慮した事項についても説明する義務があります。

  • 特定事項(昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口)
  • 就業規則の作成で短時間労働者の意見を聞く努力義務に関する措置

 

今回の改正では、雇い入れ時および求めがあった際は、上記に加え8条の「不合理な待遇の禁止」に関する措置が追加されます。

また、事業主には説明の求めをした短時間・有期雇用労働者に対して解雇等の不利益取り扱いをすることが禁止されます。

 

7.行政型ADRの項目の追加

パートタイム労働法では事業主に、パートタイム労働法で定める以下の項目について短時間労働者(改正後は短時間・有期雇用労働者)から苦情があった際、自主的な解決を図ることを努力義務として課しています。

  • 労働条件に関する文書の交付等
  • 通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止
  • 教育訓練
  • 福利厚生施設
  • 通常の労働者への転換
  • 事業主が講ずる措置の内容等の説明

 

一方で、上記の項目について労使間で紛争が起こった際は行政型ADR(裁判外紛争解決手続)を利用できるとしています。

改正後は、苦情の自主的解決および行政型ADRの対象項目についても、8条の「不合理な待遇の禁止」が追加されます。

 

以上です。

いずれの改正事項も施行日は平成32年4月1日予定ですが、中小企業に関しては、ほぼ全ての項目で施行が平成33年3月31日まで猶予されます。

は同一労働同一賃金に関連する労働者派遣法の改正内容については次回以降に解説します。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。