労働関連法令改正

「労働時間等の設定改善に関する特別措置法」の改正内容について(施行は平成31年(2019年)予定)

2018年4月12日

今回も働き方改革法案に関する改正法の解説です。

今回は「労働時間等の設定改善に関する特別措置法」の改正内容について。

 

1.定義の変更

「労働時間等の設定改善に関する特別措置法」における「労働時間の設定」とはこれまでは「労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他労働時間等に関する事項」でした。

改正により、これらに加えて「深夜業の回数」「終業から始業までの時間」も追加されます。

 

2.事業主の責務にインターバルが追加

法改正により事業主の責務に「健康及び福祉を確保するために必要な終業から始業までの時間の設定」というものが追加されます。

これはいわゆる「勤務間インターバル制度」のことを指しているのですが、必要な措置を講ずることについては努力義務に止まっています。

 

3.衛生委員会または安全衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなす措置の廃止

法改正前の規定には安全衛生法上の衛生委員会または安全衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなす規定がありましたが、法改正によりこれが廃止されます。

労働時間等設定改善委員会の決議には、以下の労使協定とみなす効果があります。

  • 1カ月単位の変形労働時間制
  • フレックスタイム制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制
  • 一斉休憩の原則の例外
  • 時間外及び休日の労働
  • 事業場外労働に関するみなし労働時間制
  • 専門業務型裁量労働制
  • 年次有給休暇の計画的付与

さらに上記のうち、本来であれば監督署に提出する必要のある以下のものについては、監督署への届出義務もなくなります。

  • 1カ月単位の変形労働時間制
  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の非定型的変形労働時間制
  • 事業場外労働に関するみなし労働時間制
  • 専門業務型裁量労働制

「時間外及び休日の労働」の労使協定、すなわち36協定のみ、決議の場合でも監督署への提出義務があるので注意が必要です。

衛生委員会または安全衛生委員会を労働時間等設定改善委員会とみなした上で、上記の労使協定を決議に代えていた場合、新たに労使協定を結び監督署にて提出するなど、対応が必要となるため注意が必要です。

 

4.労働時間等設定改善「企業」委員会の新設

労働時間等設定改善委員会のうち、全部の事業場を通じて1つの委員会としている場合であって、一定の要件に当てはまる場合、その委員会の決議は以下の労使協定に代えられることになりました。

  • 代替休暇(労働基準法37条3項)
  • 年次有給休暇の時間単位年休(労働基準法39条4項)
  • 年次有給休暇の計画的付与(労働基準法39条6項)

この労働時間等設定改善委員会を「労働時間等設定改善企業委員会」といいます。

「労働時間等設定改善企業委員会」となる要件は以下の通りとなります。

 

  1. 全部の事業場を通じて一つの委員会の委員の半数については、当該全部の事業場を通じて、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名されていること。
  2. 全部の事業場を通じて一つの委員会の議事について、厚生労働省令で定めるところにより、議事録が作成され、かつ、保存されていること。
  3. 1.及び2.に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める要件

 

以上です。

3日にかけて働き方改革法案の解説をしてきましたが、同一労働同一賃金が絡むパートタイム労働法および派遣法については、来週、同様の形で解説していきたいと思います。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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