労働関連法令改正

平成29年通常国会で改正された職業安定法により、平成30年1月以降の求人で気をつけるべき点とは

2017年2月8日

 ※ 5月15日追記:無事法改正されたので、タイトルと内容の一部を修正しました。

2017年の通常国会では今国会で厚生労働省から雇用保険法、徴収法、育児介護休業法、職業安定法の4つの法律の改正案が提出されています。提出され無事通過しました。

そのうち雇用保険法、徴収法、育児介護休業法に関しては、去年の段階でこのブログで記事にしたものとそれほど大きく変わることはなさそうです。

内容に大きな変化はないとは言え、改正案には施行日なんかも記載されているので、機会を見つけて追記もしくは新記事にまとめたいと思っていますので少々お待ちを。

今回は上記の記事でまったく触れていなかった職業安定法の改正についてです。

職業安定法は「職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化」を目的に改正が行われますが、このブログでは会社が求人を行う際に重要となる点を中心に改正内容を解説していきます。

ちなみに、下記の法改正の施行日は一部を除き平成30年1月1日施行となっています。

また、去年、雇用保険法も無理矢理通したので、9割方通るとは思いますが、この記事を書いてる時点ではまだ通っていないことだけご了承を。

 

① ハローワークや職業紹介事業者による求人の拒否

以下の場合、ハローワークや職業紹介事業者は求人を受理しないことが可能になります。

  1. 労働法違反を繰り返し処分等を受けた事業所からの申し込み
  2. 暴力団員が役員だったり、暴力団員が事業を支配している事業所からの申し込み

これに合わせて、ハローワーク等は受理しない案件かどうかの確認のため、求人者に対して報告を求めることができますが、正当な理由なくこれに応じない場合も、ハローワーク等は求人を受理しないことができます。

こちらの施行日は改正法公布から3年以内となっており、すぐに施行されるわけではありませんが、特に1に関しては普段から法令遵守していないと、急な調査もあり得るので注意が必要です。

 

② 虚偽の求人への罰金

法改正施行後は虚偽の条件を提示してハローワークや職業紹介事業者に求人の申し込みを行った場合、六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金となります。

虚偽の条件で求職者を採用した場合ではなく、ハローワーク等に求人の申し込みを行った時点で罰則の対象となる点に注意が必要です。

 

③ 求人をする会社等へ指導監督の範囲を拡大

これまで、職業安定法では、同法に基づく厚生労働大臣の指導や助言、勧告や改善命令の対象となるのは「職業紹介事業者、労働者の募集を行う者、募集受託者、労働者供給事業者」とされていました。

職業安定法に基づいて指導等がされる場合というのは、「差別的取扱の禁止」や「労働条件の明示」「的確な表現による募集」などを言います。

今回は、これらに加えて「求人者、募集情報等提供事業を行う者、労働者供給を受けようとする者」が追加されました。

大きいのは「求人者」が追加されたことで、これにより、ハローワーク等に求人を出した事業所も、職業安定法に基づく厚生労働大臣の指導監督の範囲に加えられました。

ちなみに、法改正以前である現行の法律でも指導監督の範囲である「労働者の募集を行う者」と今回加えられた「求人者」の違いがちょっと難しいですが、前者はハローワーク等に頼らず募集(直接募集、文書募集または委託募集)をする場合で、今だと自社のサイトで募集したりすることを言います。

後者の求人者は「労働者を雇用しようとする者」と定義されていますが、ようはハローワーク等を通じて求人する場合を言います。

 

④ 採用の際に労働条件変更する場合、それを明示することの義務づけ

事業所等はハローワーク等を通じて応募してきた労働者と労働契約を締結する場合、そのものが従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示することが義務づけられています。

今回の改正ではこれに加えて、最初に明示した条件に変更が加えられた場合は、契約する相手に対してその労働条件を明示する義務が新たに加えられました。

要するに、面接のときなど事前に労働条件を明示して、後日、採用ということで労働契約を結ぶ際に、以前明示したものと変更がある場合は、きちんとそのことを相手に伝える必要がある、というわけです。

 

以上です。

今回の職業安定法では、これ以外に、職業紹介事業者に対する改正も多く、欠格事由の追加や、募集内容の的確な表示といった責務の追加、ハローワークとの連携などが含まれているので、職業紹介事業を行う会社も注意が必要です。

今日のあとがき

法改正部分を見てみると、どうして今まで規制されていなかったのか不思議な部分が多いですね。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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