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働き方改革 労働法 法改正

働き方改革により原則平成31年(2019年)施行予定の改正労働基準法の概要

2018/04/20

提出される提出されるといわれて早3年。

本来は2015年の臨時国会で改正予定だった改正労働基準法を含む、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が4月6日にようやく国会に提出されました。

提出されただけなので、通るかどうかはまだわかりませんが、通ると信じて今回はこの労働基準法の改正部分について解説。

過去に書いた労基法改正の記事や上限規制の記事と被る部分も多いのですが、おさらいとまとめをかねて今回は改正事項を網羅的に記載していこうかなと思います。

本法案による改正事項は大きく以下の通りです。

  1. 時間外労働の上限規制
  2. フレックスタイム制の改正
  3. 年次有給休暇の改正
  4. 特定高度専門業務・成果型労働制の新設
  5. 中小事業主に対する時間外割増賃金率の適用

 

1.時間外労働の上限規制

今回の労働基準法改正の目玉と言えるのがこの時間外労働の上限規制です。

この改正により、時間外労働について、以下の4つの罰則付き上限が設けられることになります。

  1. 限度時間(原則1か月45時間、1年間360時間)
  2. 年間720時間以内
  3. 単月100時間未満(法定休日労働含む)
  4. 2か月ないし6か月の平均80時間以内(法定休日労働含む)

(1か月の限度時間を超えて働かせられるのは1年のうち6か月以内)

 

大前提は限度時間以内

時間外労働に関しては1.の限度時間以内とすることが大前提です。

また、時間外労働を行わせる際は、これまで同様に労使間で36協定を結ぶ必要があることも変わりありません。

 

特別条項により制限付きで限度時間を超えることが可能

ただ、特別条項付きの36協定を結ぶ場合で「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」があった場合、会社は労働者に限度時間を超えて時間外労働をさせることができます。

実は、これまでは、特別条項による延長時間については上限等が法律で明確化されていませんでした。

しかし、今回の法改正で特別条項を利用する際の上限が設定されました。それが上の囲いの2.~4.となります。

本当はこの制度だけでも一記事書けるくらい様々な変更点等があるのですが、本記事の目的は法改正を網羅的にまとめることなので、この辺で。もう少し詳しく知りたい方は以下の記事をどうぞ。

労働基準法改正案から「時間外労働の上限規制」やその「労使協定」を解説

 

2.フレックスタイム制の改正

フレックスタイム制とは労働者に始業・終業時刻の決定を委ねる制度です。

今回の法改正で大きく変わったのは「1か月を超える清算期間」を設定できるようになったことです。

清算期間とはフレックスタイム制を適用する期間のことで、法改正前となる現在の法律では1か月以内でしかこの清算期間を定めることができません。

そのため、一月の中での業務の繁閑に合わせた働き方はできても、月をまたぐ繁閑については対応することができませんでした。

しかし、今回の改正で「3か月以内」であれば1か月を超える清算期間を設定することができ、上記のような問題が緩和されます。

ただし、1か月を超える清算期間を定める場合、気を付ける点が3つあります。

 

1.1か月ごとに区分した各期間の労働時間:平均して週50時間以内

1か月を超える清算期間を定める場合、清算期間の開始日以後1か月ごとの各期間(最後に1か月未満の期間が生じたときは当該期間)について、各期間ごとに、当該各期間の労働時間が週平均50時間以内に収める必要があります。

これを超える場合は時間外労働となり時間外手当等の義務が発生します。

清算期間全体では、平均して週40時間以内が時間外労働となるかどうかが境になるので、1か月を超える清算期間を定める場合は、2つの時間の枠で労働時間を見る必要が出てきます。

 

2.労使協定の提出義務

1か月を超える清算期間を定める場合、フレックスタイム制に関する監督署への労使協定の提出が義務となります。

ただし、清算期間が1か月以内の場合はこれまで通り、労使協定の提出までは必要ありません。

 

3.清算期間途中の入社・退社等

1か月を超える清算期間を定めた場合、清算期間よりも短い期間しか労働しなかった労働者ーつまり、途中の入社・退社等した労働者ーに関しては、時間外労働の計算について計算方法が異なります。

こうした場合、その労働者が労働した期間の労働時間を平均して週40時間以内かどうかで、時間外労働があったかどうかを判断します。

清算期間中の40日間だけ、フレックスタイム制で働いていたとしたら、その40日の総労働時間を平均して週40時間以内かどうか確認するわけです。

 

清算期間以外のその他のフレックスタイム制に関する改正では、完全週休二日制で1日の所定労働時間が8時間の事業場でフレックスタイム制を行う場合に、曜日の関係で所定労働時間通りに働いているにもかかわらず法定労働時間の総枠を超えてしまうことがありましたが、こちらについては労使協定に一定の定めをすることでこの問題を解決できる条項が追加されています。

フレックスタイム制について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

平成31年4月1日より改正予定の「フレックスタイム制」の変更点+制度自体も解説

 

3.年次有給休暇の改正

年次有給休暇の改正では、年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、1年間で最低「5日」は会社が労働者に年次有給休暇を取得させる、という制度が追加されました。

つまり、「5日」については会社が時季指定権を持つわけです。

ただし、労働者がすでに自分の意思で年次有給休暇を5日以上取得している場合や、計画的付与で5日以上付与される場合はこの限りではなく、会社は時季指定できません。

言い換えれば、どのような形であれ、労働者が年間で「5日」以上、年次有給休暇を取得できればいいわけです。

逆に言うと、1年間で3日しか労働者が自分の意思で年次有給休暇を取得していない場合や、計画的付与では3日しか有休を取得させない場合は、残りの2日について会社は労働者に年休の時季指定を行う必要があります。

使用者による年次有給休暇の時季指定の概要

  • 対象労働者:年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者
  • 使用者が時季指定する日数:5日
  • 取得期間:年次有給休暇の基準日(付与日)より1年以内

ただし

  • 労働者がすでに5日以上時季指定している場合は不要。5日より少ない場合は、合計で5日に達するまで、使用者が時季指定する必要がある
  • 労使協定により計画的付与制度で5日以上時季指定されている場合は不要。ただし、計画的付与の日数が5日より少ない場合は、合計で5日に達するまで、別途、使用者が時季指定する必要がある
  • 使用者は、指定する時季について労働者の意思を尊重する努力義務あり

 

4.特定高度専門業務・成果型労働制の新設

特定高度専門業務・成果型労働制とは、ホワイトカラー・エグゼンプションや高度プロフェッショナル制度、あるいは悪意たっぷりに残業代ゼロと呼ばれていた制度の正式名称です。

概要については過去記事にまとめてあるので、そちらをご覧ください。

法改正案から、高プロこと「特定高度専門業務・成果型労働制」を解説

また、以前の法改正案から追加で、労使委員会の委員に対して行政が必要な助言及び指導できる旨が追加されています。

 

5.中小事業主に対する時間外割増賃金率の適用猶予の廃止

これまで中小企業に対して適用が猶予されてきた「60時間を超える時間外労働に対し、割増率5割以上」という制度ですが、今回の法改正でこの適用猶予は廃止されます。

合わせて、中小企業でも代替休暇制度を導入できるようになりますが、正直導入を検討する価値がほとんどない制度なので気にする必要はありません。

 

最後に各改正の施行日ですが、5.の割増賃金率のみ平成35年4月1日、それ以外は平成31年4月1日より施行予定です。

ただし、時間外労働の上限規制に関しては、中小企業(※)のみ平成32年4月1日から施行予定となります。

※中小企業の範囲

業種 資本金の額又は出資の総額 常時使用する労働者の数
小売業 5000万円以下  

又は

50人以下
サービス業 100人以下
卸売業 1億円以下
その他の事業 3億円以下 300人以下

 

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。