半日単位の年次有給休暇は合法?年5日取得義務との関係と実務上の注意点

多くの企業で採用されている半日単位の年次有給休暇、こちら、実は法律上の定めのない制度となります。

ただ、法律で定めがないからといって、会社の好きに扱っていいというわけではなく、実務上、注意すべき点も少なくありません。

この記事ではそんな半日単位年休について解説を行います。

この記事でわかること
  • 半日単位の年次有給休暇が、法律上どのように位置づけられているか
  • 半日単位年休は会社の義務なのか、それとも任意制度なのか
  • 半日単位で取得した年休を「年5日の取得義務」に含められるか
  • 会社が半日単位で年休の時季指定を行うことができるか
目次

年次有給休暇の半日単位年休とは

年次有給休暇の半日単位年休とは、年次有給休暇を1日ではなく、半日の単位で取得するものとなります。

法令から見た「半日単位年休」のポイント

年次有給休暇の取得の原則は「1日単位」

年次有給休暇の取得単位の原則は「1日」です。

ただ、例外的に、労使協定を締結する場合は時間単位(1時間単位)での年次有給休暇の取得も可能となっています。

では、半日単位取得についてはどうかというと、実は半日単位年休に関しては、法律上、特に定めはありません。

通達における半日単位取得

一方で、行政の通達では、半日単位年休について以下のように触れられています。

法第39条に規定する年次有給休暇は、一労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない。(昭和63年3月14日基発150号)

「会社には半日単位年休を与える義務はない」、とありますが、日単位で取得させてはいけない、とまでは言ってません。

よって、労働者から請求がある場合で、会社が任意にこれを与える分には問題ないとされています。

年5日取得と半日単位年休

年5日の取得の中に半日単位取得分を含めることは可能

年次有給休暇は、年5日取得させる義務が会社にあります。

そして、半日単位年休を取得した分については、この年5日の取得に含めて良いとされています。

要するに、半日単位年休を2回取った場合の1日分を、年5日の取得に含めて良いというわけです。

これは年5日の取得に含められない「時間単位年休」と大きく違う点です。

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半日単位での指定は可能か

また、年5日の取得にあたっては、労働者が年5日分の取得を行わない場合、会社が年次有給休暇の取得時季を指定していいとされています。

では、会社は半日単位の年休の指定をできるのでしょうか?。

これについて、厚生労働省は労働者の希望ないし同意が必要、としています。(ただし、厚生労働省の見解に法的な根拠がないことを理由に可能と考える専門家もいるようです。)

なお、ダブルトラックが発生すると、取得義務の日数に1日未満の端数が生まれるため、この部分に限っては、労働者の同意等がなくても、半日単位の指定は可能と考えられます。

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就業規則への記載方法

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この記事を書いた人

社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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