フレックスタイム制の労働時間と割増賃金|法定労働時間の総枠の考え方

フレックスタイム制は、始業・終業時刻を労働者に委ねる制度ですが、だからといって、会社が労働時間を管理しなくてよくなるわけではありません。

フレックスタイム制であっても、会社には労働時間を把握する義務があり、清算期間における労働時間の管理や、時間外・割増賃金の判断を誤ると、思わぬ法令違反につながることがあります。

この記事では、フレックスタイム制における労働時間の基本的な考え方や、割増賃金が発生する基準や計算などについて整理していきます。

この記事でわかること
  • フレックスタイム制における「法定労働時間の総枠」の考え方
  • 清算期間における所定労働時間と総労働時間の関係
  • フレックスタイム制で時間外割増賃金が発生するタイミング
  • 1か月を超える清算期間を定めた場合の注意点
  • 清算期間途中に入社・退社した場合の時間外労働の考え方
目次

フレックスタイム制と労働時間

フレックスタイム制であっても労働時間の把握は必要

フレックスタイム制といえども、会社に労働時間を管理する義務があることに変わりありません。

よって、会社はタイムカード等で労働者の労働時間を把握する必要があります。

フレックスタイム制における法定労働時間、法定労働時間の総枠

フレックスタイム制では、通常の法定労働時間や、他の変形労働時間制と異なり、1日や1週間単位での法定労働時間というのは決まっていません。

では、フレックスタイム制における法定労働時間とはなにかというと、法定労働時間の総枠、というのがこれに当たります。

法定労働時間の総枠は以下により計算されます。

法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間(基本は40時間※)×(清算期間の歴日数÷7日)

※ 職種によっては44時間の場合があるので「基本」としています。ただし、後述する「1か月を超える清算期間」を定める場合については、そうした業種であっても「40時間」で計算します。

フレックスタイム制における所定労働時間、清算期間における総労働時間

フレックスタイム制には1日や1週間単位の所定労働時間は存在しません。

その代わり「清算期間における総労働時間」というものを定める必要があり、これが実質的な所定労働時間となります。

この清算期間における総労働時間については、前述の法定労働時間の総枠を超える時間を設定することはできませんが、逆にいうと、法定労働時間の総枠の範囲内であれば、会社の裁量で決めることができます。

フレックスタイム制と割増賃金

時間外割増賃金の考え方

フレックスタイム制では清算期間中の労働時間が法定労働時間の総枠を超えた段階で割増賃金が支払義務が発生します。

よって、清算期間が1ヶ月で、その月の歴日数が31日の場合、177.1時間が法定労働時間の総枠となり、これを超えると割増賃金の支払い義務が発生するわけです。

月の歴日数法定労働時間の総枠(週40時間)
28日160時間
29日165.71時間
30日171.4時間
31日177.14時間

1か月を超える清算期間を定めた場合

1か月を超える清算期間を定めた場合については、上記のような清算期間全体の労働時間とは別に、清算期間を1か月ごとに区分した期間(最後に1か月に満たない期間が出る場合は、その期間)でも、労働時間数を見ます。

具体的には、清算期間を1か月ごとに区分した期間(最後に1か月に満たない期間が出る場合は、その期間)の中で平均週50時間を超えた場合も時間外労働となり、割増賃金等の義務が発生します。

つまり、1か月を超える清算期間を定める場合、

  • 1か月ごとに区分した期間の中で平均週50時間超えていないか
  • 清算期間全体で法定労働時間の総枠を超えてないか

の2つの尺度で労働時間を見る必要があるわけです。

1か月を超える清算期間を定めた場合で、清算期間途中に入社・退社等した場合

なお、清算期間が1か月を超える場合であっても、清算期間よりも短い期間しか働かなかった労働者、すなわち中途入社した労働者や退社した労働者等については、上記のような計算はしません。

代わりに「当該労働者を労働させた期間を平均し一週間当たり四十時間を超えて労働させた時間」を超えた分を時間外労働として計算します。

つまり、当該労働者を労働させた期間が45日間だった場合、以下の計算式により

  • 40時間×(45日÷7日)=257.1時間

を超えた部分について、時間外手当等の義務が発生します。

休日労働・深夜労働の割増賃金

休日労働および深夜労働の割増賃金については、フレックスタイム制だからといって特別なことはなく、通常の労働時間と同様の計算を行います。

その他、フレックスタイム制で注意すべき点

清算期間の労働時間が、所定労働時間より短い場合、給与から引いても問題ない?

労働者の労働時間の管理不足により清算期間中の労働時間が、所定のものより短くなった場合、ノーワークノーペイにより、会社はその分の賃金を控除することができます。

また、所定労働時間が法定労働時間よりも短い場合に限りますが、上記のような場合でも賃金をそのまま支払って、翌月の労働時間に不足分をプラスする、ということもできます。

ただし、プラスできるのは法定労働時間の総枠の範囲内までです。

労働時間がオーバーしている場合

逆に、労働者の労働時間が、総労働時間の枠をオーバーしている場合、その分の賃金を支払う必要がある他、法定の総枠も超える場合はそれにプラスして時間外手当も支払う必要があります。

労働時間がオーバーしている場合は、オーバーしている分、翌月の労働時間を減らしたり、その分の賃金を翌月に持ち越して支払う、といったことはできません。

フレックスタイム制

フレックスタイム制導入のメリット・デメリットについては、以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい
フレックスタイム制とは|制度の仕組み・メリットとデメリットをわかりやすく解説 フレックスタイム制は労働者に人気のある働き方である一方、その内容は「出社時間を自由に決められる制度」といった、表面的な理解にとどまっているケースも少なくあり...

また、フレックスタイム制導入にあたって流れや手続きについてはこちらの記事をどうぞ。

あわせて読みたい
フレックスタイム制の導入方法|就業規則・労使協定の整備と提出手続き フレックスタイム制を導入するには、単に「始業・終業時刻を自由にする」と会社が労働者に伝えるだけでは足りず、就業規則の整備や労使協定の締結といった、法令に沿っ...

▶ 就業規則の作成・見直しサービスを見る(名古屋の社労士が対応)

こちらの制度は、就業規則にどう定めるかでリスクが変わります。

制度理解だけでなく、自社に合った条文設計や運用まで落とし込むことが重要です。

「不安がある」「何していいかわからない」という方はぜひこちらを!

併せて読みたい関連記事

労務知識ガイドの一覧に戻る

よかったらシェアお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

社労士のすべてがわかる?四コマ
目次