労災保険制度

テーマは特別加入、「中小企業なら経営者も(働く人を守る労働保険第25回:中日新聞連載)」

2016年9月22日

 

仕事が原因のけがや病気は労災となるため、健康保険は使えないのが原則です。一方、労災保険は「誰かに雇用されて働く人」のためなので、経営者には適用されません。つまり、経営者が仕事中にけがなどを負うと、労災保険も健康保険も使えずに民間の保険を利用するか、治療費の全額を自己負担しないといけません。

でも、小さな会社では経営者も労働者と同じような仕事をしていることがあります。一緒に同じ仕事をしているのに保護されないのでは不公平。そこで、労災保険には中小企業の経営者が労災に遭った際に給付を受けられる「特別加入」があります。

特別加入を受けるには会社が労災保険に加入していることが原則で、その他に条件が二つあります。まずは会社の規模が中小であること。規模の基準は働く労働者の数で決まり、不動産や小売業で五十人以下、卸売業やサービス業で百人以下などとなっています。

もう一つは労働保険事務組合に事務処理を委託していること。労働保険事務組合を通さないと特別加入はできません。労働保険事務組合とは、労働保険の手続きをする団体。社会保険労務士や商工会などが国の認可を受けて運営していることが一般的です。

仕事中のけがや病気で労災の給付を受けられないのは個人事業主も同じ。個人事業主の場合も特別加入できますが、建設業の一人親方やタクシー運転手らに限られます。

労災保険は国内で起きた労災が対象で、日本企業の海外事業所で発生しても適用されません。しかし国によっては制度が不十分なこともあり、海外へ派遣される人も特別加入できます。

中日新聞H28.9.22付「働く人を守る労働保険」より転載

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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