特別加入とは?-フリーランスや中小事業主のための労災保険【2025最新】

※ こちらは2025年12月現在の最新情報を元に加筆修正されたものです。

目次

特別加入とは

労災保険は本来、会社等に雇用されて働く「労働者」に適用されるものです。

そのため、フリーランスや個人事業主、会社の経営者は、例え、仕事中に怪我をしたり、仕事が原因で病気になったとしても労災の適用を受けることができません。

こうした問題に対応するため、労災保険法では「特別加入」という制度を設けています。

この「特別加入」という制度により、本来労災保険の対象とならない人が労災の適用を受けることができるようになっているわけです。

ちなみに、たまに「国の労災は給付がしょぼい、国の労災に入るなら民間のに入った方がいい」と誤解している人(そういう人に限って、法的な義務をないがしろにしてたりするんですが)がいますが、正直、民間の保険なんて相手にならないくらい国の労災の給付内容は手厚いです。

特別加入の対象者

この特別加入という制度ですが、

  • フリーランス・個人事業主
  • 中小事業主
  • 海外派遣される労働者

が対象です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

 

フリーランス・個人事業主

もともとは業種が限定されていた

まず、フリーランス・個人事業主ですが、こちらについて、1つ覚えておくことがあることとして、実は、令和6年11月より前は、フリーランス・個人事業主の特別加入は業種が限定されていました。

しかし、令和6年11月にフリーランス新法が制定されたことをきっかけに、こうした業種の限定はほぼなくなっており、フリーランス法の対象となる個人事業主(労災保険においては特定フリーランスという)であれば、業種にかかわらず特別加入することができるようになっています。

ただ、後述しますが、こうした制度の変遷は特別加入時の手続きの複雑さにも繋がっています。

特定フリーランス 業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの

特別加入の対象となる中小事業主

上記のうち、特別加入が可能な中小事業主とは、会社の規模が以下のものをいいます。

業種 労働者数
金融業、不動産業、保険業、小売業 50人以下
卸売業、サービス業 100人以下
その他 300人以下

海外派遣される労働者が特別加入の対象である理由

また、海外派遣される労働者が特別加入できる理由も説明しておくと、実は海外で災害に遭った場合の傷病等は、日本の労災保険の対象とはなりません。ただ、それだと労働者の不利益が大きいことから、例外的に特別加入で救済できるようになっています。

特別加入には特別加入団体等を経由する必要がある

海外派遣の特別加入を除き、特別加入を行う場合、監督署に行けば特別加入できるわけではありません。

特別加入団体や労働保険事務組合を経由する必要があります。

個人事業主・フリーランスの特別加入団体

個人事業主・フリーランスの特別加入団体なのですが、実はフリーランス新法ができる前から特別加入が可能だった業種については、業種ごとの特別加入団体を経由する必要があります。具体的には以下の業種がこれに当たります。

それぞれの業種の特別加入団体で加入手続きを行う必要のあるの事業又は作業

〇個人タクシー業者、個人貨物運送業者など
〇建設業の一人親方等
〇漁船による自営漁業者
〇林業の一人親方等
〇医薬品の配置販売業者
〇再生資源取扱業者
〇船員法第1条規定の船員
〇柔道整復師
〇創業支援等措置に基づく高年齢者
〇あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師
〇歯科技工士
〇特定農作業従事者
〇指定農業機械作業従事者
〇国・地方等が実施する訓練従事者
〇家内労働者等
〇労働組合等の一人専従役員
〇介護作業従事者
〇家事支援従事者(いわゆる家政婦(夫))
〇芸能関係作業従事者
〇アニメーション制作作業従事者
〇ITフリーランス

逆に、フリーランス新法施行後に、特別加入の対象となった業種については、特定フリーランス事業に係る特別加入団体を経由する必要があります。

令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました

なお、加入手続き自体はシンプルで、以下のとおり、特別加入団体を経由してこれを申請することになります。

出典:特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)(厚生労働省) 

中小事業主の特別加入手続き

中小事業主等が特別加入する場合も同様で、中小事業主等が加入する場合、労働保険事務組合を経由する必要があります。

出典:特別加入制度のしおり(中小事業主用)(厚生労働省)

給付基礎日額と保険料

労災に遭い、労災保険から給付をもらう場合、その額は、そのときの給与額が基準となります。

ただ、一方、特別加入に関しては、この給付の基礎となる額は自己申告となります。また、保険料に関しても、ここで自己申告する額が基準となります。

なお、特別加入団体、労働保険事務組合を経由して特別加入の手続きを行う場合、保険料とは別に入会金や手数料がかかる場合があります。

社労士が加入する「SR」という労働保険事務組合

なお、社労士の中には自分で労働保険事務組合を持っている人もいますが、多くの社労士は「SR」という労働保険事務組合に加入していることがほとんどです。

というのも、労働保険事務組合の設立には最低でも30以上の会社の労働保険事務の委託予定、要するに30以上のお客様がいないとダメだからです。

この条件を満たすのは、開業当初はもちろんそれなりの規模になってもなかなかに難しい事が多く、そのため、各都道府県の社労士会の多くは「SR」という労働保険事務組合を作っているわけです。

要は、「SR」に加入する社労士は、「SR」という労働保険事務組合の代理店のような形で業務を行っているわけです。

もちろん、社会保険労務士川嶋事務所も愛知中央SRに加入しており、中小事業主の特別加入の手続きを行っています。

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この記事を書いた人

社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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