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働き方改革 労働安全衛生法

「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」と取扱規程

2018/09/18

働き方改革にかかる安全衛生法の改正では、主に「産業医」と「医師の面接指導」の2つについての改正が行われました。

しかし、実はもう一つ、地味ながらも重要な改正が行われています。

それは会社が実施する健康診断やストレスチェックといった労働者の心身に関する情報の管理についてです。

こうした労働者の心身に関する情報は、個人情報の保護に関する法律でいう「要配慮個人情報」に当たります。

そのため、今回の法改正では安全衛生法に定めのある措置を実施の際に収集される労働者の心身に関する情報について、適正な形で収集・保管・使用することが義務づけられました。

その具体的な方法については厚生労働省の指針に定められることになっていたのですが、その指針が9月7日、厚生労働省より公表されました。

「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

 

取扱規程の策定

指針では労働者の心身に関する情報の取り扱いについて、取扱規程を定め労使で共有することを求めています。

今回の改正内容は個人情報保護法の安全衛生法版といえるので、個人情報取扱規程と同様の規程が求められるのは当然ともいえます。

その取扱規程で定めるべき項目として、指針では以下の9つを挙げています。

  1. 心身の状態の情報を取り扱う目的及び取扱方法
  2. 心身の状態の情報を取り扱う者及びその権限並びに取り扱う心身の状態の情報の範囲
  3. 心身の状態の情報を取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法
  4. 心身の状態の情報の適正管理の方法
  5. 心身の状態の情報の開示、訂正等(追加及び削除を含む。以下同じ。)及び使用停止等(消去及び第三者への提供の停止を含む。以下同じ。)の方法
  6. 心身の状態の情報の第三者提供の方法
  7. 事業承継、組織変更に伴う心身の状態の情報の引継ぎに関する事項
  8. 心身の状態の情報の取扱いに関する苦情の処理
  9. 取扱規程の労働者への周知の方法

「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(リンク先PDF 出典:厚生労働省)

策定方法としては衛生委員会等を活用するして労使関与の基で策定、内容を共有する必要があるとしています。

その一方で、衛生委員会を持たない50人未満の事業場(小規模事業場)では安全又は衛生に関する事項について、関係労働者の意見を聴く機会を活用し、労働者の意見を聴いた上で規程を策定、共有すべきとしています。

また、取扱規程に関しては事業場単位ではなく企業単位での策定でも問題ないとしています。

 

取扱規程で定めるべき「取り扱う心身の状態の情報の範囲」とは

繰り返しになりますが、上記の取扱規程は多くの企業ですでに定められている「個人情報取扱規程」の「心身の状態の情報」版といえるものです。

そのため、すでにある個人情報取扱規程と指針の内容を組み合わせれば取扱規程の策定はそれほど難しくはありません。

一方で、上記の項目のうち2.の「取り扱う心身の状態の情報の範囲」については、安全衛生法特有の項目でそうした応用が難しいこともあり指針にて、具体的に以下のように定めています。

心身の状態の情報の分類 左欄の分類に該当する心身の状態の情報の例 心身の状態の情報の取扱いの原則
① 労働安全衛生法令に基づき事業者が直接取り扱うこととされており、労働安全衛生法令に定める義務を履行するために、事業者が必ず取り扱わなければならない心身の状態の情報 (a)健康診断の受診・未受診の情報
(b)長時間労働者による面接指導の申出の有無
(c) ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者による面接指導の申出の有無
(d)健康診断の事後措置について医師から聴取した意見
(e)長時間労働者に対する面接指導の事後措置について医師から聴取した意見
(f) ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者に対する面接指導の事後措置について医師から聴取した意見
 全ての情報をその取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、事業者等が取り扱う必要がある。ただし、それらに付随する健康診断の結果等の心身の状態の情報については、②の取扱いの原則に従って取り扱う必要がある。
②    労働安全衛生法令に基づき事業者が労働者本人の同意を得ずに収集することが可能であるが、事業場ごとの取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運用することが適当である心身の状態の情報 (a)健康診断の結果(法定の項目)
(b)健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のものに限る。)
(c)長時間労働者に対する面接指導の結果
(d) ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された者に対する面接指導の結果
事業者等は、当該情報の取扱いの目的の達成に必要な範囲を踏まえて、取り扱うことが適切である。そのため、事業場の状況に応じて、

  • 情報を取り扱う者を制限する
  • 情報を加工する

等、事業者等の内部における適切な取扱いを取扱規程に定め、また、当該取扱いの目的及び方法等について労働者が十分に認識できるよう、丁寧な説明を行う等の当該取扱いに対する労働者の納得性を高める措置を講じた上で、取扱規程を運用する必要がある。

③  労働安全衛生法令において事業者が直接取り扱うことについて規定されていないため、あらかじめ労働者本人の同意を得ることが必要であり、事業場ごとの取扱規程により事業者等の内部における適正な取扱いを定めて運用することが必要である心身の状態の情報 (a)健康診断の結果(法定外項目)
(b)保健指導の結果
(c)健康診断の再検査の結果(法定の項目と同一のものを除く。)
(d)健康診断の精密検査の結果
(e)健康相談の結果
(f)がん検診の結果
(g)職場復帰のための面接指導の結果
(h)治療と仕事の両立支援等のための医師の意見書
(i)通院状況等疾病管理のための情報
個人情報の保護に関する法律に基づく適切な取扱いを確保するため、事業場ごとの取扱規程に則った対応を講じる必要がある。

 

以上です。

すでに述べたように、本指針で策定が求められている取扱規程は「個人情報取扱規程」の「心身の状態の情報」版といえるものです。

そのため、本指針を参考に、「個人情報取扱規程」を基に「心身の状態の情報」の取扱いに特化したものに変更していけば、規程は策定できるかと思われます。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。