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労働安全衛生法

企業版メディカルチェック「雇入れ時の健康診断」とは?

2016/08/02

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プロスポーツの世界では、シーズンオフの選手の契約更改や移籍などの交渉をする時期のことをストーブリーグと言ったりします。

海外サッカーに詳しい方はご存知かと思いますが、ヨーロッパのプロサッカーの世界は今がまさにそのストーブリーグの時期。ストーブなんてあったら暑苦しい季節ではありますが、そう呼ばれてるものは仕方がない。

有名な選手の移籍は、その話題性もさることながら、億単位の巨額の移籍金(チームがチームに支払うお金)が動くなど、普段の試合や大会と同じかそれ以上の大きなビジネスとなっています。

しかし、せっかくチーム同士の交渉がまとまり、基本合意にまで至っても、土壇場になってご破産になることがあります。

メディカルチェックの結果が悪い場合です。

 

契約前にけがや病気がないかチェック

メディカルチェックというのは、入団前の健康診断みたいなものです。

プロスポーツ選手は体が資本であり、健康でなければ試合で良いパフォーマンスを見せることはできません。

たとえは悪いですが、けがをしている選手と契約する、というのは、傷の入ったりんごを買うようなもの。

選手を買う側のチームからすれば、けがをしていること了承済みの値段(値引きされた状態)で買うのならともかく、けがをしている選手を基本合意の価格(定価)で買う、というのは経営上やチーム運営上リスクがあります。

そのため、メディカルチェックでは、傷が入っていないか念入りにチェックするわけです。

 

雇入れ時の健康診断とは

実は、日本の労働安全衛生法にもこうしたメディカルチェックと似たような制度があります。

それが「雇入れ時の健康診断」です。

雇入れ時健康診断は「常時使用する労働者(※)」を雇い入れる時に、会社に実施が義務付けられている健康診断です。

※ 期間の定めのない契約もしくは1年以上継続見込みのある労働者で、週所定労働時間が通常労働者の4分の3以上。

 

雇入れ時の健康診断を行うタイミング

さて、この「雇入れ時の健康診断」ですが、労働安全衛生法の省令である労働安全衛生規則では

第43条

事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。(以下、略)

とあるだけで、雇入れ前にすべきか後にすべきか、みたいなことは書いてありません。

代わりと言ってはなんですが、その後のただしがきで、

ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

雇入れ3カ月前までに、その労働者が前の会社や学校、あるいは自主的な健康診断を受けている場合、その結果を持って代えられるよ、と規定されています。

つまり、これを広く解釈するのであれば、

雇入れ時の健康診断は雇入れ前3カ月前まではOK

と考えられます。

雇入れ後については不明ですが、健康診断にはコストがかかるので、そのコストを抑えるために、正式に雇い入れが決まってから健康診断を行うところも少なくなく、それがダメだった、という話も聞いたことがないので、なるべく早めに済ませておけば、問題になることは少なさそうです。

とはいえ、できるなら雇入れ前に行っておいたほうがいい、というのがわたしの考えです。

 

雇入れ時の健康診断を行うメリット

実は、この雇入れ時の健康診断、中小企業では、実務上は実施しているところはあまり多くないと見られています。年に一回の定期健康診断とまとめて行われることが多く、その方が負担も少ないから。

(大きいところだと、契約前に労働者に健診を受けてきてもらって、その診断結果を提出するよう求める会社もある)

しかし、行う意義がないかといえばそういうわけでもありません。

以下は、雇入れ時の健康診断での調査項目ですが、

  1. 既往歴及び業務歴の調査
  2. 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
  3. 身長、体重、腹囲、視力及び聴力(千ヘルツ及び四千ヘルツの音に係る聴力をいう。次条第一項第三号において同じ。)の検査
  4. 胸部エックス線検査
  5. 血圧の測定
  6. 血色素量及び赤血球数の検査(次条第一項第六号において「貧血検査」という。)
  7. 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)及びガンマ―グルタミルトランスペプチダーゼ(γ―GTP)の検査(次条第一項第七号において「肝機能検査」という。)
  8. 低比重リポ蛋白コレステロール(LDLコレステロール)、高比重リポ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライドの量の検査(次条第一項第八号において「血中脂質検査」という。)
  9. 血糖検査
  10. 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(次条第一項第十号において「尿検査」という。)
  11. 心電図検査

ちなみにこれら11項目はどれも省略不可

そして、1で「既往歴」とあるように、会社は「雇入れ時の健康診断」を通して、会社は労働者の既往歴を知ることができるようになっています。

これをうまく活用すれば、メンタルヘルスやてんかんといった、業種によっては大きな問題となりうる上、完治もしづらい病気の既往歴のある採用予定者を、採用前に知ることができます。

企業には採用の自由があるとはいえ、そういった病気を持つことを理由に差別することはもちろんNGですが、採用後に知るよりは、採用前からわかっていたほうが、企業の労務管理上負担が少ないのは間違いありません。

特にこうした既往歴を知らずに、採用後に再発してしまった場合、最悪、労災扱いとなりかねません。

 

今まで雇入れ時の健康診断を行っていなかった会社も、企業版メディカルチェックだと考えれば、行う意義を見いだせる会社も多いのではないでしょうか。

 

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。