最低賃金が上がると年収の壁はどうなる?パート・扶養の影響と企業対応

ここ数年、最低賃金の引上げが止まりません。

一昨年・昨年と過去最高を更新し、今年はさらにそれを上回る大幅アップ。地域によっては前年度から80円以上引き上げられたところもあります。

例として、川嶋事務所のメインの活動エリアである愛知県の過去5年の最低賃金の推移を見てもわかるとおり、わずか5年で200円近く上がっています。

最低賃金額引上げ額引上げ割合
令和3年¥955¥283.0%
令和4年¥986¥313.2%
令和5年¥1,027¥414.2%
令和6年¥1,077¥504.9%
令和7年¥1,140¥635.8%

「毎年これだけ上がると、もう限界…」そ宇考える会社も多いのではないでしょうか。

そのため、今回は、最低賃金引上げに向けて企業がどのように対応すべきか、そして、負担を軽減できる助成金について分かりやすく解説します。

目次

 最低賃金引上げで企業がまず考えるべきこと

実は、どんなに最低賃金の引上げ幅が大きくても、それに対して企業がやるべきことはシンプルです。

それは「最低賃金以上の賃金を支払う」こと。これだけです。

ただし、最低賃金は「時給」で決まるため、時給単位で賃金を上げる代わりに、労働時間を調整することで月給単位や年収単位の収入を調整することは可能です。

特に「年収の壁」と絡むケースでは、労働時間を減らすことで壁を超えないよう、これまでこうした調整をしてきた会社も多いことでしょう。

年収の壁と最低賃金の関係

ただ、こうした年収の壁を意識した収入の調整は、ここ数年の最低賃金の上昇スピードが速すぎるのもあってかなり難しくなってきています。

なにせ、このままのペースで最低賃金が上がると、パートさんが特に超えたくないと思っている「130万円の壁」の範囲内で働くことすら難しくなってくるからです。

というのも、令和7年度の全国加重平均でみた最低賃金額である1,121円を基準に考えると、「130万円の壁」の範囲内で1か月に働ける労働時間は約96.6時間しかありません。

週に直したら、25時間も働けないわけです。

そのため、従来のように「労働時間を減らして壁の範囲におさめる」というやり方は、もう限界に近いといえるでしょう。

労働時間調整より、社員との面談を

では、どうしたらいいのでしょうか。

まず会社はは、社員に対して「どう働きたいか」を確認する必要があるでしょう。

どんなに働ける時間が短くなっても壁の範囲内で働くことを維持したいという人もいれば、昨今の物価高を踏まえ、年収の壁を超えてもいいからもっと働きたい、という人もいるからです。

また、会社として短い労働時間で働かせることが難しいのであれば、年収の壁の影響を受けないよう、賃金を大きく引き上げていくことも検討すべきです。

賃上げ負担を軽減できる助成金

なお、賃上げを計画的に行う企業には、国の助成制度を活用できるケースがあります。

残念ながら、すでに最低賃金対応のために賃金を引上げてしまった会社では活用できませんが、まだ改定日を迎えていない地域や、来年以降を見据えるためにも、一度チェックしておいた方がよいでしょう。

以下に、その代表的な助成金を紹介します。

業務改善助成金

こちらは最低賃金を引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資を行うと、その費用の一部が助成されるというもの。

助成金の対象は中小企業・小規模事業者に限られます。

なお、申請には事前の計画書が必要ですが、最近の制度拡充で提出手続きが簡素化されています。

ただ、第二期の申請期間は最低賃金改定日の前日までに申請が必要なので要注意です。

助成率:3/4

助成上限額

賃上げコース区分助成上限額
30円コース30~130万円(※)
45円コース45~180万円(※)
60円コース60~300万円(※)
90円コース90~600万円(※)

※ 引き上げる労働者数および事業場の規模によって変動

参考URL:業務改善助成金|厚生労働省

キャリアアップ助成金

賃金規定等改定コース

対象:非正規社員の基本給を3%以上アップする企業

こちらは設備投資ではなく「非正規社員のベースアップ」に対して支給される助成金です。

賃上げ率に応じて、1人あたり4万円~7万円の助成が受けられます。

さらに、昇給制度や職務評価を取り入れると、最大20万円の加算も可能です。

※参考URL:キャリアアップ助成金|厚生労働省

社会保険適用時処遇改善コース

こちらは「年収の壁を越えて働きたい人」を支援する制度です。

社会保険に新たに加入する社員に対し、賃金アップや労働時間延長を行うと、最大30万円~50万円の助成を受けられる制度となっているので、年収の壁とセットで検討したい助成金です。

※参考URL:キャリアアップ助成金|厚生労働省

 まとめ:最低賃金対策は「調整」から「戦略」へ

最低賃金の上昇は、もはや一時的な現象ではなく、構造的な流れです。

そのため「どう対応するか」ではなく「どう戦略的に乗りこなすか」が今後のカギになります。

具体的には

  • 時間調整ではなく、人材との対話で対応方針を決める
  • 設備投資・制度改定を助成金で支援してもらう
  • 次年度の引上げを見据えた計画を立てる

これらを組み合わせていくことが重要です。

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この記事を書いた人

名古屋の社労士事務所、社会保険労務士川嶋事務所の代表。
「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。
就業規則作成のスペシャリストとして、名古屋市内・近郊の中小企業をサポートする一方で、共著・改訂版含めて8冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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