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賃金

ビットコインなどの仮想通貨で給与を支払うことは可能か

Bitcoin logo
今年の4月は労働法や社会保険法関連の改正・施行は控えめでしたが、それ以外の所に目を向けると昨年成立した「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」、いわゆる「仮想通貨法」が今月1日より施行されています。

この仮想通貨法はビットコインに代表されるいわゆる「仮想通貨」について定めたもので、厳密に言うと「仮想通貨法」という単体の法律があるのではなく、資金決済法や銀行法など複数の法律の改正によって成り立っています。

この改正により、法的に仮想通貨の定義が明確化されたほか、今月から仮想通貨を扱う事業所(いわゆる交換所)は国に登録する必要があり、登録後も常に監査対象として国のチェックを受けることになります。

つまり、国が仮想通貨に対してお墨付きを与えると同時に、今後は国がきちんと取り締まりしていきますよ、というわけです。

 

仮想通貨で給与

こうしたことから、これまでは「なんとなく怪しい」「詐欺なのでは」という印象のあった仮想通貨の流通が日本でも増えていくと考えられます。

実際、日本の大手金融機関も仮想通貨参入を発表しているほか、沖縄では独自の仮想通貨として「琉球コイン(仮)」の作成・発行の構想もあるようです。

「琉球コイン(仮)」沖縄で構想 店舗決済・投資呼び込む狙い

で、そうした状況が進んでくると、もしかしたら「仮想通貨で賃金がほしい」と言ってくる労働者や、「仮想通貨で給与を支払いたい」という会社が出てくるかもしれません。

では、果たして、法的にみて仮想通貨で賃金を支払うことは可能なのでしょうか。

 

通貨払いの原則

この疑問を解決するポイントは2つです。

それは「賃金支払いのルール」「仮想通貨の法的性質」です。

まず「賃金支払いのルール」でいうと、労働基準法では「賃金はこのように支払わなければいけない」という賃金支払いの5原則が定められていて、その中の1つに「通貨払いの原則」というものが存在します。

これは、その名の通り、賃金は通貨で支払わないといけないというものです。ここでいう通貨とは「法定通貨」のことを指し、日本銀行が発行する日本銀行券、および造幣局が製造し政府が発行する貨幣のこと言います。

ごちゃごちゃわかりづらいこと言ってますが、ようは日本で言う「法定通貨」とはお札や硬貨のことです。

なので、いくらお店が八百屋だからって大根やキャベツを賃金代わりに支払うのは基本的にはアウトなのです。(キャベツを20万円分とか30万円分渡したって、よっぽどの広い倉庫でも持ってない限り置く場所ないし、1ヶ月経ったら腐ってるしね。)

 

仮想通貨は「通貨」なのか?

通貨払いの原則を踏まえると、ここでもう一つのポイント「仮想通貨の法的性質」が重要になってきます。

つまり、仮想通貨は、労働基準法上で言う「通貨」なのか? ということです。

が、残念ながら違います。

仮想通貨は「法定通貨と交換しうるもの」であり、「支払い手段の1つ」として定義はされるものの、日本銀行や政府が発行するお札や硬貨ではないので、法定通貨ではないのです。

よって、原則は「仮想通貨で給与を支払うことはできない」ことになります。

ちなみに、外貨や小切手も法定通貨とは言えないので注意が必要です。

 

通貨払いの原則、省令による例外

しかし、何事にも例外はあります。

そもそも、今だって、お札と硬貨で給与をもらってる人、すなわち現金で給与をもらってる人というのはそれほど多くないと思います。ほとんどの場合は銀行振り込みですからね。

しかし、銀行に行けばお札と硬貨を引き出せるとは言え、会社から直接(直接払いの原則というのも労働基準法にはある)通貨で支払われているわけではない銀行振り込みによる給与の支払いは、なぜ法的に見てOKなのでしょうか?

これは省令で例外が認められているからで、「労働者の同意を得た場合は」銀行や郵便局などの金融機関、証券会社の口座の振り込みが認められます。

あくまで、労働者の同意がある場合な点に注意が必要です。

 

通貨払いの原則、労働協約による例外

また、もう一つの例外として「労働協約(会社と労働組合が結ぶ協約)」で別段の定めをしている場合、「通貨以外のもの」でも良いとされています。

この規定は自社製品や通勤定期券、住宅の供与などといったものを想定したものではあるものの、仮想通貨が法定通貨でない以上「通貨以外のもの」であることに変わりはありません。

なので、労働協約で定めをすれば「キャベツでの賃金支払い」も可能と考えられます。

あっ、間違えた。

労働協約で定めをすれば「仮想通貨での賃金支払い」も可能と考えられます。

ただし、通貨以外のもので支払う場合、「通貨以外のもの」の評価額をあらかじめ協約に定めておく必要があるので注意が必要です。

仮想通貨の場合、外貨と同じでレートも刻一刻と変化しますしね。

 

あと、最後に言っておく、実物給与での支払いが原則禁止されているのは、労働者にとって不利益となるような実物給与を禁止することで、労働者を保護することが目的なので、労働者の不利益となり得る実物給与はいくら労働協約が結ばれていたとしても無効になると考えられます。

つまり、キャベツ○○万円分はたぶんダメってことです。

今日のあとがき

現実的なことを言えば、仮想通貨で給与がほしいとか、給与を払いたい、みたいな話って、日本だとまだまだ先な気もします。

というのも、日本は国全体で見ればまだまだ現金主義だし、通貨自体の信頼も高い。

通貨の価値がいつ暴落してもおかしくないような国ほど、仮想通貨の需要ってあると思うのですが、良くも悪くも日本はそうなってない気がするので。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。