その他労務管理

「ベンチャーにコンプライアンスは関係ない」?【名古屋の社労士が解説】

2025年10月24日

「育休とか、うちみたいな小さい会社には関係ないよね?」

そんな言葉を、弊所の業務エリアである名古屋近辺の社長さんから聞くことがあります。

確かに、労働基準法をはじめとする労務関連の法律はベンチャーなどの中小企業にはハードルが高い。

そのため、自分たちには関係のないもののように勘違いしてしまうのかもしれません。

しかし、これは非常に危険な考え方です。

 

1. ベンチャーかどうかに関係なく法律は適用される

大前提として、労務に関する法律は、ベンチャーかどうか、中小企業か大企業かの企業規模を問わず、全ての会社に適用されます。

労働基準法も、パートタイム・有期雇用労働法も、育児介護休業法も全部です。

ただ、そうした法律の一部制度に、企業規模によって適用されない者あるに過ぎません。例えば、労働基準法であれば、就業規則の作成・提出義務が発生するのは労働者10人以上からです。

とはいえ、それはあくまで一部例外。パートタイム・有期雇用労働法や育児介護休業法のように、企業規模問わずすべての制度が適用される法律もあります。

つまり、「うちはまだ小さいから大丈夫」というのは通用しないわけです。

法律名 内容
労働基準法 就業規則の作成・届出義務(常時 10人以上 の労働者を使用する事業場)

※労働時間規制や時間外手当、年次有給休暇など、それ以外の規定は基本的に企業規模不問

安全衛生法 主に安全・衛生関係(産業医の選任や安全衛生委員会の設置など)では常時10人以上や50人以上など、規模によって適用されない場合がある。

※他の法律に比べると規模によって適用されない規定は多め

労働契約法 企業規模不問
育児介護休業法 企業規模不問
労災保険・雇用保険 原則、人を一人でも雇用すれば適用
社会保険 法人であれば規模にかかわらず適用。個人事業の場合は常時5人以上の従業員がいる場合適用

企業規模(特定適用事業所かどうか)で、短時間労働者の社会保険適用条件が変わる

高年齢者雇用安定法 企業規模不問
障害者雇用安定法 法定雇用率によって変動
パートタイム・有期雇用労働法 企業規模不問

2. ベンチャーは「見逃されてる」だけ

確かに、小規模のベンチャーの場合、労働基準監督署の調査が入ることは少ないのは事実です。

ただ、これはベンチャーや中小企業が法律の適用外だから、ではありません。

正直な話、労働基準監督署も暇ではないし人手も足りていないので、小さいところまで見てられないだけです。

つまり、あくまで「見逃されている」にすぎません。

 

3. コンプライアンスリスクは会社の成長と共に膨れ上がる

一方で、会社が成長し、社員が増えていく中で、社員の一人が「うちの会社はおかしい」と労働基準監督署に駆け込んだらどうでしょうか。あるいはSNSや口コミサイトでで暴露されたら。

当然、その会社の信用を大きく損なうリスクが出てきます。

特に会社がそれなりに大きくなって、社会的に注目されるようになった段階でこれが起きると、その影響は会社が小さかったときの比ではないでしょう。

 

3.1. 実際にあった未払い賃金からの会社崩壊

実際、筆者の知ってる会社で、残業代をずっと払っていないという会社がありました。

そして、あるとき、誰かが労働基準監督署に駆け込んだらしく、その会社は調査に入られました。

結局、その調査を経て、その会社は未払い賃金を払わざるを得なくなったのですが、実はこの会社は未払い賃金以外にも、ハラスメントなど様々な問題を抱えていたため、この未払い賃金の件が引き鉄となり、企業規模の縮小を余儀なくされました。

 

4. コンプライアンスで痛い目を見ないとわからない(痛い目を見てもわからない場合も)

さらに正直な話をすると、「ベンチャーだからコンプライアンスは関係ない」という考え方をしている中小企業が大きくなったとき、法令を順守するようになるかというと、これはかなり怪しい。

三つ子の魂百まで、ではないですが、考え方って簡単に変わるものではないからです。

少なくとも一度は痛い目を見ないと直らない、というのが筆者の実感です。

ただ、痛い目を見ても直らない場合も少なくないですし、痛い目を見たときに会社が残ってないか、規模が縮小している場合もあります。

 

5. 会社を守る「ルールづくり」が経営リスクを減らす

ただ、逆にいえば、コンプライアンスの大切さに早めに気づければ、こういったことは回避できるわけです。

そして、会社を守るために今できること、それが就業規則や人事制度の整備です。

「うちの就業規則、これで大丈夫かな?」

「制度は作ったけど、法律改正に追いついていない気がする」

そんな不安を感じたら、早めに専門家へ相談しましょう。

 

6. 名古屋で就業規則・人事制度の見直しなら川嶋事務所へ

川嶋事務所では、名古屋市を中心に

  • 就業規則の作成・見直しサポート
  • 人事制度・評価制度の設計支援
  • 労務コンプライアンス対策のアドバイス

を行っています。

法律を「守らなければならないもの」から「会社を守る武器」に変える、それが私たちのサポートです。

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7. ショート動画

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。 「会社の成長にとって、社員の幸せが正義」をモットーに、就業規則で会社の土台を作り、人事制度で会社を元気にしていく、社労士兼コンサルタント。 就業規則作成のスペシャリストとして豊富な人事労務の経験を持つ一方、共著・改訂版含めて7冊の著書、新聞や専門誌などでの寄稿実績100件以上あり。

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