就業規則の「代休」条文の作成のポイントと規定例

2023年12月7日

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就業規則の「代休」条文の作成のポイントと規定例

 

代休は法律に定めのない制度ではあるものの、多くの企業で導入され、活用されています。

しかし、その一方で、法令上問題のある運用をしている会社も少なくありません。

法令に関する知識が不足したまま代休制度を運用していると、未払い賃金が発生したり、労働基準監督署の調査で是正勧告を受ける可能性がありますので、代休を導入・運用している会社は今一度、本記事を参考に会社での現状を確認してみるといいでしょう。

 

 

法令から見た「代休」のポイント

代休とは

代休とは、休日に労働を行わせた後に、代わりの休日を他の労働日に与える制度です。

例えば、土曜日に休日出勤させた後に、その代わりの休みを翌週の水曜日に与える場合がこれに当たります。

 

代休は法令に定めのない制度

代休は法令に定めのある制度ではありません。

ただ、休日労働や時間外手当、休日手当といった法令の規制は受けるので、これらの制度をきちんと守って導入する必要があります。

 

時間外・休日手当との関係

代休を導入するに当たって最も注意しないといけないのが時間外・休日手当です。

休日労働を行った後に、別の労働日に代わりとなる休日を与える制度なので、代休が発生する場合は、必ずその代休前に休日労働を行っているはずです。

労働者に休日労働を行わせた場合、それが所定休日労働であれば時間外手当(※)を、法定休日労働であれば休日手当を支払う必要がありますが、この時間外手当もしくは休日手当の支払義務は、労働者に代休を取得させたとしても免除されることはありません。

よく、代休を取得させたら時間外手当や休日手当を支払わない、という運用をしている会社がありますが、こうした運用は法令違反となるため改める必要があります。

 

※ 所定休日労働によって、週の労働時間が法定労働時間を超えない場合は除く

 

 

「代休」の運用上の注意点

上記の「時間外・休日手当との関係」でも見たとおり、代休については、運用方法に問題のある会社は少なくありません。

そのため、以下では代休の運用上問題となりやすい「代休と振替休日の違い」と「代休を年次有給休暇のように運用する場合」の注意点について解説していきます。

 

代休と振替休日

そもそもの話として、代休と振替休日については、両者の区別がきちんと付いていない会社、というのが散見されます。

両者の違いをきちんとわかっていないと運用を誤る可能性があるので、以下で詳しく見ていきます。

 

休日労働を行う「前に」振り替えるのが振替休日

代休とよく似た制度に振替休日というものがあります。しかし、両者は全く違う制度です。

というのも、振替休日は実際に休日労働を行う前に、休日と労働日を振り替えるものをいいます。

すでに述べたように、代休は休日労働を行った後代わりの休日を取らせる制度なので、両者には振り替えるタイミングが、休日労働の事前か事後という違いがあるわけです。

この事前か事後か、には天と地ほどの差があります。

 

振替休日と時間外手当・休日手当との関係

なぜ、労働日と休日を振り替えるのが事前か事後かに天と地ほどの差があるかというと、事前に労働日と休日を振り替えているということは、もともと休日だったその日は振替後は労働日に変わっているため、その日の労働は休日労働とは考えないからです。

つまり、休日労働をしていないので、時間外手当や休日手当を支払う義務が会社に発生しないわけです(振替休日を行った結果、週40時間を超える場合は除く)。

一方、代休は、休日労働をした後、つまり、時間外手当や休日手当が発生した後に労働日と休日を入れ替えているため、時間外手当や休日手当は必ず発生します。

以下は振替休日の例ですが、第一週の日曜日を労働日に振り替えたことで、第1週の労働時間が増えているものの、週40時間以内の枠に収まるので時間外手当は発生しません。

振替後の日曜日は法定休日という扱いではもうないので(ここでの法定休日は振り返られた第2週の火曜日と第2週の日曜日)、休日労働手当も発生しません。

時間外手当が発生しない場合の振替休日の例

 

一方で、法定休日と労働日を振り替えた結果、その週の1週間の労働時間が法定労働時間を超える場合は時間外手当が発生します(上記の例でいうと、水曜日が祝日でない場合にこのようなことが起こりえます)。

 

振替休日の半日単位・時間単位取得は所定休日を振り替える場合のみ可能

1日単位ではなく、年次有給休暇のように振替休日や代休を半日単位や時間単位で取得する、というのはできるのでしょうか。

まず、代休に関しては、半日単位や時間単位取得については、所定休日・法定休日問わず行うことが可能です。

一方、振替休日を半日単位や時間単位で取得については、所定休日を振り替える場合は可能、法定休日を振り替える場合は不可能となっています。

なぜなら、法定休日というのは原則として1暦日、つまり、午前0時から午後24時までの24時間を指すからです。

よって、振り替えられた後の休日が半日や時間単位だと、休日と認められないわけです。

 

代休と振替休日の違いまとめ

代休と振替休日の違いをまとめると以下のようになります。

代休 振替休日
  • 休日労働をした後に代わりの休日を取らせる
  • どのような場合でも時間外・休日手当が発生する
  • 半日単位・時間単位での取得が可能
  • 休日労働をする前に、事前に労働日と休日を振り替える
  • 振替方によっては時間外・休日手当が発生しない
  • 半日単位・時間単位での取得は所定休日は可能、法定休日は不可

 

代休を年次有給休暇のように運用する場合

代休は休日労働を行う度に貯まる年次有給休暇?

代休の運用に関してはオーソドックスに「会社が代休日を指定する場合」と、これとは別に「休日労働を行った労働者に代休を取得する権利を与え、それを労働者の判断で休みの日を指定して休む」といった方法を取っている会社が見受けられます。

後者はいうなれば、休日労働を行う度に貯まる年次有給休暇のような形です。

 

代休を有給のような形で運用する場合の賃金

この「代休を年次有給休暇のような形」で運用する場合、代休を取得するかどうかは労働者側に委ねられます。

また、これは会社の制度によりますが、こうした「代休を年次有給休暇のような形」で運用する場合、代休の取得を持って休日労働分の賃金を支払うという形にしている場合があります。

これらに関しては、代休取得が速やかに行われるのであれば問題はないのですが、未消化の代休が累積していくと、法令に違反する可能性がでてきます。

なぜなら、代休の取得が行われない限り、賃金が支払われないということだからです。

 

未消化分の累積

代休取得時に賃金を支払うという方法は、要は賃金支払の先送りです。そのため、代休が消化できないと、その分、未払い賃金も累積していくことになります。

未払い賃金には遅延損害金が発生しますので、未払い賃金が増えれば増えるほど、遅延損害金も増えることになります。

よって、次の全額払いの原則との関係からも、代休取得時に賃金を支払う場合、未払い賃金が発生しないよう、速やかな消化が必要です。

 

代休の未消化と全額払いの原則

賃金の支払いについては、賃金支払の5原則というルールがあり、そのうちの一つに「全額払いの原則」というものがあります。

これは、一賃金支払期(賃金締め日の翌日から次の賃金締め日)までに発生した賃金は、分割することなく、賃金の全額をその期の支払日に賃金を支払わなければならないというものです。

しかし、休日労働を行った月の賃金締め日より後に代休を取得してしまうと、この全額払の原則に違反してしまいます。

例えば、1月に休日労働をした場合、基本的にはその休日労働分は1月の給与に入っていないといけません。

一方で、1月の休日労働によって権利の発生した代休の取得が2月になってしまうと、1月に休日労働した分の給与は2月に支払われることになってしまいます。

こうしたことから、代休取得時に賃金を支払う場合、休日労働と代休は同じ賃金支払期にする必要があります。

 

代休の取得期限や強制取得も検討する

「代休を年次有給休暇のような形」で運用すること自体は違法ではないものの、年次有給休暇とまったく同じ感覚で運用するのはリスクが高いことがわかります。

そのため、「代休を年次有給休暇のような形」で運用する場合、代休に取得期限を設けたり、会社の命令で強制取得できるようにしておくことも検討すべきでしょう。

また、そもそもの話として休日労働のルールは、休日労働をさせた分の賃金はそのときにきちんと支払うことです。

よって、休日労働をさせた分の賃金はそのときにきちんと支払い、代休取得の際は無給とする運用方法にすることも考慮に入れるべきでしょう。

 

 

就業規則「代休」条文作成のポイント

「代休」条文の必要性

代休は法律上に定めのある制度ではなく、必ず与えなければならないものでもありません。

よって、代休制度を設けるかどうか、代休をどういった制度にするかについては、法律に違反しない限り会社の裁量となります。

一方で代休制度を設ける場合、就業規則の絶対的必要記載事項である「休日」に関連するものであるため、就業規則にその定めが必須となります。

 

代休取得は会社命令か、労働者の判断か

代休の取得については会社が取得日を指定する場合や、労働者の判断で好きな日に取得でできるようにする場合等、会社によってルールは様々です。

ただ、前者はともかく後者の場合、労働者が自分の意思で代休を取得しない可能性もあるので、仮に労働者判断とする場合も、最終的には会社が強制できるよう形で規定を定めておくとトラブルは少なくなることでしょう。

なお、仮に強制できるとする規定がなかったとしても、代休を与えることが労働者の不利益とはならないため、代休を特定の日に強制的に取得させることは問題ないと考えられます。

 

代休取得時の賃金がどうなるかを明確にしておく

代休の原因となった休日労働をした日を無給とすることはできませんが、代休取得日についてはノーワーク・ノーペイなので給与を支払う義務は会社にはありません。

なので、代休取得日を無給とするか有給とするかは会社の裁量次第です。

ただし、実務上は休日労働をした日の基礎賃金(つまり「1」の部分)と、休日労働の代わりに休日とした日の賃金(こちらも「1」)とを相殺し、割増賃金部分(0.35または0.25)のみを支払うのが一般的です。

ただ、このような扱いは代休の基となった休日労働の日と代休を取得した日が同一の賃金計算期間内にないと、休日労働の代わりに休日とした日の賃金(「1」)が支払われないままとなり、賃金の全額払いの原則に反してしまう点に注意が必要です。

代休取得による賃金相殺の図。代休を取得すると、基礎賃金は相殺されるが割増賃金分は相殺されないので、割増賃金分は必ず支給が必要である。

 

半日単位・時間単位での取得も可能

就業規則上の定めがある場合、代休を半日単位・時間単位での取得させることも可能です。

ただし、半日単位や時間単位の場合の取得を行う場合、上で挙げた基礎賃金の相殺が難しくなるので、賃金の未払いが発生しないようどう運用を行うかは、より考慮しておく必要があります。

 

 

就業規則「代休」の規定例

第○条(代休)

  1. 会社は第△条の休日に休日労働をさせた場合、代休を取得させることがある。
  2. 前項の代休取得日は無給とする。ただし、法定休日労働が生じている場合はその休日労働割増賃金の割増部分(0.35)、法定時間外労働が生じている場合は時間労働割増賃金の割増部分(0.25)、深夜労働が生じているときは深夜労働割増賃金(0.25)を支払う。

 

 

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社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

2023年12月7日