会社は、一定の条件を満たす労働者に対し、必ず年次有給休暇を付与しなければなりません。
この条件は2つあり、一つは勤続年数、もう一つは出勤率です。
ここでは、年次有給休暇の付与の条件となる出勤率について解説していきます。
「出勤率(年次有給休暇)」条文の必要性
「休暇」に関することは就業規則の絶対的必要記載事項に当たります。
年次有給休暇は「休暇」ですので、例え、会社内のルールが法律上の内容そのままであったとしても、就業規則にその定めをしなければなりません。
また、後述するように、めったに算定する機会のない出勤率ではあるものの、もしもその必要が出てきたときのために、就業規則にきちんとその定めをしておくと、慌てず対処することができるでしょう。
「出勤率(年次有給休暇)」条文作成のポイント
出勤したとみなす期間と所定労働日から除外する期間の関係
年次有給休暇の出勤率の計算をするにあたって、特定の期間を「所定労働日から除外する」よりも「出勤したとみなす」方が、労働者にとって有利となります。
就業規則では、法律よりも労働者側が不利になるような定めはできませんが、法律よりも有利となる分には問題ありません。
そのため、下記規定例で「出勤したとみなす期間」として挙げた項目を「所定労働日から除外する期間」の項目に移すことはできませんが、その逆は可能です。
年次有給休暇の出勤率の算定上の特別休暇等の取扱い
上記規定例で所定労働日に含めないとしている「慶弔休暇」「母性の保護の休暇」「公民権行使の時間」「子の看護休暇および介護休暇の期間」については、法律上はその扱いについて特に定めはありません。
そのため、出勤したとみなすことや、逆に所定労働日に含めてしまうことも可能です。
とはいえ、特に育児・介護に関連する休暇に関しては、労働者が休暇を取得することを萎縮させてしまうような制度とすることは望ましいものとはいえないでしょう。
年次有給休暇の出勤率の算定上の休職期間の取扱い
休職期間中の年次有給休暇の出勤率の取扱いについても、法律上の定めや明確な通達があるわけではありません。
ただ、出向休職については会社都合の休職となるため、所定労働日に含めないのが妥当と考えられます。とはいえ、在籍出向の場合、実務上は、出向先での勤務成績を基にこれを算定することがあるので、個々の契約や出向規程等に定めることを想定し、上記規定例では特に定めをしていません。
私傷病休職についても判断が分かれるところがありますが、私傷病休職は欠勤の延長としての性質が強いことを考えると、基本的に欠勤扱いとして問題ないと考えられます。
ただし、会社の裁量で所定労働日に含めない、という扱いをすることも可能です。
就業規則「出勤率(年次有給休暇)」の規定例
第○条(出勤率)
- 年次有給休暇の付与条件となる出勤率の算定に当たって、次の期間は出勤したものとみなす。
① 業務上の傷病による休業期間
② 産前産後休業の取得期間
③ 育児休業、介護休業の取得期間
④ 年次有給休暇の取得期間 - 年次有給休暇の付与条件となる出勤率の算定に当たって、次の期間は所定労働日に含めないものとする。
① 慶弔休暇の期間
② 母性の保護の休暇の期間
③ 公民権行使の時間の期間
④ 子の看護休暇および介護休暇の期間
⑤ 使用者側に起因する経営、管理上の障害、その他会社都合による休業日
⑥ 正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
⑦ その他、不可抗力による休業日
規定の変更例
私傷病休職等を含む休職期間を出勤率算定の所定労働日に含めないとする場合
第○条(出勤率)
- 年次有給休暇の付与条件となる出勤率の算定に当たって、次の期間は出勤したものとみなす。
① 業務上の傷病による休業期間
② 産前産後休業の取得期間
③ 育児休業、介護休業の取得期間
④ 年次有給休暇の取得期間 - 年次有給休暇の付与条件となる出勤率の算定に当たって、次の期間は所定労働日に含めないものとする。
① 休職の期間
② 慶弔休暇の期間
③ 母性の保護の休暇の期間
④ 公民権行使の時間の期間
⑤ 子の看護休暇および介護休暇の期間
⑥ 使用者側に起因する経営、管理上の障害、その他会社都合による休業日
⑦ 正当な争議行為により労務の提供が全くなされなかった日
⑧ その他、不可抗力による休業日
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