労災保険制度

テーマは通勤災害、「寄り道した場合は?(働く人を守る労働保険第19回:中日新聞連載)」

2016年8月11日

 

最近は自宅で仕事をする人が増えているとはいえ、会社に行って仕事をする人が大多数でしょう。通勤は会社の管理下になく、業務中でもないため、けがをしたりしても「業務災害」とはなりません。しかし、業務との関連が深いため、通勤によるけがや病気については「通勤災害」として労災保険で補償されます。

通勤災害の判断で重要なのは、災害に遭ったときが本当に「通勤中」かどうか。たとえば交通事故に遭ったのが家に帰る途中でも、「通勤ではない」と判断されるケースがあるのです。

労災保険における通勤とは原則、「住居と就業場所の往復」を指します。さらに往復の経路や方法が合理的である必要もあります。公共交通機関や自家用車を使い、できるだけ短い時間と距離で移動するのは合理的ですが、遠回りしていたときや飲酒運転は合理的と認められません。子どもの保育園への送り迎えなどは遠回りに含みません。

帰りに同僚と飲みに行ったり、恋人とデートしたりしたときはどうでしょうか。出勤前に「朝活」や趣味の活動をする人もいるでしょう。立ち寄った場所が自宅と職場の経路上にあれば通勤になります。ただし、飲み会やデートなどの最中と、その後の自宅とまでや会社までは通勤になりません。経路から大きく逸脱したり、通勤自体を中断したりすると、認められません。

一方、通勤途中で飲み物を買ったり、公衆トイレを利用したりするのは、逸脱や中断には含みません。途中で日用品を購入したり、病院で診察を受けたりといったことは、日常生活で必要な行為。買い物中や診察中は通勤と認められませんが、その後の移動は通勤となります。

中日新聞H28.8.11付「働く人を守る労働保険」より転載

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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