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働き方改革 労働安全衛生法

「医師の面接指導」ってどんなときに必要? 働き方改革で変わることって?

2018/04/13

会社には労働者の安全や健康に配慮する義務があります。

その関係で、会社は一定の要件を満たす労働者に対し「医師の面接指導」を行う義務があります。

この「医師の面接指導」に関して、働き方改革法案で改正が行われるので今回はその解説。

 

医師の面接指導の概要

現行の「医師の面接指導」では、以下の要件を満たす場合に、会社は面接指導を行う義務が発生します。

時間外・休日労働時間(※1)が1か月100時間(※2)を超える労働者でかつ疲労の蓄積が認められる者から申出があったとき

※1 時間外・休日労働時間数=1ヶ月の総労働時間数-(計算期間(1ヶ月間)の総暦日数/7)×40

※2 80時間超える場合は努力義務

意外に思われるかもしれませんが、医師の面接指導は労働者からの申出があったときに行われるもので、申出がない場合に会社が面接指導を行わないのは違法ではありません。

ただし、産業医は上記の条件に当てはまる労働者に対して「面接指導」を行うよう勧奨することができます。

いずれにせよ、「医師の面接指導」において会社がまずしなければならないのは、労働者からの申出があった場合に、そうした面接指導ができるだけの体制をきちんと整えておくこととなります。

ここでいう「面接指導」とは「問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うこと」をいいます。

 

面接指導と医師の意見聴取

また、長時間労働に関する医師の面接指導とは別に、「ストレスチェック」を受けた労働者で厚労省の定める要件を満たす労働者も受けることもできます。こちらも労働者からの申出ありきです。

長時間労働、ストレスチェックにかかわらず面接指導後、会社は、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴く必要があります。

医師の意見の聴取については、定期などの健康診断の結果、異常の所見があると判断された労働者についても、会社は医師又は歯科医の意見を聴き、それに応じた措置を取る義務があります。

 

法改正後の医師の面接指導

省令の改正により長時間労働の医師の面接指導の要件が厳しく

ここからは働き方改革による法改正で変わる部分についての解説です。

実は「医師の面接指導」における「1か月100時間」という数字は法律ではなく省令で決まっているものです。

なので、厳密には法改正では省令の改正なのですが、この省令の改正により「医師の面接指導」の条件となる「時間外・休日労働時間」が、現行の「1か月100時間」が「1か月80時間」へと変更されます。

加えて、同様にこちらも省令の改正ですが、この医師の面接指導を行うための労働時間の把握を事業者に義務づける改正も予定されています。

ただ、この省令による労働時間把握義務と紐付けられる安全衛生法66条の8に罰則がないため、どこまで強制力があるかは疑問は残ります。

 

面接指導を必ず行わなければならない労働者

「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に従事する労働者

長時間労働およびストレスチェックに関する「医師の面接指導」はいずれも「労働者からの申出ありき」で行われるものです。

しかし、今回の法改正で労働者の意思にかかわらず「医師の面接指導」を行わなければならない労働者が2つ新たに誕生します。

その1つ目が「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に従事する労働者です。

「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」は今回の法改正で新しく出てきたものなので、詳しくは今後の省令もしくは通達を待つ必要があります。

ただ、現行の法律の36協定の限度時間の適用除外となっている「新技術、新商品等の研究開発の業務に従事する労働者(※)」に「役務」をプラスしただけとも言えるので、「新技術、新商品等の研究開発の業務に従事する労働者」と大きく変わることはないと思われます。

※ 新技術、新商品等の研究開発の業務とは以下のものをいう

① 自然科学、人文・社会科学の分野の基礎的又は応用的な学問上、技術上の問題を解明するための試験、研究、調査
② 材料、製品、生産・製造工程等の開発又は技術的改善のための設計、製作、試験、検査
③ システム、コンピュータ利用技術等の開発又は技術的改善のための企画、設計
④ マーケティング・リサーチ、デザインの考案並びに広告計画におけるコンセプトワーク及びクリエイティブワーク
⑤ その他①から④に相当する業務

 

事業者は「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に従事する労働者に関して、時間外・休日労働時間が100時間を超えた場合労働者からの申出の有無にかかわらず医師の面接指導を行うことが、会社の義務となります。

実は「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に従事する労働者については、時間外労働の上限規制の対象外にもなっています。

医師の面接指導が義務とされているのは、「新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務」に従事する労働者への医師の面接指導は、労働者の健康を確保するための時間外労働の上限規制の代わりだからです。

 

特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者

2つ目は労働基準法改正後に新設される予定の特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者です。

特定高度専門業務・成果型労働制の対象労働者に関しては、そもそも「労働時間」という概念が存在しません。

代わりに「健康管理時間(※)」というものが存在し、それが「1週間当たり40時間を超えた場合のその超えた時間が1月当たり100時間を超えた」場合、「医師の面接指導」を行う必要があります。

こちらも労働者からの申出の有無にかかわらず、条件を満たす労働者への実施は義務となります。

※ 健康管理時間=「事業場内にいた時間」+「事業場外において労働した時間」

 

以上です。

安全衛生法の履行に関しては、会社としては後回しになりやすい部分ですが、その分、監督署の調査が入ったときに突っ込まれやすい部分なので、きちんと対応していきたいところです。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。