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新型肺炎が指定感染症に! 疾病による就業禁止とその規定例を解説

新型肺炎が指定感染症に

中国由来の新型肺炎が猛威を奮っており、日本でも感染者が確認されるなど予断を許さない状況が続いています。

こうした状況を踏まえ政府は、今回の新型肺炎を「指定感染症」とする閣議決定を行いました。

「指定感染症」閣議決定 新型肺炎、強制入院可能に

新型肺炎が指定感染症とされたことで、この新型肺炎は会社の労務管理にも多少なりとも影響を与えます。

というのも、指定感染症に指定されると、都道府県知事が必要と認める場合、就業制限等の措置が、自社の社員に行われる場合があるからです。

 

都道府県知事による就業制限とは

感染症法では、都道府県知事に感染症に関する一定の権限を与えています。

具体的には、エボラや結核のように、感染力が高く人に危害を及ぼす可能性の高い感染症にかかった人に対して、入院等の措置をさせるという権限です。

感染症法では、一類から五類ある感染症のうち一類と二類の感染症については「入院」、三類と新型インフルエンザ等感染症、さらには「指定感染症」の感染症については「就業制限」を、都道府県知事に権限として与えています。

参考:各類感染症の具体例

一類感染症 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱
二類感染症 急性灰白髄炎、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスに限る)、結核、鳥インフルエンザ(H5N1)
三類感染症 腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス
新型インフルエンザ等感染症 新型インフルエンザ、再興型インフルエンザ

参考:感染症の範囲及び類型について(リンク先PDF 出典:厚生労働省

 

指定感染症も就業禁止の対象

指定感染症とは、特定の感染症を暫定的に一類感染症から三類感染症に準ずる扱いとするもので、政府が政令によって定めます。

政令による指定感染症の指定は1年以内が原則ですが、必要に応じてもう1年延長することができます。

記事の冒頭で述べた通り、先日、今回の新型肺炎を指定感染症とする閣議決定がなされたため、新型肺炎罹患者については、都道府県知事による就業制限措置の対象となる可能性が出てきたわけです。

 

就業制限の対象となった場合

都道府県知事による就業制限の対象となった場合、「使用者の責に帰すべき休業」ではないので、休業手当の対象とはなりません。

 

安全衛生法による就業制限とは

都道府県知事による就業制限とは別に、安全衛生法でも「病者の就業禁止」という条文があります。

こちらは都道府県知事ではなく、会社が就業禁止命令を出すことになります。

 

就業禁止は会社及び労働者の義務

労働安全衛生法の就業禁止は会社の義務であると同時に、禁止を命じられた労働者もこれに従わなければならないとされています。

 

就業禁止の根拠条文

就業禁止の根拠条文は以下のとおりです。

気になるのは、労働安全衛生規則第61条1項の「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者」という部分です。

労働安全衛生法

(病者の就業禁止)
第六十八条 事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかつた労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。

 

労働安全衛法施行規則(厚生労働省令)

第三節 病者の就業禁止
第六十一条 事業者は、次の各号のいずれかに該当する者については、その就業を禁止しなければならない。ただし、第一号に掲げる者について伝染予防の措置をした場合は、この限りでない。
一 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかつた者
二 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかつた者
三 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかつた者
2 事業者は、前項の規定により、就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、産業医その他専門の医師の意見をきかなければならない。

 

「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」とは?

「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」とは基本的には「結核」のことを指します(平成12年3月30日・基発第207号)。

それ以外の病気については通達等で具体的な名称は出ておらず、また、今回の新型コロナウィルスについてもその対象とはなっていません。

よって、今回の新型コロナウィルスについては、会社の判断だけでは就業禁止にすることはできず、疑わしい人をどうしても休ませたい場合は会社都合による休業(休業手当を支払う必要あり)にしなければならないわけです。

 

会社がすることはシンプル

仮に新型肺炎の罹患者が会社内に出た場合、会社としてやることはシンプルで、都道府県知事の支持に従い、罹患した労働者を就業させないことです。

もちろん、社員の感染を未然に防ぐには、人混みにはなるべく行かないよう注意する、手洗いうがいの奨励、あるいは少しでも体調の悪そうな人に病院に行くことを勧めるといった措置をするに越したことはありません。

 

就業規則の就業禁止規定

最後に、安全衛生法に基づいた就業規則の就業禁止規定について解説したいと思います。

 

就業禁止は就業規則の相対的必要記載事項

就業禁止は就業規則の相対的必要記載事項である「安全衛生」の分類となります。

そのため、その定めをする場合は記載が必要となります(相対的必要記載事項独特の言い回しなので意味が分かりづらいですが、ここでは就業禁止について法律等に記載のないこと定める場合、と考えてください)。

一方で、就業禁止については安全衛生法にその定めがあり、就業規則の記載の有無にかかわらず効力があります。

よって、記載がない場合でも疾病にかかった労働者の就業を禁止をしなければなりませんが、労働者に念を押すという意味でも記載しておくことは重要と言えます。

また、会社独自の規定(就業禁止時の賃金など)を定める場合は記載が必須となります。

 

就業禁止規定の規定例

就業禁止規定の規定例は以下のとおりです。

就業禁止規定

第  条(就業禁止)
1 従業員が次のいずれかに該当する場合は、会社の指定する医師に診断させ、その意見を聴いた上で就業を禁止することがある。この場合、従業員はこれに従わなければならない。
① 他の職員に伝染するおそれのある伝染病等にかかったとき
② 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働によって、病状が著しく憎悪するおそれのあるとき
③ 前各号の他、これらに準ずる疾病にかかったとき
2 前項の就業禁止期間中は無給とする。

 

就業禁止時の賃金

見ていただければ分かる通り、就業禁止規定の1項は、厚生労働省令とほぼ同内容です。

2項については、就業禁止時のの賃金について定めたものとなります。

通常、使用者の都合による休業の場合、休業手当の支給の必要がありますが、就業禁止は使用者の責による休業には当たりません。

よって、就業禁止時の賃金についてはノーワーク・ノーペイにより無給で問題ありません。

本来、規定に定める必要もないのですが、無用のトラブルを避けるためにあらかじめ給与の扱いについては明確化しています。

 

その他

季節性インフルエンザは就業禁止の対象外

季節性インフルエンザは就業禁止の疾病扱いとなっていません。(季節性インフルエンザは五類感染症)

そのため、インフルエンザの疑いがある、あるいはインフルエンザの陽性反応が出ている労働者を会社が休ませようとする場合、使用者に責のある休業として休業手当の支給義務が発生します。

よって、こうした制度的な穴を利用すると、インフルエンザにかかっていて実際には就業意思がないにもかかわらず、休業手当目的で出勤意思を見せる労働者が出てこないとも限りません。

しかも、出勤した挙げ句他の労働者に伝染されては業務の運営に支障が出ます。

 

出勤する以上は労働者にも労務の提供義務がある

しかし、そもそも出勤する以上は一定の労働提供がなければそれは労働契約の不履行となります。

そのため、インフルエンザ等の病気にかかっているにもかかわらず出勤しようとする労働者がいる場合、出勤する以上は一定の労働提供義務があること、それが果たされない場合は考課等に影響がある他、懲戒等の処分もありうることを周知する、といったように、病気の際は自主的な欠勤を促す方法を考える必要があります。

また、疾病の伝染を防ぐという観点から考えると年次有給休暇とは別に病気休暇等の制度を作り、労働者が病気の際に休みを取りやすくするという方法も考えられます。