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性弱説で企業内セキュリティを考える

2015年7月31日

人を性善説で見るべきか、性悪説で見るべきか、というのは大いに議論のあるところかもしれません。

小さな企業だと、経営者の方は比較的性善説的な立場を取ることが多く、「うちの従業員に限って」とか「わたしは自分の社員を信じてるので規則なんていらない」といった考えを持っていたりします。

逆に労働者と一度でももめたことのある会社の経営者というのは、二度とあんな苦労はしたくないということで、規則をガチガチに作りたがります。つまり、性悪説で人を見るようになってしまったわけです。

性弱説

ただ、世の中には性善説でも性悪説でもない「性弱説」という考え方もあるようです。

性弱説というのは「人は生まれながらに弱いものである」という考え方です。

弱いからたまにズルしてしまうし、弱いから一度決めたことを覆すこともある。

核心に迫るためにも、具体的な例で考えてみます。

ある日突然、奥さんが難病を患いました。急なことにはその旦那は精神的に弱っている上に、治療にはたくさんのお金が必要ときかされました。ただ、幸か不幸かその旦那は大量の個人情報を扱う会社でかなり長く働いていて、その情報にアクセスする権限を持っています。さて、旦那はどうするでしょうか・・・。

行動経済学者のダン・アリエリーは人が不正を犯す理由に「つじつま合わせ仮説」というものを唱えています。要するに、自分の中で不正を犯してもよいと判断出来るだけの様々なつじつまが合った時に限り、人は不正を犯すのだというわけです。

個人的には、上記の旦那が、長年会社に貢献してきたんだから会社から大量の個人情報データを持ちだして奥さんの医療費にしたっていいじゃないか、と考えたとしても不正に手を染めるのに十分なつじつまが合っている気がします。

性弱説と企業内セキュリティ

上記のような具体例の主人公を救うのに性善説は役に立ちません。むしろ、ガバガバのセキュリティゆえに主人公の背中を押してしまうかもしれません。だからと言って性悪説に立って周りの人と付き合うのは、多くの人にとって気分のいいものではないでしょう。

だからこその性弱説なのです。

いつもは強い人でも、突発的な出来事により心が弱ることはあります。そんなときに、会社内で労働者が間違いを起こさないようにと、きちんと規則をであったりセキュリティ体制を作っておいてあげることは、労働者を守ることにつながるはずです。例えるなら、100円玉が路上に落ちてるから、100円玉を拾う人間が現れるわけですが、その100円玉を予め拾っておいてあげるようなものです。なにも後ろめたいことではない。

就業規則や服務規程を作成するのに抵抗のある経営者の方々は、まず「性弱説」で物事を考えてみて、そうした精神的な抵抗を取り払ってみてはいかがでしょうか。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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