監督署の臨検調査

「かとく」の手柄? ABCマートが過重労働で送検された件について

2015年7月6日

ABCマートの過重労働に対して、今年の4月に東京労働局に新設された「過重労働撲滅特別対策班」(通称・かとく)が入り、同社と関係者2人を書類送検した件がちょっと話題になっています。

ABCマートの書類送検で活躍ーーブラック企業を摘発する「かとく」ってどんな組織?

今年の4月に新設されて7月に書類送検とはいやはや、監督署にくらべるとずいぶんお手が早いと、わたしも感心したものですが、なんか下の記事を読むと、「かとく」が出来るずいぶん前から東京労働局は同社に対して是正勧告を出していたみたいですね。

ABCマートに東京労働局が苦言 「指導を繰り返しても是正しなかった」「1~2年の話ではない」

つまりです。要するに「かとく」があろうがなかろうが、そのうちこうした処分が行われることは目に見えていたわけで。今回、ことさらに「かとく」が持ち上げられていますが、実際は別に「かとく」の手柄でもなんでもないのでは? というのがわたしの感想です。

たぶん、ABCマートはあれですね、「かとく」の箔付けに血祭に上がられたんではないでしょうか。

ABCマートの何が問題だったのか

付け加えておくと、今回の送検容疑も結構無理やりというか、なんというか。

記事をパッと見ただけだと、ABCマートが過重労働させていたことを理由に送検したように読めますが、実際には36協定で定めた時間外労働の限度時間以上に労働者を働かせていたことが問題だっただけ。

つまり、過重労働させていたことそのものが罪だったのではなく、事前の取り決めと異なる過重労働をさせていたことが罪だったわけです。

つまり、36協定で時間外の上限をもっと高くしていたら、監督署や「かとく」は手が出せなかった可能性は高い。

ただ、大企業ですから、さすがに協定で80時間を超えるのは、過労死ラインやメンタルヘルス労災のことを考えるといろいろまずいとわかっていたから「79時間」にしていたのでしょう。

勘違いないように付け加えておきますが、わたしはだから過重労働させていい、って言ってるわけではありませんよ? 単に労働基準法はそういう法律だっていう話です。

今回の件を見る限り、過重労働させている会社にいきなり「かとく」が来る、というわけではなく、個々の監督署で対処しきれない件について出張ってくるという感じでしょうか。なんやかんやで今後も彼らの活躍から目が離せません。

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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