名古屋で就業規則作成するなら社会保険労務士川嶋事務所

名古屋市営地下鉄名城線、西高蔵駅から北へ徒歩3分、国道19号線沿いの社労士事務所

労務管理

会社は労働者が壊したものを実費弁償させられるか?

2016/01/29

よくドラマなんかでは、飲食店のアルバイトが皿を割ったりすると、店長が「弁償だ!」と怒鳴るシーンがあるような、ないような。

…すいません、ドラマ全然見ないのに、記事の枕のために適当なこと書きました。あっ、でも、感じの悪い店長が「割った分は給料から引いておくから」みたいなこと言うことはありますよね。

それに、責任感の強いアルバイトさんなんかが謝りながら「弁償します!」みたいに言うことも多い。

ただ、現実的には、会社が労働者に壊したもの実費弁償させることは難しいと考えた方が良いでしょう。

 

あらかじめ損害賠償額を決めておくのはダメ

まず、労働基準法では「賠償予定の禁止」といって、あらかじめ損害賠償を定めた契約を禁止しています。

(賠償予定の禁止)
第十六条  使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

例えば、「会社の備品を壊したら罰金10万円」みたいな契約は違法なわけです。サッカー選手のように労働契約を解約するための違約金を定めるのもダメ。

ただし、「会社の備品を壊したら損害賠償を求めることがある」という契約は有効です。なぜなら、この場合、罰金10万円というような形で損害賠償の額自体は決まっていないからです。

実費弁償の場合、「実費」ということであらかじめ額が決まっていると考えられるため、労働契約や就業規則に、実費弁償の規定を定めることは労働基準法違反と考えられます。

 

労働者のミスは会社のミスでもある

とはいえ、会社の備品を壊した労働者に対して、会社が何もできないかといえば、そういうわけではありません。

すでに述べたように「会社の備品を壊したら損害賠償を求めることがある」という旨を労働契約や就業規則に定めること自体は可能なわけですから。

ただ、その場合にも制約はあります。

労働者が仕事上のミスにより会社に損害を与えた場合、当然、労働者はその損害を賠償する責を負うことになりますが、いくら労働者のミスによる損害とはいえ、業務上の損害については使用者責任を負う会社にも一定の責任があると考えられるからです。

 

実際の損害の4分の1が相場

そのため、労働者に責のある損害賠償については判例により、

  1. 会社の事業の性格や規模
  2. 施設の状況
  3. 労働者の業務内容・労働条件・勤務態度
  4. 労働者の加害行為の内容
  5. 労働者の加害行為への、会社の予防措置

を考慮に入れた上で、「会社と社員が損害を公平に分担するという観点から相当と認められる限度」でのみ、損害賠償の請求は可能としております。

相当と認められる限度の相場は実際の損害額の4分の1が相場なので、いずれにしても実費弁償は難しいでしょう。

 

減給処分する際にも注意が必要

また、備品を壊したことへの懲戒処分として、損害賠償を求めるのではなく減給を行う場合も注意が必要です。

労働基準法91条にあるとおり、

(制裁規定の制限)
第九十一条  就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

平均賃金の半額以下、または、1ヶ月の給与(週給の場合は1週間、日給の場合は1日)の10分の1以下までと定められているからです。

つまり、1ヶ月の給与が22万円で、就業日数が22日(日給換算すると1日1万円)の労働者の場合、減給できるのは1日5千円、1ヶ月では2万2千円までしか減給することはできないわけです。

この場合も、例え、壊したものの金額がたいしたことなく、労働基準法の定める範囲の減給で実費弁償が可能だったとしても、実費弁償分の減給を行うことは避けた方がいいでしょう。

減給分で収まるほどの小さな損害に対して減給処分を行うことについて、客観的合理的な理由があり、社会的通念上相当といえない可能性があるからです。

もちろん、そうした行為が何度注意しても繰り返し行われる場合は別ですが。

-shared-img-thumb-AL008-5w1hdesyo20140722_TP_V

 

The following two tabs change content below.
名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。