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その他 労務管理

「労務管理上のリスク」を説明する前の、もっと深い「リスク」の話

2017/02/02

昨日の記事ではリスクの定義や考え方について説明しました。

「労務管理上のリスクを減らす」ってよく言うけど、そもそも「リスク」って何?

今日はさらにリスクの特性について踏み込んで説明したいと思います。

 

リスクはゼロにできない

繰り返しになりますが、リスクは確率です。

リスクが確率である以上、どんなに低くしても危険を回避できない可能性が残ります。

であれば、リスクをゼロにすればいい、という話になるかもしれません。

しかし、リスクをゼロにすることで生まれる問題もあります。

 

ゼロリスクの東海地震対策のリスク

例えば、わたしの住む名古屋市における東海地震というリスクについて考えてみましょう。

名古屋市やその周辺は人口も多いため、東海地震が起これば大きな被害が出るでしょう。

東海地震でもしも、少なくとも人的被害だけでもゼロにしたければ、東海地震で被害が予想される地域から全員を避難させるしかありません。

建造物の耐震化を進めるという手もありますが、市内にあるすべての建造物の耐震化を進めようと思ったらいくら予算があっても足らないので、死傷者が出るリスクをゼロにしたいのであれば、避難させるしかない。

しかし、日本でも有数の大都市であり、製造業が盛んな名古屋市から人がいなくなると、その経済的損失は莫大なものになります。

経済的損失による失業や、景気の後退といったリスクは、いつ起こるかわらからない大地震の対価としては妥当なものなのでしょうか。

 

エンドポイントを揃えて異なるリスクを比較する

上の例は、言うなれば、人命を取るか、経済(お金)を取るかという話です。

しかし、人命と経済では尺度が異なるので、簡単に比較することはできません。

(こういう話をするとノータイムで「人命」という人がいますが、それはちょっと待て)

しかし、エンドポイントを揃えれば比較できないことはありません。

例えば、大きな経済的損失があった場合、失業や十分な公的サービスが受けられないことによる人的損害がありえます。

逆に、地震により大勢の人が亡くなることによる経済的損失もあります。あまり考えたくないことですが、会社の従業員が地震で半分亡くなってしまったとなれば、どのような規模の会社であっても、以前と同じ規模で操業することは難しいでしょう。

このように、大きな地震、というハザードには人的被害はもちろん、経済的損失も含まれています。

これは地震にかぎらず、多くのハザードがそうで、どのようなハザードにも大抵、複数の種類の有害性があります。

その中から1つに絞って比較するのがエンドポイントを揃えるということなのです。

AよりBの方が危険というのであれば、エンドポイントを揃えてリスクを計算しなければなにも意味がありません。

 

全体のリスクを下げる

さて、リスクをゼロにしようとしたりするだけでなく、単にリスクを減らすにも相応のコストがかかります。

一方、社会全体のコストは有限です。

現在、Aというリスクがものすごく高いが、ほとんどコストを掛けずに下げられるのに、ほとんど下げられないくらいリスクが低くなったBに、コストを掛ける、みたいなことをしていると、コストの無駄遣いによるCというリスクが発生することだってありえます。

よって、有限のコストを使っていかに効率よく、全体のリスクを下げるかが、重要となります。

そのため、エンドポイントを揃えて、様々なリスクを計算し比較する必要があるわけです。

 

リスクは受容するもの

あるリスクをゼロにするには、他のリスクが発生したり、今あるリスクが高まる可能性も考えないといけません。

つまり、すべてのリスクをゼロにできないわけです。

言い換えれば、リスクというのはある程度、受容しないといけない、受容せざろう得ないことを意味しています。

しかし、できることなら、リスクは小さいほうがいいに決まっています。

だからこそ、有限のコストを効率よく配分し、人々が安心して暮らせるよう、様々なリスクを少なくとも、受容できるレベルまでは下げる必要があるわけです。

逆に言えば、極端に集中して1つ2つのリスクの回避に全力を注ぐということは、全体のリスクを上げる事にほかなりません。

リスクとは、「全体のリスク」を「効率よく」「許容範囲内まで」下げることを目標に考えるべきものなのです。

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名古屋の社労士事務所、川嶋事務所の代表で、このブログの筆者。 新しいこと、もの、特にIT関連が大好きで、社労士としては会社・労働者のITトラブル対策・就業規則作成が得意分野。 2016年4月から9月まで中日新聞で「働く人を守る労働保険」を連載、開業社労士専門誌「SR」に寄稿するなど、メディアでの執筆活動も。