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麻雀やポーカーで「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」を考える

今回はいつもの労務管理関連の記事とは違い、会社経営のコンサルティング的な観点やマーケティングの観点から企業経営、特に中小企業の経営に関わる話をしたいと思います。

 

「組織は戦略に従う」のか、「戦略は組織に従う」のか

卵が先か、鶏が先か

経営における組織と戦略に関係については、昔から「組織は戦略に従う」のか、それとも「戦略は組織に従う」のかという命題があります。

まるで、卵が先か、鶏が先か、みたいな話ですが、この2つの概略を簡単に説明するとこうです。

まず、「組織は戦略に従う」というのは、組織は戦略に従うものなのだから、戦略にあった組織作りが必要という考え方です。つまり、戦略ありき。

一方の「戦略は組織に従う」は、どんなに素晴らしい戦略であっても、それを実現できるだけの力が無い組織の場合、その戦略が上手く機能することはないのだから、組織に合った戦略を立てることが重要だという考え方です。つまり、組織ありき。

 

「で、それがなんなの?」

さて、「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」という2つの考え方をざっとみたところで、「で、それがなんなの?」と思った人も多いことでしょう。

この2つの考え方はどちらも「経営学」の考え方なので、普通に説明するとどうしても固くなるし、身近なものとして感じづらいかと思います(少なくともわたしはそうでした)。

なので、ここからはみなさんにも、もうちょっと馴染みの深い麻雀やポーカーに例えて、この2つの考えをみていきます。

 

麻雀やポーカーで考える

「配牌前に立てた作戦」と「配牌後に配牌に基づいて立てる作戦」

まず、麻雀やポーカーに関しては牌やカードが配られるところから始まります。

牌やカードが配られる前の可能性は無限大で、プレイヤーはいろいろなことを想像し放題です。

麻雀だったら役満上がりたいとか、ポーカーだったらロイヤルストレートフラッシュ揃えたいとか、考えるだけなら自由なわけですからね。

しかし、いざ牌やカードが配られた後では、配られる前に考えていた夢みたいなことは一旦置いておいて、手札とにらめっこして現実的なことを考えないといけません。

麻雀でいうなら、とても上がれそうにない配牌なら放銃だけはしないようにしようとか、自風や白発中の対子があるなら鳴いて早めに上がろうとか、大きい手が入ってるならここは絶対に降りずに攻めようなどなど。

つまり、麻雀やポーカーに関しては、牌やカードを配られる前に立てた作戦よりも、実際に配られた配牌や手札によって戦い方が決まってくるわけです。

この麻雀の配牌やポーカーの最初の手札を「組織」ゲーム前に立てた作戦や配牌をみてからの戦い方を「戦略」と置き換えると「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」の全貌が見えてきます。

 

麻雀やポーカーの基本は「戦略は組織に従う」

もう一度繰り返すと、麻雀においては、配牌前にある程度の作戦を考えるとしても、実際に打つとなったら手元にある組織(配牌や手札)を元に戦略を考える、というのが普通の戦い方です。

よって、麻雀やポーカーでは、プレイヤーは組織(手札)に基づいて戦略を考える、つまりは「戦略は組織に従う」戦い方をするのが普通なわけです。

では、麻雀やポーカーでは「戦略は組織に従う」は成立しないのかというと、そういうわけでもありません。

 

ただし「戦略は組織に従う」的な戦い方も可能

これはわたしの経験談になりますが、わたしは一時期、とにかく役満をアガリたくて、ひたすら役満を上がるための麻雀を打ったことがあります(多分東風で100戦以上はやったはず。もちろん、リアルではなくネットで)。

つまり、わたしは、配牌前に決めた作戦(ひたすら役満狙い)にふさわしい配牌が来るまで、ひたすらに麻雀を打ったわけです。

また、これはわたしではなくとあるYouTuberの話ですが、ポーカーでひたすらロイヤルストレートフラッシュを狙う、という生配信をしてる人もいました。

なので、麻雀やポーカーで「組織は戦略に従う」という戦い方もないわけではないのです。

 

「限られた手札のなかで」

配牌や手札の運以外の要素

さて、配牌や手札は運が絡むが、会社などの組織はそうではない、という批判があるかもしれません。

わたしに言わせれば、いつだって求人で取りたい人を取れるわけではないし、そのときの社会情勢によっても取れる人が変わる以上、組織にだって運は絡むと思っているのですが、ここはまあ百歩譲りましょう。

配牌や手札は、運が絡むという要素とは別に、リソース、つまりは「できること」が限られていることもまた重要だからです。

どれほど理想的な配牌や手札であっても、国士無双と四暗刻を同時に狙える配牌はありませんし、ロイヤルストレートフラッシュとファイブカードを同時に狙うことも無理があります。

もちろん、現実にはこんな贅沢な悩みに直面することはそうそうなく、取り敢えずテンパイまでもって行くか、放銃しないようにするかしか選択肢がない場合もあります。

よく「限られた手札のなかで」といった慣用句が使われますが、麻雀やポーカーにおいては基本的には常に、(それがどんなに良い手札であっても)こうした限られた手札のなかで戦略を立てているわけです。

 

中小企業の組織は限りがあるのが普通

さてさて、「限られた手札のなかで戦略を立てていかない」といけないわけですが、これって中小企業の組織と似ていると思いませんか?

さっきは「組織=配牌・手札」と強引にくくりましたが実際の組織、つまりは会社ですが、これには製品だったり、サービスだったり、人材だったり、設備だったり、財政だったりが含まれます。そして、残念ながら、そのどれも、大企業と中小企業を比較すると、中小企業の方はどれも限りがあり、もっといえば劣っています。

麻雀やポーカーなら、配牌や手札が悪くてもそのゲームは捨てて、次のゲームに進めばまた新しい配牌や手札となるわけですが、中小の組織がそんなことをやったら、おそらく理想の配牌が来る前に会社は潰れてしまうでしょう。

つまり、中小企業からすると「戦略は組織に従う」という考えに則っとり、限られた手札のなかで最大限の成果を得るための戦略を考えないとどうしようもないわけです。

 

手札に限りのないものだけができる「組織は戦略に従う」

一方で、マーケットには理想の配牌や手札が来るまで何回も何回もゲームをすることができるプレイヤーもいます。

ここまで読んでいただいた人であれば想像は付くと思いますが、いわゆる大企業のことです。

大企業には、ほぼどんな戦略でも可能にすることができる莫大なリソースがあり、組織も戦略に合わせて変更することができます。

よって、「組織は戦略に従う」という考え方は一握りの大企業にしか当てはまらず、逆にそれが可能な大企業相手に中小企業が真正面から戦うのは分が悪いというレベルの話ではないということです。

 

ちなみに、この時点で「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」は「卵が先か、鶏が先か」とは全然別ベクトルの話だということがわかるでしょ。

 

「戦略は組織に従う」以上、組織を変えなければ戦略には限界がある

中小企業では、限られた手札のなかで最大限の成果を得るための戦略を考えないといけないわけですが、注意しないと行けないのは、「戦略は組織に従う」ということは、逆にいうと組織を変えないと戦略は変えられないということでもあります。

そして、麻雀の場合は一局ごとに配牌が変わりますが、実際の組織はそう簡単には変われません。

しかし、組織に基づく戦略しか立てられない以上、組織が変わらない限りは戦略の幅が増えることはありません。

つまり、何でもできる大企業相手に、将来にわたって中小企業が生き残っていくには、組織に合わせた戦略を考えるだけでなく、組織自体も変えていかないと難しいということになります。

ただ、組織を変えるといっても、毎年のように人事制度その他会社組織の改革をしたって、組織が不安定になるだけです。

ここでいう、組織を変える、というのはそういう意味ではありません。

簡単に言ってしまえば、組織が成長していくことをいい、そのように組織が成長していくには「学習する組織」というものが必要なのですが、「組織は戦略に従う」「戦略は組織に従う」の話から離れてしまうので、今回はここまで。

「学習する組織」については、また機会(と余裕)があれば書こうと思います。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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