その他法改正

男性版の産休こと出生時育児休業に関連する省令の改正案が出ています

2021年7月21日

 

以前の記事で、育児介護休業法が改正内容について解説させていただきました。

ただ、法律は、法律で大まかなことを決め、細かいことは省令で定めるのが通例となっています。

そのため、改正された法律が施行される前までに省令が改正されるのが今後の流れなのですが、その省令案が直近の厚生労働省の審議会で出てきました。

よって、このブログでもその内容を紹介・解説していこうと思っているのですが、ただ、ちょっと量が多めなので記事を2回に分けて見ていく予定です。

今回は主に男性版の産休こと出生時育児休業に関する省令について。

 

出生時育児休業を申し出る際の申出事項

まず、出生時育児休業を労働者側から申し出る際の申出事項についてですが、省令案では以下のことを申し出る必要があると提示されています。

  1. 出生時育児休業申出の年月日
  2. 出生時育児休業申出をする労働者の氏名
  3. 出生時育児休業申出に係る子の氏名、生年月日及び労働者との続柄等
  4. 出生時育児休業開始予定日及び出生時育児休業終了予定日
  5. 労働者が出生時育児休業申出に係る子でない子であって出生の日から起算して八週間を経過しないものを有する場合にあっては、当該子の氏名、生年月日及び当該労働者との続柄
  6. 出生時育児休業申出に係る子が養子である場合にあっては、当該養子縁組の効力が生じた日
  7. 出産が予定日より早まった場合等はその旨

いろいろ書いてありますが、概ね、現行の育児休業の申出事項と同じで、ところどころ出生時育児休業に合わせたり、出生時育児休業には不要なものは省いてあるという感じです。

ただ、法律の施行前には、おそらく、厚生労働省や各都道府県から上記に基づいた出生時育児休業の申出書のひな形が公表されることでしょうから、細かいことを覚えるよりそちらを活用した方が確実かもしれません。

 

出生時育児休業の申出方法

次に、申出方法ですが、こちらは以下の通りです。

  1. 書面を交付する方法
  2. ファクシミリを利用して送信する方法
  3. 電子メール等の送信の方法

(2,3は事業主が適当と認める場合に限る)

こちらは、育児休業の申出方法と完全に同じですね。

 

出生時育児休業の申出期限を1か月とする場合の「職場環境の整備等」

出生時育児休業の申出期限については法律で原則2週間前までと定めれていますが労使協定を締結する場合、通常の育児休業と同様「1か月」とすることが可能です。

ただし、この労使協定には「職場環境の整備等」を行うことを記載する必要があるため、実際には労使協定を締結した上で職場環境の整備等を行う必要があります。

この「職場環境の整備等」に関する具体的な内容が、今回の省令案で以下のように明らかにされました。

  1. 次に掲げる措置のうち、二以上の措置を講ずること。
    ・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
    ・育児休業に関する相談体制の整備
    ・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集及び当該事例の提供
    ・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度及び育児休業の取得の促進に関する方針の周知
    ・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分又は人員の配置に係る必要な措置
  2. 育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。
  3. 育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための措置を講じた上で、その意向を把握するための取組を行うこと。

1から3については、全て行う必要があるのか、いずれかで問題ないのか、厚生労働省の資料では明らかになっていません。

ただ、1から3の内容がどれか1つで問題ないといった感じではないので、おそらくですが、全ての要件を満たす必要がありそうです。

 

出生時育児休業中の就業

出生時育児休業の大きな特徴が、休業中も就業ができるという点ですが、こちらについても具体的な内容が省令案として出てきています

 

出生時育児休業中の就業を申し出る際の申出事項

まず、就業を申し出る場合の申出事項に関する省令案については以下の通りです。

  1. 就業可能日
  2. 就業可能日における就業可能な時間帯(所定労働時間内の時間帯に限る。)その他の労働条件

まあ、そりゃそうだろう、といった内容なので、特に書くことがありません。

 

申出方法

申出方法については、出生時育児休業を申し出る場合と全くと同じで以下の通りとなります。

  1. 書面を交付する方法
  2. ファクシミリを利用して送信する方法
  3. 電子メール等の送信の方法

(2,3は事業主が適当と認める場合に限る)

 

出生時育児休業中の就業日数

次に就業日数についてです。

出生時育児休業中の就業日数に関しては、省令案で以下のように提案されています。

  1. 就業日数の合計は、出生時育児休業期間の所定労働日数の半分以下とすること。ただし、一日未満の端数があるときは、これを切り捨てた日数とすること。
  2. 就業日における労働時間の合計は、出生時育児休業期間における所定労働時間の合計の半分以下とすること。
  3. 出生時育児休業開始予定日とされた日又は出生時育児休業終了予定日とされた日を就業日とする場合は、当該日の労働時間数は、当該日の所定労働時間数に満たないものとすること。

出生時育児休業の休業期間は最大で4週間です。また、2回に分割して取得した場合の最大取得日数は28日です。

よって、その半分以下ということは2週間もしくは14日までしか働けない、かというと、実はさらに短くなるであろう点に注意が必要です。

というのも、上記の休業期間や日数には会社の所定休日及び法定休日も含むからです。

なので、出生時育児休業中の実質的な就業可能日数は10日前後になると思われます(労働時間についても考え方は同様です)。

 

就労同意の撤回にかかる特別な事情

出生時育児休業中の就労に関しては「特別な事情」がある場合に限り、会社との同意を撤回することができます。

この特別な事情に関する省令案は以下の通りです。

  1. 出生時育児休業申出に係る子の親である配偶者の死亡
  2. 配偶者が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況により出生時育児休業申出に係る子を養育することが困難な状態になったこと。
  3. 婚姻の解消その他の事情により配偶者が出生時育児休業申出に係る子と同居しないこととなったこと。
  4. 出生時育児休業申出に係る子が負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害その他これらに準ずる心身の状況により、2週間以上の期間にわたり世話を必要とする状態になったこと。

 

不利益取扱いの禁止

会社は出生時育児休業中の就労に関連して、労働者に対して、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとされていますが、省令案では不利益取扱いについて、具体的に以下のような記載が行われています。

  1. 休業中に就業を希望する旨の申出をしなかったこと。
  2. 休業中に就業を希望する旨の申出が事業主の意に反する内容であったこと。
  3. 休業中の就業の申出に係る就業可能日等の変更をしたこと又は当該申出の撤回をしたこと。
  4. 休業中の就業に係る事業主からの提示に対して同意をしなかったこと。
  5. 休業中の就業に係る事業主との同意の全部又は一部の撤回をしたこと。

 

労使協定により出生時育児休業の対象外とできる労働者

出生時育児休業については労使協定を締結することで、特定の労働者を対象外とすることができますが、省令案では具体的に以下に該当する場合、対象外にできるとしています。

  1. 出生時育児休業申出があった日から起算して8週間以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
  2. 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

 

出生時育児休業の休業期間の前倒し及び後ろ倒し

出産予定日と出産日がズレた場合等の出生時育児休業開始日の前倒しや、終了日の後ろ倒しにについても、省令案で以下のように提案がなされています。

  1. 出生時育児休業開始予定日の前倒しは1回に限り、出産予定日前に子が出生したこと等を事由として、変更後休業を開始しようとする日の1週間前までに変更の申出をすることにより可能とする。
  2. 出生時育児休業終了予定日の後ろ倒しは1回に限り、事由を問わず、休業を終了しようとする日の2週間前までに変更の申出をすることにより可能とする。

 

まとめ

出生時育児休業に関しては、基本的には既存の育児休業等と合わせているので、それらと似ている部分やほぼ同じ、というものが多いですね。

ただ、その中でも出生時育児休業中の就労については特有の内容となっているので、今後これらの案がどのように変わっていくかも含めて注視する必要があります。

また、出生時育児休業に関しては「公布の日から1年6月以内の施行」が予定されていますが、同じ審議会内でこの施行日を「令和4年10月1日」とする案が出ているので、こちらも注目したいところです。

 

資料:【資料2-4】育児・介護休業法の改正を踏まえた主な省令事項(2)(公布の日から1年6月以内施行)(案)(出典:厚生労働省 第39回労働政策審議会雇用環境・均等分科会

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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