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酷くできの悪い「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」

2020年7月20日

忙しさにかまけて雑誌寄稿のお知らせ以外、ブログの更新をサボっていましたが、鳴り物入りで始まった「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」があまりにもツッコミどころ満載なので、今日はこちらについて。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金(厚生労働省)

 

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金とは

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金とは会社都合で休業させられたにもかかわらず休業手当の支払いを受けられなかった労働者が国(厳密には厚生労働省)に申請することでもらえる給付金です。

本来労働日であるはずの日に、会社の都合で労働者を休ませる場合、会社は平均賃金の6割以上の休業手当を支払う義務があります(コロナでの休業要請による休業を「会社都合」とされるのはおかしいと思う経営者も多いと思いますが、国はこの件に関して完全に逃げてるので、はっきりさせたかったら裁判するしかありません)。

しかし、今回のコロナ禍の休業では非正規雇用の労働者を中心に会社都合の休業にもかかわらず休業手当をもらえなかった人が多くいたので国が直接補償しよう、というのが新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金なわけです。

 

「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」のツッコミどころ

法違反を自ら証明?

さて、ここからが「ツッコミどころ」なのですが、まずこの給付金をもらうには会社の証明が必要です。

つまり、会社からすると「休業手当を払ってない」証明、すなわち「わたしの会社は法律に違反してる」ことの証明をしないといけないわけです。

ちょっと意味がわからない。

 

休業手当支払義務の免除はなし

あー、でもそうか、なるほどなるほど。

ということは、この新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の支給を受けることで、会社は休業手当の支払義務が免除されるのか、でないと、会社が証明出すわけないですもんねー、と思ったら、本助成金のQ&Aで以下のように否定されてます。

Q 雇用調整助成金と支援金・給付金のどちらを利用したら良いですか。

A 支援金・給付金は事業主の指示により休業しており、休業手当、賃金を受け取ることができない労働者の方の生活の安定及び保護の観点から直接申請が可能な制度として創設されたものです。一方、使用者の責に帰すべき事由により労働者を休業させた場合には、労働基準法上、休業手当の支払義務が生じることとなり、支援金・給付金の支払いにより、休業手当の支払義務が免除されるものではありません。

新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金 Q&A(リンク先PDF 出典:厚生労働省

・・・(言葉もない)

 

会社に内緒で申請しても会社にばれる

さらに、こちらの給付金、労働者から申請する際、会社の証明なしでも申請すること自体は可能なのですが、会社の証明のない申請の場合、後日、会社に対して調査を行うのだとか

それって会社の誰かがこの給付金の申請を出したことが会社にばれるってことですよね?

大きい企業ならまだしも、今回のこの給付金は中小企業の労働者が対象。

てことは、誰がこの給付金の申請を出したか(言い換えると、この会社は休業手当払ってないとチクったか)バレバレじゃないですかね?

実際、わたしのTwitterにも、会社にばれるのが怖くて申請できないというリプライがありました。

 

休業手当もらうよりも得する!?

最後にこの助成金の額の計算方法なのですが、以下のようになっています。

休業前の1日当たり平均賃金 × 80% ×(各月の日数(30日又は31日) ー 就労した又は労働者の事情で休んだ日数)

「平均賃金の80%」って・・・。

てことは、法律の下限である「平均賃金の6割」しか払わない会社の場合、休業手当もらうより、この給付金もらう方が労働者側は得するってことですか・・・。

全て、意味が、わからない。

ダメだ、この給付金のこと考えルと、脳が破壊サレru。

 

まとめ

以上です。

一応、この給付金、社労士が代理人となって申請することもできるのですが、この給付金の申請をしたいという会社がいたら、迷わず、雇用調整助成金の申請をお勧めします。

実際、この給付金のQ&Aでも、会社はこの給付金ではなく雇用調整助成金を利用してくれ、って書いてありますしね。

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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