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「リストラ助成金(労働移動支援助成金)」で労働者をクビにできるか 前編:概要編

2014年3月19日

この3月に労働移動支援助成金が拡充されたことが少し前ですが話題になりました。ネット上いわく、「リストラ助成金だ!」とか。

ちなみにその火付け役は朝日新聞解雇しやすい特区といい、ほんとくだらないキーワードを作るのに長けてやがります。

 

労働移動支援助成金の概要

まず、基本的なお話として、労働移動支援助成金には①再就職支援奨励金②受入れ人材育成支援奨励金の2種類があります。

①の再就職支援奨励金とは、 事業規模の縮小等により離職を余儀なくされる労働者に対して、再就職支援を職業紹介事業者に委託したり、求職活動のための休暇を労働者に付与する会社に支給される助成金です。

労働移動支援助成金(再就職支援奨励金)

一方、②の受入れ人材育成支援奨励金は、①によって離職してきた労働者や出向中の労働者を受け入れた会社が、そうした労働者に対して教育訓練等を課した場合にその費用の一部を助成するというものです。

労働移動支援助成金(受入れ人材育成支援奨励金)

一般にリストラ助成金と言われているのは①の方です。

 

労働者をクビにすればもらえる助成金?

この労働移動支援助成金が今年の3月より拡充されることになりました。

拡充される、というのは国からの予算が増え、会社に支払われる助成金の額が増える、という意味です。例えば、上の②、受入れ人材育成支援奨励金なんかも今回拡充されたものです。また、これまでは助成対象が中小企業のみだったのが大企業にまでその範囲が拡充されました。

ただ、ネットの反応を見るとまるで「会社が労働者の首を切ればその分お金がもらえる」かのように考えている人が少なからずいるようですが、実際にはそこまで単純ではありません。

まず、①の助成金をもらうには、再就職援助計画もしくは求職活動支援書の作成が必要となります。

再就職援助計画とは事業縮小する際に大量の離職者が出る場合(1ヶ月に30人以上)、会社が職安に対して提出する必要のあるもので、短期間で多くの離職者を出すのなら、彼らの再就職の面倒を見なさい、というものです。ただし、離職者の数が1ヶ月に30人未満でも、任意で提出可能なので、「1ヶ月に30人以上」の離職者を出さなくてももらえることがあるわけです。

再就職援助計画を元にこのリストラ助成金をもらう場合、再就職援助計画の持つ性格上、普通解雇や懲戒解雇(懲戒解雇した相手の再就職を援助する、というのもおかしな話か)ではダメで、整理解雇である必要があるわけです。

一方の求職活動支援書とは高年齢者雇用安定法に定めのあるもので、会社側の都合等で離職を余儀なくされた45歳以上65歳未満の労働者が希望した場合、会社が作成しなければならないものです。なので、こちらを支給の要件とする場合は整理解雇だけでなく普通解雇も含まれ、確かに「労働者をクビにすれば助成金がもらえる」と言えるかもしれません。

とはいえ、どちらの場合も解雇等になった労働者が、「職業紹介事業者を仲介し」、きちんと再就職しなければ助成金はもらえないことには変わりません。「職業紹介事業者」の仲介が必要なのは、大企業などがグループ会社への出向や移籍によって、助成金を受給することを避けるためです。

なんにせよ、やはり「労働者をクビにすれば助成金がもらえる」という言い方はいかがなものかと思ってしまいます。


前編はここまで。以下、次回、後編の「厚労省はどうしようもないバカ編」の予告です

以下、中編「社労士にとってのリストラ助成金編」の予告です。

  • リストラ助成金でリストラが増えるか
  • リストラ助成金は社労士の商品になりえるか
  • 厚労省が抱える二律背反 etc

 

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  • この記事を書いた人

社会保険労務士 川嶋英明

社会保険労務士川嶋事務所の代表。「いい会社」を作るためのコンサルティングファーム「TNC」のメンバー。行動経済学会(幽霊)会員 社労士だった叔父の病気を機に猛勉強して社労士に。今は亡くなった叔父の跡を継ぎ、いつの間にか本まで出してます。 著書に「「働き方改革法」の実務」「定年後再雇用者の同一労働同一賃金と70歳雇用等への対応実務」「就業規則作成・書換のテクニック」(いずれも日本法令)のほか、「ビジネスガイド」「企業実務」などメディアでの執筆実績多数。

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